Huaweiが北朝鮮でスパイ活動にも使われる無線通信網に貢献した疑い
中国通信機器最大手であるHuaweiが、北朝鮮の無線通信網「Koryolink」の立ち上げに深く関わっていたことが報じられています。アメリカは北朝鮮を含む制裁対象国に対するアメリカの技術輸出を制限していますが、Huaweiはこれを破り、アメリカ製部品を使用した機器をKoryolinkに提供した疑いが持たれています。
North Korea’s Koryolink: Built for Surveillance and Control | 38 North: Informed Analysis of North Korea
https://www.38north.org/2019/07/mwilliams072219/
China’s Huawei secretly helped build North Korea’s wireless network, documents reveal - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/world/national-security/leaked-documents-reveal-huaweis-secret-operations-to-build-north-koreas-wireless-network/2019/07/22/583430fe-8d12-11e9-adf3-f70f78c156e8_story.html
Huawei allegedly developed a spy-friendly phone network for North Korea
https://www.engadget.com/2019/07/22/huawei-helped-build-north-korea-cellphone-network/
報道によると、Huaweiと北朝鮮の関係が始まったのは2008年のこと。自国国内の無線通信網を独自のものにしたいという望みを持っていた北朝鮮に協力したのがHuaweiと中国の国有企業Panda Internationalでした。この2社は「Koryolink」で必要となる基地局、アンテナ、その他の機器を提供し、さらにはネットワーク網、ソフトウェア、管理サービス、暗号化技術などを提供したとのことです。
ワシントンポストは独自入手した「Huaweiの内部文書」も公開しています。Huaweiが2008年と2012年にPanda Internationalに提示した「Koryolink」用通信機器の見積もり書が以下。
(PDFファイル)7a2246ca-8042-4751-a5f4-95a24bc5ed3e.pdf
契約データなどのスプレッドシートはGithubで公開されています。この文書の中で北朝鮮は「A9」と呼称されており、Huaweiが社内でも北朝鮮、イラン、シリアなどの「特定の国」の呼び名に気をつけていたことが示されています。
北朝鮮に関する分析やニュースを取り扱う38 Northは、HuaweiとPanda Internationalが北朝鮮の無線通信網の「スパイ監視システム」に貢献したと報じています。38 Northによると、Huaweiが用意したプレゼンテーション資料は2500の特定のターゲットに対して同時に300の電話・データ通信を見張る技術システムに関するものだったとのこと。このシステムによって電話の内容や、メール、ファックス、HTTP通信、FTP通信などが傍受可能だったそうです。ワシントンポストでもこのことを裏付ける情報をHuawei内部から得ているとのこと。
Huaweiは2016年にアメリカ製部品を含む通信機器を北朝鮮などの制裁対象国に輸出したという疑惑が持たれており、証拠が見つかると新たな輸出規制や民事罰、刑事訴追を受ける可能性があります。Huaweiに対する制裁は2019年7月、緩和の予定が発表されたばかりでした。
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アメリカ合衆国商務省は公式なコメントを控えていますが、ある職員はワシントンポストに「今回の件は、『取り決めを避け、破ることに熱心である』というHuaweiに対する一般的な印象を裏付けるものだ」と語っています。Huaweiは「当社は関係国・地域の法と規制に最大限従っており、輸出制限や制裁を遵守しています。また、北朝鮮に進出した事実はありません」と発表しています。しかし、「Huaweiが過去に直接的または間接的に北朝鮮と取引を行っていたか」「ワシントンポストの入手した内部文書がHuaweiのものなのは事実なのか」という質問に対しては沈黙を守っています。
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