Facebookの下請け会社では劣悪な職場環境により従業員が死亡したと元従業員が告白
By Alex Haney
「モデレーター」はポルノや暴力、ヘイトスピーチなどインターネット上の不適切なコンテンツを削除する仕事です。Facebookのモデレーター業務を下請けする会社の元従業員は、劣悪な職場環境のせいで1人が死亡したと告白しています。
Facebook moderators break their NDAs to expose desperate working conditions - The Verge
https://www.theverge.com/2019/6/19/18681845/facebook-moderator-interviews-video-trauma-ptsd-cognizant-tampa
Facebookには日々大量の投稿が行われており、違法・不適切なコンテンツもまた膨大です。Facebookは世界中で約1万5000人のモデレータを下請けとして雇っており、そういった不適切なコンテンツを監視させています。今回問題が浮き彫りとなったのはCognizantという下請け企業の1つ。Cognizantはかねてよりその職場環境の劣悪さが指摘されていました。
ジャーナリストのケーシー・ニュートンさんは2019年2月にCognizantの内部事情についての取材を行っており、賃金の低さや劣悪な職場環境、従業員が業務によってトラウマを受けていることなどについて詳細に記述しています。
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この発表の後、ニュートンさんのもとにはFacebookの下請け企業で働いている従業員から反響が多く寄せられたとのこと。しかし、ニュートンさんの調査によると、Cognizantの労働環境はしばらくは改善されなかったそうです。Cognizantのアリゾナ州フェニックスのオフィスではトコジラミが発生したり、フロリダ州タンパのオフィスでは、たった1つしかないトイレが糞便や経血などで汚されることが繰り返し起きたとのこと。その劣悪な労働環境ゆえに死者も出たと、Cognizantの元従業員がニュートンさんに報告しています。
沿岸警備隊で中尉の地位にまで上り詰めたキース・アトリーさんは、軍を退職してCognizantで働くことを選びました。同僚によると、アトリーさんはFacebookの課す14ページもの秘密保持契約が心労になっており、解雇されることをいつも心配していたそうです。2018年3月9日、アトリーさんはついに倒れてしまいます。同僚はすぐに気がついて心肺蘇生法を試みましたが、Cognizantの建物にAEDは備え付けられていませんでした。病院に運ばれたアトリーさんはそのまま心臓発作で亡くなりました。享年は42歳、妻と2人の娘が残されました。
Cognizantの元従業員を担当したことのあるキャサリン・ホプキンソン弁護士によると、Cognizantの人事に苦情や業務の改善などを訴えた従業員は無視されるか、最悪のケースだと「報復」されるとのこと。ホプキンソン弁護士は「本当にひどい環境ですよ」と語っています。
ニュートンさんは今回、秘密保持契約に背いて公の場でCognizantについて語ることに同意した元従業員3人に対しインタビューを行いました。
以下では実際にニュートンさんが行ったインタビューを見ることが可能です。
Inside the traumatic life of a Facebook moderator - YouTube
ショーン・スピーグルさんはFacebookのモデレーターとして働くことが決まったとき、最初は世界的大企業で働けることが誇らしかったとのこと。
「あなたが見たものの中で、本当に辛いものはなんでしたか?」というニュートンさんの質問に対して……
スピーグルさんは泣き出します。
「虐待されている動物のことが忘れられないんだ、Cognizantを辞めた後でさえ」
「そのうちの1つは、イグアナだ。若者2人がイグアナを尻尾を掴んで、何度も何度もたたきつける。イグアナは叫び続けて……、そのうち血まみれになる。それが勤め始めてすぐに見たビデオだよ」
メリンダ・ジョンソンさんとミッシェル・ベネッティさんもFacebookのモデレーターとして働いた経験があり、スピーグルさん同様に動物虐待と幼児虐待のムービーがつらかったと告白しています。
「サウジアラビアかどこかの母親が、双子の子どもを床に落としてから、首を絞めるムービーだったわ」
「ベビーシッターが赤ん坊の首を絞めるムービーも見たよ。毎日毎日何かが死ぬのを見る。けど、ムービーを削除する以外に、何もできないんだ」
スピーグルさんはFacebookのモデレーターとして働くようになってから自分に起きた変化として、「スナックなどの体に悪いお菓子をいつも食べるようになった」「毎晩悪夢を見るようになり、1、2時間ほどしか寝られず、いつもイライラするようになった」と語っていました。
また、Facebookは、削除した内容がFacebookのポリシーに正しく基づいていたかどうかを数値化した「正確度」という指標でモデレーターの能力を測っているそうです。Facebookはこの正確度が98%にまで達することをモデレーターに要求していますが、スピーグルさんによると「Facebookのポリシーは毎日変更されていて、98%の正確度を達成できた人なんていない。全員が80%ほどだった」とのこと。
ジョンソンさんとベネッティさんは正確度を高めることに日々集中せねばならず、プレッシャーだったと語っています。
ニュートンさんが2019年6月上旬にCognizantのタンパオフィスにまた訪れた際、ほとんどの部屋は清掃されており、建物の外ではミニチュアのゴールでバスケットなどが行われていました。しかし訪問の翌日、「見せたのは全て偽りで、まるで芝居みたいなものだった」という従業員からの密告があったとニュートンさんは語っています。
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