指に針を刺すだけであらゆる病気を検知できる可能性を秘めたバイオセンサーが開発される
by iLexx
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、ごくわずかな血液サンプルと短時間の検査で敗血症を検知することができる小型センサーを開発しました。この技術は、将来的には敗血症だけでなく、血液中にバイオマーカーが現れるさまざまな疾病の検査に応用できることが期待されています。
Microfluidics device helps diagnose sepsis in minutes | MIT News
http://news.mit.edu/2019/biosensor-diagnose-sepsis-minutes-0723
敗血症とは、感染症に起因する臓器障害のことで、患者の体力次第では数十分から数時間の間に急激に症状が悪化してしまうという特徴があります。重症化した場合の死亡率は4分の1と非常に高く、先進国のアメリカでも年間25万人が敗血症で死亡しています。
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敗血症は急速に症状が進行するため、迅速な診断と治療が求められますが、現場では患者の体温や呼吸・脈拍の回数などが主な判断材料とされており、初期の段階では発熱や呼吸困難を伴う他の病気との区別が難しいというのが実情です。
血液による精密な検査方法も開発されてはいます。かねてから、敗血症を発症すると血液中にインターロイキン-6というたんぱく質が放出されることが知られており、発見当初から敗血症の診断に有効なバイオマーカーとして注目を集めてきました。
しかし、敗血症の基準となるインターロイキン-6の血中濃度は1ml当たり16ピコグラム(1兆分の1g)と非常に低いため、これまでは巨大な検査装置や高価な機材を使用しなければ検知することができませんでした。そんな中、MITで機械工学を研究するDan Wu氏らの研究グループは、マイクロ流体力学を応用することで、数センチサイズの分析装置を開発することに成功したとのことです。
Wu氏らが開発したバイオセンサーには、磁気ビーズにインターロイキン-6に反応する抗体と、西洋ワサビペルオキシダーゼという酵素をコーティングしたミクロンサイズのビーズが使用されています。このビーズは装置内に取り込まれた血液中のインターロイキン-6に反応して装置内の電極に付着します。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼが装置内の溶液に反応して発生した小さな電流をアンペロメトリーという技術で計測することで、インターロイキン-6の濃度を計測することができるという仕組みです。
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新しいバイオセンサーは検査にかかる時間が約25分と短時間で、必要となる血液もわずか5マイクロリットルしかないため、指先に小さな針を刺すだけでサンプルを採取することが可能です。また、この分析装置の最大の特長は、インターロイキン-6以外のバイオマーカーにも応用することが可能な点です。研究グループは既に、インターロイキン-8やC反応性蛋白、プロカルシトニンといった、敗血症のバイオマーカーに応用する予定を立てています。
Wu氏は今回開発したバイオセンサーについて「これは非常に普遍的なプラットフォームといえます。デバイスのチャネルを物理的に増やすだけで、検出可能なバイオマーカーの種類を無制限に増やすことができるので、あらゆる病気のあらゆるバイオマーカーに対応できます」と話し、将来的には敗血症以外の病気を簡単に検査できるようになるとの見通しを示しました。
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in サイエンス, Posted by log1l_ks
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