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ビデオ・アート作品を守り抜くため旧型テレビの修理を行う職人の半生を描いたムービー「The Fine Art of Television Repair」


映像と音声を使った「ビデオ・アート」では、コンテンツを映し出すテレビなどの機器も作品の一部となっていることがあります。しかし、これらの電子機器には寿命が存在し、いずれは故障してしまうもの。アメリカの近代美術館など、多くの美術館で展示されているビデオ・アート作品の保全の仕事を請け負っているチー・チェン・ルイ氏の半生をまとめたドキュメンタリーを、Great Big StoryがYouTubeで公開しています。

The Fine Art of Television Repair - YouTube


1960年代から1970年代にかけてテレビは最も大きな影響力を持つメディアの1つとなり、当時の多くのアーティストたちがテレビを無視して活動することはできないほどの地位を占めていました。


ニューヨーク近代美術館でメディア保存士の補佐を担当しているピーター・オレクシク氏は「当時のテレビは全く新しいもので、みんな夢中になっていた」と話しています。


「しかし、テレビは家電製品であり、1点大きな問題を抱えています」とオレクシク氏が語り、問題点の存在を示唆しています。


ホイットニー美術館で上級AV(オーディオ・ビジュアル)技術者として仕事をこなすリチャード・ブローズ氏は「絵画や彫刻作品とは異なり、アート作品に使われているテレビなどの電子機器は、前触れもなく壊れることがあります」と話しています。


美術館で展示されているアート作品には、旧型のテレビなどに映像を投影したものが存在していますが、これらの機器は突然故障してしまうというリスクを抱えています。では、映像が映らなくなってしまったとき、美術館の担当者はどうするのでしょうか?


オレクシク氏は「ニューヨーク近代美術館は、『ルイ』を呼びます」と回答。


また、ブローズ氏も「私たちが最初に連絡するのは、『ルイ』です」と語り、どちらの美術館もルイ氏に修理を依頼するそうです。


テレビなどの電子機器を使ったビデオ・アート作品の保護に欠かすことができないとされる、この「ルイ」と呼ばれる人物は何者なのでしょうか。


「私の名前はチー・チェン・ルイです。CTL ELECTRONICSで電気技師をしています」


「私は第二次世界大戦中に中国の重慶で生まれ……」


「戦後、上海に引っ越しましたが、その後も香港、台湾と住居を転々としました」


「私は小さい頃から、物事がどうやって動いているのかを調べるのに興味があり……」


「少年時代は何でも分解して、修理を試みるのが大好きでした」


「ある日、私はテレビの仕組みを勉強することになるのですが、当時の私にとって、とても難しかったことを覚えています。」


「それでも、『スキャニング』『のこぎり波』『正弦波』などの解説は、私を夢中にさせてくれました」


「しかし、当時の台湾にはテレビ放送はなく、私が実際にテレビが動いている姿を見たのは、アメリカに来てからのことでした」


「そして、アメリカにやってきた私は、独学でテレビの仕組みを理解していたので、テレビの修理店で働くことにしました」


「その後、私は1969年に当時最新のテレビや撮影機器などを扱うお店を立ち上げました」


「すると、この店には多くのテレビ関係者が集まる場所となり、著名なアーティストも訪れるようになりました」


「芸術家のアンディ・ウォーホルや歌手のジョン・レノンなどは、私の店で機器を購入しました」


「また、映画監督のウディ・アレンやシャーリー・クラークと出会ったのも、このお店がきっかけです」


「また、同じく映画監督のフランシス・フォード・コッポラは、週末に必ず私の店を訪れていました」


「当時、私はこの店でただ商品を売っていただけではなく、アーティストたちの要望に合わせて、撮影機器のカスタマイズも行っていました」


「アーティストたちと意見を交わしながら行うこの作業は、とても楽しかったという思い出があります」


「近年取り扱っている仕事は、主に美術館の展示品の保全作業です。電子機器が含まれるアート作品は、私の店に送られてきます」


「美術館の目的は、作品を現状のまま維持することです。だから、私は機械の内部だけを修理して、外観が変わらないようにすることを心掛けています」


「テレビのような機器は時間がたてば、熱や動作不良などで、必ず故障します」


「しかし、私は機器を修理するために必要な部品を入手する方法や、何が代用できるかを理解しています」


「このため、美術館はオリジナル作品を作ったアーティストの一員として、私を呼んでいます」


「私はニューヨーク近代美術館や……」


「ホイットニー美術館」


「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館」


「メトロポリタン美術館の作品の保全に関わっています」


「私は全てのアーティストの作品を維持し続けたいと考えており、私の義務であると思うようになりました」


「これが実現できれば、私にとっても喜ばしいことです」

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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