Facebookが発表した仮想通貨「Libra」に対する疑問に公式が回答
by mentatdgt
Facebookは2019年6月、世界中の人々が利用できる新たな仮想通貨「Libra」を発表しました。多くの人々がLibraに注目する一方、さまざまな懸念や疑問の声も上がっています。これらに対して、Libraを開発・提供するFacebookの子会社「Calibra」のデビッド・マーカスCEOが回答しています。
Libra, 2 weeks in | Facebook
https://www.facebook.com/notes/david-marcus/libra-2-weeks-in/10158616513819148/
Libraが発表されてからおよそ2週間ほどが経過し、マーカス氏は多くの人々がLibraのビジョンやアプローチに対して受容的であることに励まされたとコメント。サービスがスタートする以前から大々的にLibraについて公表したことは、「意図的に開かれた議論を奨励するため」に下された慎重な決断だったそうです。仮想通貨の形で高品質の交換媒体をリリースし、さまざまなサポートインフラを立ち上げることは、決して暗闇の中では成しえないとマーカス氏は主張しています。
結果としてLibraには多くの人々からの疑問や質問を受け、議論が巻き起こることとなり、当初の目論見は成功したとのこと。そして発表から2週間が経過したタイミングで、マーカス氏は人々から寄せられた疑問に対して公式に回答することにしました。
by Adam Tinworth
◆1:Libraは分散性が低くブロックチェーンとは言えないのではないか?
ブロックチェーン技術を用いた仮想通貨として名高いのがBitcoinであり、取引記録をBitcoinの取引や処理に携わった不特定多数のユーザーで共有しています。一方でLibraにおいて処理のノードとなるのは、MasterCardやVisa、Uber、Lyft、eBay、Spotifyといった多くの名だたる大企業から形成される「Libra協会(The Libra Association)」であり、一部の人々からは「Libraはブロックチェーンによる仮想通貨とはいえない」という指摘も上がっています。
これに対してマーカス氏は、ブロックチェーンの基本原則としてノードの代替性が必要であることを認めつつも、まず最初のステージでは信頼できるノードで始めることが重要だったと主張。最終的にLibra協会のメンバーは100社ほどになる見込みであり、加入メンバーの増加に伴い地理的にも業界的にも広く分散することに加え、さらにLibra協会は分散化を進める努力をする必要があると述べました。
by Tumisu
◆2:Libra協会における憲章がないのはなぜか?
記事作成時点で、Libra協会のメンバーらによって発表された憲章や宣言書といったものはありません。この点についてマーカス氏は、確かにFacebookがあらかじめLibra協会の憲章を作成し、加入するメンバーがこれに批准するよう求めることもできたと認めました。一方で、Libra協会の精神として全てのメンバーが重要な決定に参与するべきであり、Facebookを含む単一組織の力を制限するべきだという考えがあるため、記事作成時点でLibra協会の憲章は存在していないとのこと。
◆3:Libraは「Financial Inclusion(金融包摂)」について取り組むことができるのか?
Financial Inclusion(金融包摂)とは、発展途上国などにおける基本的金融サービスへのアクセス問題を解決し、誰もが金融サービスを利用できるようにすることを意味します。CalibraやFacebookはLibra設立に関してしばしば金融包摂に言及し、広く世界中の人々が金融サービスを利用できるようにするとしていますが、果たして本当にLibraが金融包摂を解決できるのかどうかを疑問視する声もある様子。
マーカス氏はLibraと金融包摂に関する誤解の一つに、「発展途上国の人々が銀行にお金を預けられないのは、そもそも預けるお金がないからだ」というものがあると指摘。確かにLibraは人々の所持するお金を増やすことはできませんが、そもそも銀行サービスの問題として、口座の開設に費用がかかったり、残高が一定額を下回った場合に端数といえるお金を引き出せなかったりする点があるとのこと。
「お金がなくて銀行口座が開設できないという人々は、近代的な金融サービスに意味がないと述べているのではありません。システムにアクセスする余裕がないと言っているだけです」とマーカス氏は述べ、低コストで利用できる金融サービスの提供には意義があると主張。Libraは40ドル(約4400円)のスマートフォンとインターネットへの接続環境があれば、誰でも自分の資産を安全に管理でき、銀行よりもはるかに低いコストで金融取引が可能だとして、Libraが成功すれば金融サービスを必要とする多くの人々に変化が訪れると述べました。
by NeilsPhotography
◆4:規制当局や法執行機関と関係する予定はあるのか?
既存の金融システムはマネーロンダリングやテロ組織の資金調達、詐欺的行為など、さまざまな種類の問題と戦ってきました。CalibraもLibraを利用した金融犯罪の監視能力および法執行能力を高めるため、規制当局や法執行機関を含めた全てのステークホルダーと公然と関与していくとのこと。
◆5:Facebookは金融サービスの運営者として信頼できるのか?
近年、Facebookはユーザーデータ流出問題などのスキャンダルに見舞われ、信頼を損なうような出来事が続いています。そんなFacebookが金融サービスに携わることで不安に思う人も多くいますが、マーカス氏は「FacebookはLibraに関するネットワークや準備金などを管理しません」と指摘。FacebookはあくまでもLibra協会のメンバーに過ぎず、その権力は協会に属する100を超えるメンバーと同等のものであるとのこと。
また、Calibraは確かにFacebookの子会社であるものの、Calibraが所有するユーザーの財務データなどをFacebookが見ることはできません。さらにLibraを管理するソフトウェアもさまざまな種類が登場するとされており、取引や管理などLibraの恩恵を受けるにあたり、ユーザーがFacebookを信頼する必要はないそうです。
by Pixabay
◆6:なぜFacebookはLibraの開発・提供に乗り出したのか?
Facebookは世界の人々をより近づけるために無料のプラットフォームやコミュニケーションツールを用意し、多くの人々がテキストや写真、ムービーなどを送りあっています。その次のフェーズとして、Facebookはユーザーが持つ経済的価値のやり取りを簡単にしたいというビジョンを持ち、コミュニケーションの場で行ったのと同様の手助けを金融サービスにおいて行おうとした結果、Libraの開発・提供に踏み切ったとマーカス氏は主張します。
一方でFacebookの場合と大きく違うのは、Libraのネットワークや通貨の管理をFacebookが行わないという点。それでは一体どのようにしてFacebookがLibraの恩恵を受けるのかというと、Libraの成功によって関連アプリの収益を得たり、商取引の増加によってFacebookの収益の柱である広告による利益の増大などを見込んでいるとのこと。
by Pixabay
マーカス氏は今後もさまざまなコミュニティやステークホルダーとの関わりを楽しみにしていると述べ、多くのフィードバックを期待していると述べました。
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