サイエンス

他人を利用し権力に執着する人が最終的に成功を収めるのか?


目的のために手段を選ばない「マキャヴェリズム」や非社会性を持つ「サイコパシー」、自己愛が強い「ナルシシズム」といった性格傾向をまとめてダークトライアドと呼びますが、権力者の中にはこのような性格傾向を持つ人も多くいます。ダークトライアドを持つ人は社会的に成功しやすいのか、その実際のところを心理学者のクレイグ・ノイマン氏とスコット・バリー・カウフマン氏が論じています。

Are people with dark personality traits more likely to succeed? | Psyche Ideas
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パーソナリティ障害の診断基準を満たす極端なダークトライアドは人口全体のうち1~2%にみられ、より緩やかなダークトライアド性質を持つ人々は人口全体の10~20%を占めるといわれています。なお、程度が緩やかであってもダークトライアドはウソをつきやすく、差別主義的な傾向があり、他人に対して暴力的になりやすいため、企業や組織といった集団の中で混乱を生み出す可能性があるとのこと。


これまでも心理学者はダークトライアドについて多くの研究を行っており、過去の研究結果では、サイコパスでも社会的に成功するケースもあることや、むしろサイコパスやナルシストほど権力を握りやすい可能性があることが示されています。一方で、共感力が高く、他人の成功を称賛し、人間の根本的な善意を信頼し、全ての人の尊厳を尊重するような、ダークトライアドの真逆ともいえる「明るい特性」を持つ人の回りに人が集まるのも事実です。

ダークトライアドに該当する人々は他人の気持ちを気にせず、人を自分のために利用するため、短期的に見ると人よりも早くトップに立つことができる可能性があります。しかし、2015年の研究では、サイコパシーの性質を持つ人は相手と競争する交渉タスクでは多くのポイントを獲得するものの、協力を伴う交渉タスクではポイントを得られないことが示されました。また、お互い協力する方が協力しないよりもよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利益を得る状況では互いに協力しなくなることを囚人のジレンマと呼びますが、ダークトライアドに該当する人はこのジレンマに陥る可能性が高いことも実験で示されています


これを現実世界に置き換えてみると、企業環境の中でダークトライアドに該当する人物はカリスマ性があるとみなされリーダーとして頭角を現す可能性が高い傾向にありますが、「仕事を成し遂げる」という視点からみると、チームプレイができず目標達成に至らない傾向があるとのこと。実際に、政治家に焦点を当てた研究では、ダークトライアドに該当する政治家は選挙に当選しやすいものの、法案を通すことができない傾向にあることが示されています。ダークトライアドにより人は窃盗や監督権の乱用といった行動を取りやすく、仕事の生産性の面からいえば逆効果であるとのことです。このため、ダークトライアドに該当する人の平均収入がそうでない人の平均収入を上回るということもありません。

また、ダークトライアドを持つ人は自己イメージが貧弱で、他人とつながることができず、人生の満足度が高くないことが報告されています。ゆえに、彼らは成功しても自殺や暴力的な死のリスクが高くなるとのこと。これとは対称的に明るい特性を持つ人々は自分自身に対してポジティブな見方を持ち、他人とつながりを得て、より満足度の高い人生を送りやすいと報告されています。

2020年の研究では、他人に協力的で親切であることが高い幸福レベルと関連していると示されており、研究者は「共感力」が明るい特性とダークトライアドを分ける重要な要素であると述べています。人間は種として「社会的つながり」を中心に繁栄しており、「協力」や「信頼関係」を前提としています。このため、ダークトライアドに該当する人々が協力や信頼を利用して利益を得ると、最終的に社会的つながりは切断されることになります。ダークトライアドを持つ人は最初こそ目立つものの、仕事や政治の世界で大きく成功することはできず、自分の人生に満足することもほとんどないと研究者は述べています。


一方、ダークトライアドと明るい特性の両方を持つ人も、全人口のうち40%存在するといわれています。このような人々が最も成功しやすいのではないかという見方もありますが、ダークトライアドの性質を持っているため、ポジティブな自己イメージが抱けず、彼らが人生に満足することは少ないとのこと。

ただし、性格特性は年齢と共に変化することも研究で示されています。30代から40代になるにつれて人が明るい性格特性を示す確率が上がるとわかっており、これは心理的成熟によるものだとみられています。ここで重要なのは本人の「変わりたい」という意思です。極端なダークトライアドの人々は自分を変えたがらず、権力や富、他者の支配に固執しますが、人類の根底にある社会的性質である「他人とつながること」に目を向けて変化を求めることで、最終的にはよりやりがいのある人生の道に進むことができると研究者は述べています。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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