サイコパスやナルシストほど権力を握りやすいのはなぜなのか?どうすれば「真のリーダー」を生み出せるのかまとめ
by KELLEPICS
反社会的人格を持ったサイコパスの中には社会的に成功する人も多く存在し、一国を治める立場につくこともあります。一方で、近年の国家では「サイコパスよりもナルシストの方が国を治める立場につきやすい」という傾向があるとのこと。なぜサイコパスやナルシストが権力を得てしまうのか、本当にリーダーにふさわしい人がリーダーにつくためにはどうすればいいのかなどを、リーズ大学ビジネススクールのスティーブ・テイラー氏が解説しています。
Narcissists and psychopaths: how some societies ensure these dangerous people never wield power
https://theconversation.com/narcissists-and-psychopaths-how-some-societies-ensure-these-dangerous-people-never-wield-power-118854
権力への欲求は自己中心性や貪欲さ、共感の欠如といったネガティブな性格と関連性があることが、これまでの研究で示されています。また実際に権力を得た人がこのようなサイコパス的性質・性格を持つこともあり、インフラが整っておらず警察が機能していないような開発途上国におけるリーダー、例えばイラク共和国のサッダーム・フセインやリビアのムアンマル・アル=カッザーフィー、リベリアのチャールズ・テーラーらがそれに該当します。
しかし、近年では裕福な国でこのような人々がリーダーになることはあまりありません。裕福な国ではむしろサイコパスなリーダーよりも自己陶酔者(ナルシスト)がリーダーになることが増えているとのこと。ナルシストは注目と称賛を欲し、他人が自分に従属することに何の疑問も持ちません。共感能力の欠けるナルシストは、自分の力を保持するために他人を搾取することに対して不安を抱かず、この意味で、政治家はナルシストに適合する最たる職業ともいえます。
そして残念なことに、多くの人が「権力を持つのにふさわしい」と考える人々は、共感能力や公平性、責任感、賢明さを持つゆえに権力を求める傾向にありません。共感能力のある人は自分を高い地位に置くよりも、他人と相互関係を持ち密接に関わることを好みます。真の意味でリーダーになるべき人は権力や支配を望まず、つながりを求め、リーダーの地位を放棄するがゆえにナルシストやサイコパスがそこに収まってしまうわけです。
◆3種類のリーダー
by Dyadya_Lyosha
テイラー氏は、リーダーには通常、3種類が存在すると述べています。1つ目はリーダーになろうとする意図がないままに功績や特権に基づいてリーダーになってしまった「偶然のリーダー」。2つ目は理想主義や利他主義を掲げるがゆえにリーダーになることを周囲から求められ、公平性や正義を推進するためにリーダーの座についた珍しいタイプ。そして3つ目が、自分のために権力を手に入れようとするサイコパスあるいはナルシストのリーダーです。
権力を持つ人が冷酷かつ野心的で共感に欠ける、ということは政治の世界に限りません。ナルシストのリーダーの多くは注目や称賛を集めるためにカリスマ性を身に付けています。彼らは共感力が欠けているため自信や決断力を持ち、1つの物事に専念できるため目的を達成する力も持ちます。しかし、大抵の場合、権力を求める人は権力を持つ地位につくべきではない人物です。このため、権力を見張ることが必要になります。
テイラー氏は、潜在的リーダーは、権力につく前に共感力やナルシズム・サイコパスの傾向を評価されるべきだと考えています。また同時に、権力を得ようとしない共感力の高い人は、権力を持つ地位につくよう推進されるべきだとのこと。
◆「リーダー」選びの社会モデル
by Miguel Á. Padriñán
テイラー氏によると、不適切な人々が権力を得ないようにする社会モデルは狩猟採集社会の中によく見られるそうです。人類学者のクリストファー・ベーム氏が記した内容によると、狩猟採集を行っていた部族は必要以上に競争的で支配的なリーダーシップを制御することで社会をコントロールしていました。部族の人々は支配的な人物に立ち向かい追放するか見捨てるかの方法を取りました。
そして重要なのは、狩猟採集部族において権力は「求めるもの」ではなく「与えられるもの」でした。リーダーはなろうとしてなれるものではなく、周囲の人に賢明かつ経験が豊富で「適している」と見なされるがゆえに、権力を与えられていたのです。
また別の人類学者であるマーガレット・パワー氏は「リーダーの役割は自然発生的で、グループやメンバーによって、特定の状況下で与えられるもの」と記しています。いくつかの社会ではリーダーの役割は固定されず、必要に応じて入れ替わるとのこと。このような仕組みによって狩猟採集部族は安定と平等を維持し、紛争と暴力のリスクを抑えていたわけです。
現代は狩猟採集の時代よりもはるかに複雑ですが、冷酷で共感力のないリーダーを排除すべく何らかの評価制度が必要だとテイラー氏は強調しています。この仕組みは政府を初めとする世界の機関や企業を大きく変えるはずですが、世界を危機的状況から脱出させ、権力に値する賢明な人々がリーダーになるには必要な考えだとテイラー氏は述べています。
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