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Facebookの新たな仮想通貨「Libra」は一体どんなものなのか?


Facebookが2020年にサービススタートを目指している新たな仮想通貨「Libra」は、発表された段階から単なる仮想通貨にとどまらず、国際的な通貨になり得るとまでと予想されています。AppleやMicrosoftで働いていた経験を持つアナリストのベン・トンプソン氏が現段階で判明している事実から「Libraってなんだ?」という疑問に対する解説と、Libraの今後の展望を語っています。

Libra | Digital Global Cryptocurrency Built on Secure Blockchain
https://libra.org/ja-JP/

Facebook, Libra, and the Long Game – Stratechery by Ben Thompson
https://stratechery.com/2019/facebook-libra-and-the-long-game/

◆Libraと他の仮想通貨はどう違うのか?
トンプソン氏の解説によると、代表的な仮想通貨として広く知られているBitcoinとLibraはかなり別物で、それぞれ違うカテゴリーに属しているとのこと。Bitcoinの性質は「金(ゴールド)」に近いもので、金は世界中の誰もが「金には価値がある」と考えているため価値を持っていますが、Bitcoinの価値も「Bitcoinには価値がある」と大勢の人が考えることによって保たれています。また、Bitcoinの最大の特徴とは「ブロックチェーンによる分散性」で、分散性とは「誰が誰にBitcoinをどれくらい支払ったのか」という取引記録を不特定多数のユーザーで共有するもの。この技術ゆえにBitcoinはプライバシーが保たれ、改ざんはほぼ不可能となっています。

以下の記事では、Bitcoinについての詳しい解説を行っています。

仮想通貨「Bitcoin」を完璧に理解するために知っておきたいことまとめ - GIGAZINE


一方、Libraの取引記録は「Libra協会(The Libra Association)」に属する企業「だけ」が処理します。「Libra協会」とは「市場規模が10億ドル(約1100億円)以上、または顧客によるキャッシュフローが5億ドル(約550億円)以上」「年間利用者が2000万人以上」「FortuneやS&Pなどの第三者団体にその業界でトップ100以内の企業だと認められている」という3条件のうち2条件以上を満たす企業が、Libraによる利益のインセンティブなどを得る権利、つまり一種の株式にも似た「Libra Investment トークン(LiT)」に最低1000万ドル(約11億円)の投資を行うことで加盟できるものです。その条件の厳しさから、加盟できるのは必然的に各業界の大企業に限られ、Libra協会には、発足段階ではMasterCard、Visa、Uber、Lyft、eBay、Spotifyなどの28社が名を連ねています。Facebookは2020年のサービス開始時までに、100社にまで加盟企業を増やす予定とのことです。


Bitcoinを所持する不特定多数のユーザーよりもLibra協会に属する企業は少数であるため、Libraそのものの安全性は低下します。しかし、Bitcoinよりもはるかに取引の速度で優れているため、Libraは「通貨」として扱うことが可能になります。そしてLibraを語る上でかなり重要なポイントとなるのが、「Facebookはあくまで『Libra協会の一員』としての権限しか持たない」という点。つまり、Libraを実質的に運営するのはLibra協会であり、Facebookは単にその一員にとどまります。

Libraのように企業が運営する金融サービスものとして、中国企業のWeChatが運営する電子決済システム「WeChat Pay」があります。WeChat Payによって、公共料金の引き落としからコーヒー1杯の支払いにいたるまで可能ですが、決済の内容はWeChatに全て把握されてしまっており、企業が運営する金融システムにはプライバシー面での不安がつきまとうもの。しかし、Libraではブロックチェーンの技術を活用することによって、1つの企業がユーザーの決済情報を把握できないようにしているとのことです。

データ集中の究極形態「WeChat」アプリが抱える大問題とは? - GIGAZINE


◆Libraは広く普及するのか?
トンプソン氏の予想によると、Libraが真の意味で「流行る」かどうかにおいて、越えなければならない障害が多数あるとのこと。まず「Libra加盟店」といったLibraで支払いができる店舗がまだ現れていないごく初期の段階において、Libraの活用法とは「個人間取引」に限られます。個人間取引アプリには、アメリカではPayPalの運営する「Venmo」、日本では「LINE Pay」などが存在するため、Libraはこれらの競争相手に打ち勝つ必要があります。Libraの匿名性以外の利点とは、Facebook製の「Facebook Messenger」「WhatsApp」といったアプリでもLibraが活用可能である点だとトンプソン氏は指摘しています。

By Anton

次なるLibraの競争相手は「クレジットカード」になります。トンプソン氏は「『Libraで支払うか』と『クレジットカードで支払うか』は客側にはそれほど差はない」と指摘しますが、「Libra協会にすでに参入しているUberやSpotifyなどはLibraでの支払いを推奨し、同様にLibra協会に参入済のMasterCardやVisaが自社のクレジットカードシステムを活用して店舗がLibraを導入しやすくしてくれる」と予想しています。

また、Libraはクレジットカードに対抗するだけではなく、「クレジットカードを持っていない人」にも利用してもらうことを目的としています。LibraはFacebookに組み込まれる専用ウォレットアプリ「Calibra」によって利用可能となる予定です。

Facebookが独自の仮想通貨「Libra」&専用ウォレットアプリ「Calibra」を発表 - GIGAZINE


トンプソン氏はCalibraについて、「ユーザーエクスペリエンスの単純化によって、Libraを利用する人はクレジットカードの利用者よりも多くなる可能性がある」と語っています。店舗がLibraを導入すれば、クレジットカード加盟店手数料を取られずに手軽な決済方法を用意できる上、クレジットカードを持たない人に対してもアピールが可能となり、店舗側の利益につながります。Libraを利用する人が増えれば、Libra決済を導入する店舗やLibra協会、そして顧客の利益にもつながります。

Libraの最終的な対抗馬となるのがアメリカドル・ユーロ・円などの「本物の通貨」です。Libraの取り扱いを巡って各国が協議を重ねていますが、トンプソン氏によるとCalibraは犯罪などを未然に防ぐために銀行などが義務づけられている「本人確認」と「反マネーロンダリング」の規定を満たしており、ブロックチェーンの原理ゆえに「容易に規制できるようなものではない」とのことです。

Libraの立役者であるFacebookがLibraからどのように利益を得るのかは不明ですが、Libraが運用されるとするとその経済規模はあまりにも巨額となるため、そこから何かしらの利益を得ることは容易だと考えられます。トンプソン氏は「現代では『中央集権』的な企業のやり口についてみんなが警戒している」と語っており、「Libraユーザーの利益が本当に特別なものでなければ、Libraは失敗するかもしれない」と予想しています。

トンプソン氏はLibraの未来についてのまとめとして、「Libraが成功する最大の要因は『Facebookの持つネットワークの大きさ』といえるが、Libraが失敗する最大の要因は『人々がFacebookに抱く不信感』になるだろう」とコメントしています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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