NSAの内部告発をしたスノーデン氏の著作を「秘密保持契約違反」と政府が主張し売上の差し押さえを要求
by Mike Mozart
アメリカ司法省は、国家安全保障局(NSA)やアメリカ中央情報局(CIA)の元職員であるエドワード・スノーデン氏が秘密保持契約に違反したとして、スノーデン氏が2019年9月17日に出版した本の売上の差し押さえをを求める民事訴訟を起こしたと発表しました。
United States Files Civil Lawsuit against Edward Snowden for Publishing a Book in Violation of CIA and NSA Non-Disclosure Agreements | OPA | Department of Justice
https://www.justice.gov/opa/pr/united-states-files-civil-lawsuit-against-edward-snowden-publishing-book-violation-cia-and
United States Files Civil Lawsuit Against Edward Snowden | USAO-EDVA | Department of Justice
https://www.justice.gov/usao-edva/pr/united-states-files-civil-lawsuit-against-edward-snowden
U.S. wants to seize all money Edward Snowden makes from new book - Reuters
https://www.reuters.com/article/us-usa-security-snowden-lawsuit-idUSKBN1W223Z
スノーデン氏はNSA・CIAの元職員であり、GoogleやAppleなどのサーバーにある個人情報を閲覧できる「PRISM」がアメリカで5年以上運用されていたことや、アメリカが世界各国で盗聴を行っていたことなどを2013年に暴露。アメリカの司法当局はスノーデン氏の身柄を拘束しようとしましたが、スノーデン氏はアメリカから逃亡し、ロシアやマカオ、香港などを飛び回っています。なお、スノーデン氏は香港からフランスへの亡命を希望していることが2019年9月15日付で報じられました。
米政府が国民の情報収集をしていた「PRISM」問題を暴露したCIA元職員が実名公開 - GIGAZINE
スノーデン氏は2019年9月17日に回想録「Permanent Record(永遠の記録)」を出版。しかし、アメリカ司法省はスノーデン氏が出版の際に義務づけられた司法当局の事前公表審査を受けていないとして、「この本の内容が政府との秘密保持契約に違反している」と訴訟を起こしました。
ただし、アメリカでは憲法で「言論、あるいは出版の自由」が保障されているため、アメリカ司法省は「Permanent Record」の出版や頒布の停止・制限を行うつもりはないと明言しています。司法省によると、この民事訴訟の名目上の被告はスノーデン氏本人ではなく「スノーデン氏の本の出版に関わった企業」で、スノーデン氏に対して本の利益を渡さないように要求しています。
アメリカ司法省のジョディ・ハント検事次官は「スノーデン氏はCIAに雇用された時、またNSAの職員として契約に署名した時に、アメリカと秘密保持契約を交わしています。スノーデン氏はこの秘密保持契約に違反しています」とコメントし、「アメリカが機密性の高い国家安全保障情報を保護できるかどうかは、CIAやNSAの職員が、事前審査義務を含む機密保持契約を遵守しているかどうかにかかっています。この訴訟は、司法省がこのような国民の信頼の侵害を容認していないことを示しています。我々は、個人が公表前の審査義務を遵守せずに、アメリカに負担を与えながら自らを豊かにすることを許可しません」と述べています。
by mw238
バージニア州東部地区のG・ザカリー・ターウィリガー検事は「CIAやNSAが得た情報は個人に利益を与えるものではなく、国家を保護するものでなければなりません。この訴訟によって、スノーデン氏は自分の信頼を裏切るような金銭的利益を受け取らないことが保証されます」と述べました。
一方、スノーデン氏を擁護するアメリカ市民自由同盟の弁護士であるベン・ウィズナー氏は、司法省の訴訟にはメリットがないと主張し、「この本にはこれまで公表されたことのなかった政府の機密情報は含まれていません。政府が誠意をもって事前公表審査を行うといえば、スノーデン氏はきっと本を提出していたでしょう」と語りました。
なお、ロイター通信は「Permanent Record」の出版社であるマクミラン出版社とヘンリー・ホルト・アンド・カンパニーにコメントを要請しましたが、両者からコメントは返ってこなかったとのことです。
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