簡単に体内時計の時刻を測定する血液検査手法が開発される

by Killian O'Neill

概日リズムとは、生物が生まれつき備えていると考えられている24時間周期の時間測定機構のことで、「体内時計」ともいわれます。体内時計は生物の睡眠や行動の周期に影響を与えますが、生物の体内に存在する体内時計が実際の時間と違う場合、時として生物に悪影響を与えることがあるとのこと。そんな生物の体内時計を、血液検査によって簡単に測定する方法が開発されたと報じられています。

Universal method for robust detection of circadian state from gene expression | PNAS
http://www.pnas.org/content/early/2018/09/05/1800314115

Blood Test Could Tell You What Time It Is In Your Body
https://www.livescience.com/63536-blood-test-body-clock.html

This new blood test can figure out what time it is inside your cells | Popular Science
https://www.popsci.com/circadian-rhythm-blood-test

生物が持つ体内時計は、日の出や日没の時刻が同じ地域に住んでいる人々であっても一定ではありません。実際の時刻が午前0時であるのに体内時計が午後9時を示している場合、その人は夜型の生活リズムを持っており、ほかの人が眠くなる時間帯でも眠くならないこともあります。また、体内時計は医師が投与する薬の効果にも関連しているとのことで、患者ごとの体内時計に合わせて適切なタイミングで薬を投与できれば、より一層の効果が得られるそうです。

従来の体内時計を測定する方法は、数時間にわたっていくつもの血液サンプルを採取し、睡眠をもたらすホルモンであるメラトニンの血中濃度を測定するというものでした。「しかし、この方法では検査に必要な費用がかさみ、患者への負担も大きくなります」とノースウェスタン大学の生物学者であるローズマリー・ブラウン氏は述べています。そこで、ブラウン氏は「TimeSignature」という新たな体内時計測定アルゴリズムを開発しました。

ブラウン氏らが着目したのは血中のメラトニンではなく、体内時計に合わせて特定の働きを行う遺伝子でした。ブラウン氏によれば、体内時計は細胞レベルにまで大きな影響を与えており、人間が持つ遺伝子の40～50％は体内時計と連動しているとのこと。

by Amornthep Srina

そこで、研究チームは体内にある約2万もの遺伝子の中から、約40個の遺伝子が体内時計と非常に強固な結びつきを持って活動することを突き止めました。たとえば、体内時計が午前6時の時は遺伝子Aの働きが遺伝子Bよりも強くなり、体内時計が午前8時になると遺伝子Cの働きが遺伝子AやBよりも強くなるといった風に、特定の遺伝子は体内時計と強く連動しているとのこと。遺伝子の活動は血中の化学物質量として現れます。

「TimeSignature」は体内時刻による遺伝子活動の変化パターンを学習し、血液サンプルから体内時計を予測できるアルゴリズムです。メラトニンの血中濃度を測定する従来の方法とは違い、被験者の体内時計を測定するために必要な血液サンプルは、一定間隔で採取された2回分だけでいいとのこと。ブラウン氏らは実際にTimeSignatureを利用して、別の研究で採取された血液の遺伝子データから血液の採取時刻を予測するという実験を行いました。その結果、11人分の血液サンプルに対して、血液採取時刻を2時間以内の範囲で特定することができたそうです。

研究チームによれば、TimeSignatureは利用者が病気であるか健康であるかに関わらず体内時計を予測できるとのことで、全世界的な規模で適用できる見込みです。なお、ノースウェスタン大学はTimeSignatureに関する特許を申請していますが、アルゴリズムと測定ソフトウェアについては公開する予定だとしています。

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