子どもの「将来の夢」ランキングで宇宙飛行士の人気が下落、YouTuberの方が人気となる

by NASA's Marshall Space Flight Center

1969年7月16日、アメリカのアポロ計画によって打ち上げられたアポロ11号が人類初の月面着陸を果たして以来、宇宙飛行士といえば子どもの憧れというイメージがあります。しかし、近年のアメリカやイギリスの子どもたちの間では、「宇宙飛行士よりもYouTuberの方が将来なりたい職業としての人気が高い」と報じられています。

American kids would much rather be YouTubers than astronauts | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/07/american-kids-would-much-rather-be-youtubers-than-astronauts/

アポロ11号の月面着陸は単に宇宙開発競争での勝利や科学・技術的な達成だけでなく、若い世代における科学・工学・数学的な関心を大いに高めるという結果をもたらしました。しかし、近年ではこのアポロ計画が後世に残した遺産の効果が終わりに近づいていると、Ars Technicaは指摘しています。

調査会社のThe Harris Pollが2019年7月15日、アポロ計画50周年の前日に行ったアンケート調査では、アメリカ・イギリス・中国の合計3000人の子どもたちを対象に、宇宙に対する関心について調べました。まずは子どもたちに「宇宙飛行士」「教師」「プロのアスリート」「ミュージシャン」「Vlogger(ライフスタイルをムービーで発信する人々)・YouTuber」の5つのうち、将来なりたいものはどれかを複数回答してもらったとのこと。

その結果、アメリカとイギリスでは全体のおよそ30％が将来なりたいものとしてVlogger・YouTuberを選択し、宇宙飛行士は11％と5つの仕事のうちで最下位となりました。一方、中国ではトップの56％が宇宙飛行士になりたいと回答し、Vlogger・YouTuberが18％で最下位という結果でした。西側諸国よりも中国の方が宇宙に対する関心がはるかに高いということが、アンケート結果からわかります。

また、調査では「人類が将来的にどれほど宇宙進出を果たすと思うのか？」という点についても、子どもたちに尋ねました。3000人の子どもたちを合計すると、「将来的に人類は宇宙空間、あるいは別の惑星に居住するようになると思う」「将来的に宇宙空間、あるいは別の惑星に行ってみたいと思う」と回答した割合は75％となりました。

国別の内訳は、やはり中国では宇宙に対する楽観的な考えおよび関心が高かったようで、人類が宇宙空間に居住するようになると回答した割合は96％、実際に別の惑星に行ってみたいと回答した割合は95％となりました。一方、アメリカやイギリスでは割合こそ中国ほどではなかったものの、いずれも60％以上の子どもたちが宇宙空間や別の惑星への人類進出、あるいは自分が別の惑星に行くことに賛成を示したとのこと。

この結果から、アメリカやイギリスの子どもたちは宇宙への関心をまるで失ってしまったというわけではなく、あくまでも宇宙への興味を残したまま、それでも別の仕事の方がより魅力的に見えていることがわかります。

それでもやはりArs Technicaは、中国の子どもたちの方が西側諸国の子どもたちよりも宇宙への関心が高いのは明らかだと指摘。その理由までは明らかでないものの、「アメリカは既にアポロ計画で月への着陸を成功させている」「物心ついたころからアメリカが国際宇宙ステーションの中心として活躍してきた」といった点が、子どもたちに宇宙へのワクワク感や刺激的なイメージを失わせている可能性があるとのこと。一方、中国は宇宙開発の分野においては比較的後発の挑戦者である点が子どもたちの意欲を刺激しているほか、教育制度的にも科学や宇宙探査の価値を重視している可能性があるとArs Technicaは述べました。

by NASA's Marshall Space Flight Center