ニューヨーク・タイムズが活版印刷方式で刷られた最後の日を記録したムービーが公開中

日々大量の新聞を印刷する新聞社では、かつてキーを打鍵することで活字母型を自動的に並べて、それを鋳型として印刷版を作る「ライノタイプ」という機械を使っていました。今はもう使われていませんが、その最後の日、大手新聞社であるニューヨーク・タイムズで職人たちがどのように作業していたのかを収めた貴重な映像がVimeoで公開されています。
Farewell - ETAOIN SHRDLU - 1978
さまざまな機械が触れ合う音をバックに、ライノタイプのキーボードがアップで映し出されます。かつては活字を1個1個手で拾って並べていましたが、ライノタイプではキーを打鍵すると活字が自動的に並んで鋳型となり、1行分の「版」を作ることができます。

ライノタイプは1行ごとに文字を並べる仕組みになっており、タイトルに含まれる「ETAOIN SHRDLU」はライノタイプオペレーターたちが打鍵をミスした際、「この行はタイプミスをしたので使わない」という目印にした文字列のこと。ライノタイプの左端の2行を上から順にタイプするとこのような順になるとのことで、このキーの並びはアルファベットで最も使用頻度が高い文字の順番になっています。

ライノタイプオペレーターたちは、皆非常に真剣な表情で活字を並べています。

このとき時刻は午後8時すぎ。翌日朝刊の初版は午後9時には完成させなければなりません。

この日はニューヨーク・タイムズの印刷所に勤めるライノタイプオペレーターたちにとって、大きな節目となる1日です。

作業を行っている1978年7月2日は、ニューヨーク・タイムズにとってライノタイプを使う最後の日。翌日からはコンピューターを使っての版作製が始まります。

多くの人が働く印刷室ではこの日もこれまでと変わらず、何人もの熟練したライノタイプオペレーターたちが版を作製しています。

ライノタイプ方式では印刷する版を熱した活字合金で作製するため、機械の周辺は非常に高温になります。

1行ごとに作られた活字合金製の版を、順番通りに並べていきます。

目立つヘッドラインを作製するために、昔ながらの1字ずつ特殊な活字を並べる方法も、当時はまだ存在していました。

印刷室の向こうでは、翌日から活版印刷に取って代わるコンピューター印刷の準備が、着々と進められているようです。

「ライノタイプは100年も前に発明されたのさ」と語る男性は、ライノタイプがいかに素晴らしい発明であったのかを語り、ライノタイプとの別れを惜しんでいました。

何人ものライノタイプオペレーターたちが並んで働いている光景。

ライノタイプは活字の型を並べる作業、活字の型に活字合金を流し込んで版を作製するところまでが一体化した機械になっています。細い金属の溝を通り、活字合金が型に流し込まれていきます。

ライノタイプで1行ごとの版が作られ……

さらに新聞の設計図通りに版を並べ直す作業を行います。

作業には編集者たちが立ち会い、慎重に間違いがないかチェックしていました。

1行ずつ並べられた版は余計な部分がカットされ、1枚の版となります。

午後9時の締め切りまで残り14分。

写真も活字合金によって作られていました。

並べた版を上から金属のブロックで押さえ、金づちでたたいてはめていく作業にも熟練の技が光ります。

新聞1枚の版は非常に重い金属の塊であるため、台車に乗せて運ぶ模様。

午後9時の初版に間に合うと……

印刷所はさながらパーティーのようにくつろいだ雰囲気に。この男性は49年もライノタイプオペレーターとして勤めてきた大ベテランであり、ニューヨーク・タイムズの印刷所の生き字引とも言うべき存在。

「新しいシステムの方が誰にとっても利益があることは知っているけど、やっぱり悲しいよ」

つかの間の休息を終えると、初版で印刷された原稿が次々と運ばれてきます。初版の間違いを見つけると……

正しい版に差し替えます。最終版の締め切りは午後11時。

そして、最終版が完成すると……

活字合金の版をプレスして型を作ります。

型に合金を重ねてプレスして……

半円形の金属版をいくつも作り出します。

金属製の版は大きな音を立てながら印刷所内を移動し……

次々に並べられます。

これらの金属版は1つが40ポンド(約18kg)もあるとのこと。

版を輪転機にセットして……

ニューヨーク・タイムズ最後の活版印刷が始まりました。

輪転機はスピードを増し、ものすごいスピードで新聞が印刷されていきます。

輪転機は一晩中稼働し続け、印刷を行います。

印刷が終わった印刷所内では、ライノタイプと最後の別れを惜しんでいるライノタイプオペレーターの姿もありました。

オペレーターが最後に並べた活字は「etaoin shrdlu」。

モーターが切られ、二度と活字合金が流されることのないライノタイプを、名残惜しそうになでる男性。

先ほどまでお祭りのような騒ぎだった印刷所内は、静まりかえって何の物音も響きません。こうしてニューヨーク・タイムズにおける活版印刷の歴史は、静かに幕を下ろしました。

ライノタイプオペレーターたちは、コンピューターのタイプライターへ「異動」。

コンピューターであれば画面上で簡単に誤字を修正でき、これまでのように1行ずつ金属の版を入れ替える必要もありません。

印刷方式も変わり、重い活字合金の版を並べるということもなく……

ボタン1つで印刷が可能になりました。

新しい発明が古いものを全く駆逐してしまったかのようにも思ってしまいますが……

最終的に作業するのはやはり熟練の職人たち。

彼らの目と手が、日々大量に刷られる新聞を生み出しているのです。

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