レビュー

無料で膨大な量の18世紀の装飾記号「フルーロン」を検索可能なデータベース「Fleuron」使い方まとめ


フルーロンとは、活字を適切に配列して印刷物の体裁を整えるタイポグラフィにおいて使用される一種の記号であり、書物における句読点や装飾などの役割を持っています。18世紀の書物に使われたフルーロンをデータベース化し、検索可能にしたウェブサービスが「Fleuron」です。

Fleuron: A Database of Eighteenth-Century Printers' Ornaments
https://fleuron.lib.cam.ac.uk/index

Fleuron: About
https://fleuron.lib.cam.ac.uk/about

活版印刷におけるフルーロンには木や金属のブロックを手作業で彫って作ったものや、鋳造で作ったものなど多くの種類があり、印刷屋は活字を並べる際にフルーロンを使って書物を装飾していました。活版印刷であっても多彩な装飾を施すことにより、中世の写本などにより近い雰囲気を作り出すことが可能になります。

フルーロンには花をモチーフにしたものが多くあるほか……

by CircaSassy

天使が描かれたもの

by Paul K

本がモチーフになったものなどがあります。


ケンブリッジ大学のチームが中心となって作られたウェブサービス「Fleuron」では、画像中からフルーロンを認識して抽出するプログラムを開発し、印刷物に関するデジタル情報サービス企業のセンゲージラーニングから提供された3200万ページもの画像を使ってデータベースを作ったとのこと。

そうして作られたFleuronは、誰でも無料で書物のタイトルや著者、出版された期間、出版された場所などを基に書物を検索し、使用されたフルーロンを調べることができます。

公式サイト上部の「Book Search」をクリックすると……


「本のタイトル」「著者」「出版された都市」「出版社」「ESTC ID」などで本を検索することが可能。ESTC(English Short Title Catalogue)とは、1473年から1800年までにイギリスとその属国で出版された書物、英米以外の国で英語あるいはイギリス市場向けに印刷された書物の書誌情報を収録しているカタログであり、「T181256」などのように短いコードで書物を指定することができます。


また、出版された年を1700~1799年の間で指定することができるほか、書物を「History and Geography(歴史と地理)」「Social Sciences(社会科学)」「General Reference(一般文献)」「Law(法律)」「Fine Arts(美術)」「Religion and Philosophy(宗教と哲学)」「Literature and Language(文学と言語)」「Medicine, Science and Technology(医学、科学、技術)」といった分野別に指定することも可能。


たとえば「ロビンソン・クルーソー」の著者として有名なダニエル・デフォーの名前を入力し、「Author(著者)」を選択してから「Search」をクリックすると……


ズラリと該当する書物が表示されました。試しに一番上の「The life and surprizing adventures of Robinson Crusoe(ロビンソン・クルーソーの生涯と驚くべき冒険)」というタイトルの書物をクリック。


すると、書物の中に登場するフルーロンや登場するページなどが表示されました。今回選択した書物の中に登場したフルーロンは、植物をモチーフにしたものでした。


さまざまな方法で検索を続けると、時にはものすごく膨大な数のフルーロンが使われた書物にも行き当たります。


動物をモチーフにしたものやアルファベットの「A」をかたどったものなど、フルーロンには多くのバリエーションがあることがわかります。


気になったフルーロンをクリックしてみると……


詳細について調べることが可能。


また、トップページから「Ornament Search」をクリックすると……


フルーロンの大きさを使って検索することができます。


通常、1ページを横に横断する大きさのフルーロンは横幅(Width)が1000、縦(Height)が100とのこと。試しにページにまたがらない程度の幅で、縦の高さに余裕を持たせた数値を入力して「Search」をクリック。


すると、正方形に近いサイズのフルーロンが大量にヒットしました。


アルファベットをかたどったものや……


人物をモチーフにしたものなど、さまざまなフルーロンがあることがわかります。


また、横幅を60~140、縦を800~1200に調整して、比較的横長のフルーロンを検索してみると……


横に長いフルーロンがズラリと表示されました。


Fleuronでは18世紀に刊行されたさまざまな書物の中で使われたフルーロンを検索し、学習に利用したり見て楽しんだりすることが可能。これほど精緻なデザインが活字に彫られて使用されていたという事実に驚かされ、書物の装飾に昔の人々が力を注いでいたことが実感できました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
バチカン図書館が貴重な4000冊もの古代写本をデジタル化して無料公開中 - GIGAZINE

錬金術を超現実的に図解した無料ダウンロード可能な高解像度画像まとめ - GIGAZINE

「中世のPantone」17世紀に記された水彩絵具の調色ガイドブックが公開中 - GIGAZINE

1300年前の文書を近世に作られた本の装丁から発見、文字の解読にも成功 - GIGAZINE

大昔にまな板として敷かれていた本が今や世界に4冊しかない本としてユネスコ記憶遺産に登録されている - GIGAZINE

レトロな雰囲気の活版印刷がおうちで可能になる大人の科学マガジン「小さな活版印刷機」を実際に使ってみました - GIGAZINE

ニューヨーク・タイムズが活版印刷方式で刷られた最後の日を記録したムービーが公開中 - GIGAZINE

本に鎖を付けて収蔵している現存する図書館7つ - GIGAZINE

in レビュー,   ネットサービス,   デザイン, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.