火災で焼失したアマゾンの熱帯雨林が再生するには数百年以上かかると研究者が主張

by rosinakaiser

2019年8月、ブラジルのアマゾンで観測史上最大規模の火災が発生していると報じられ、大量の貴重な熱帯雨林が焼失して環境への影響も懸念されています。研究者らは、熱帯雨林に対する火災のダメージは深刻であり、元の熱帯雨林が回復するには数世紀もの時間が必要になるかもしれないと指摘しました。

Burned areas of the Amazon could take centuries to fully recover - The Verge
https://www.theverge.com/2019/9/10/20858834/amazon-fire-brazil-forest-harm-recovery-century

2019年に入ってから急増しているアマゾンの森林火災がどれほどの害を環境に及ぼすのか、正確なところはわかっていません。その一方で、火災によって焼失した熱帯雨林地域において、次にどのような影響が出るのかは近年の研究から明らかになっています。Amazon Environmental Research Institute(アマゾン環境研究所)の地理学者であるAne Alencar氏は、熱帯雨林の木々は火災の熱さを耐えきることができないと指摘しています。

アマゾンの中心部であるマナウスで行われた研究によると、熱帯雨林の一部の木々が伐採された場合、周囲の木々が伐採されて空いたスペースに葉をシャンデリアのように広げ、日陰を提供して空気の温度を下げることがわかっています。伐採から時間がたつにつれて、伐採された場所に埋まっていた種子や、鳥などの動物が他の場所から運んできた種子が生長し、熱帯雨林が再生するとのこと。

一方で火災によって焼失した熱帯雨林は、伐採によるものと同様に再生するわけではありません。炎はもともと生えている木々や草だけでなく、地面に埋まっている種子にもダメージを与え、火災が発生した地域にはその後も長く鳥が近寄らない傾向もあります。多くの場合、火災で焼失した地域の森林は密生した低木に置き換わるそうで、元の緑豊かな植生が回復するには時間がかかります。

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2019年のはじめに、国際的な研究チームが10カ国の熱帯雨林で熱帯雨林の再生に関する調査を行い、失われた熱帯雨林がどのように再生するのかを分析しました。その結果、およそ20年ほどで失われた樹種の80％が回復し、50年ほどでほぼ全ての樹種が回復することが判明しましたが、樹木の組成が元通りに回復するには数世紀もの時間がかかることもわかりました。

また、森林火災は、単に樹木を直接焼いて殺してしまうだけではありません。火によって根や幹に損傷を負った樹木が数年かけて枯れてしまったり、病原体やシロアリに対する抵抗力を弱めたりして、長年にわたって影響を及ぼします。

さらに、火災によって焼失した熱帯雨林が数百年にわたって蓄積してきた炭素を大気中に放出し、地球温暖化を加速させてしまうという懸念もあります。ブラジルの科学者らが2018年に行った研究では、一度焼失してから回復して31年が経過した熱帯雨林でさえ、もともと存在している熱帯雨林と比較して25％も炭素蓄積量が少ないことがわかったとのこと。

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2005年から2012年にかけて、ブラジルでは保護地域の拡大や森林火災を減らすキャンペーンを実施し、森林破壊や火災が大幅に減少しました。しかし、近年では再び森林火災や伐採が増えています。

2019年に発生したアマゾンの大規模な火災はブラジルの科学者らを悩ませており、1998年や2005年に発生した大規模火災を思い起こす人も多いとのこと。世界各国からの注目を集めるアマゾンの火災について、ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領は「牧草地などを開くための野焼きを原則停止する」と発表。しかし、科学者らはボルソナーロ大統領の野焼き禁止令の効果に懐疑的な見方をしており、停止期間が8月28日から60日間しかないこと、適切な監視機関が存在しないことなどを問題点として挙げています。

記事作成時点以前の数カ月で多くの熱帯雨林が焼失しましたが、まだ熱帯雨林の80％近くは残っています。ブラジルが森林破壊を減少させたという過去の事例は、国民の教育および保護活動の強化により、熱帯雨林を保護できることを示しています。ランカスター大学の環境学教授であるJos Barlow氏は森林保護の対策について、「ハイテクな技術や難しいことが必要なのではありません」「人々の意思が必要なのです」と述べました。

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