サイエンス

「元に戻せない」と考えられていた老化由来のタンパク質損傷を酵素で修復


加齢に伴って人体のタンパク質に蓄積する物質を分解し、元の状態に戻す人工酵素「CMLase」を開発したと、Revel Pharmaceuticalsなどの研究チームが報告しました。高齢者から採取した水晶体や皮膚、動脈の組織を使った実験では、老化に伴う化学的な損傷を大幅に減らすことに成功したとのことです。

Reversal of protein chemical aging by enzymatic deglycation | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-026-75141-2


人間の体内では、糖や脂質に由来する物質がタンパク質と反応し、「終末糖化産物(AGEs)」と呼ばれる物質が作られます。AGEsは年齢とともにコラーゲンなどの長く使われるタンパク質へ蓄積し、組織を硬くしたり、慢性的な炎症を引き起こしたりすると考えられています。

研究チームが標的としたのは、AGEsの一種である「Nε-カルボキシメチルリジン(CML)」です。CMLはタンパク質を構成するアミノ酸のリジンが変化したもので、一度作られると元に戻せないと長らく考えられていました。

研究チームは、CMLの一部がアミノ酸のグリシンと似た構造を持つことに着目し、グリシンを分解する酵素を出発点として改良を進めました。そして、5億種類を超える変異体から性能の高いものを選び、5回の「指向性進化」を経て、CMLをリジンへ戻すCMLaseを作り出しました。


CMLaseを人工的にCMLで修飾したタンパク質へ作用させたところ、アルブミンやカゼイン、コラーゲン、ヘモグロビンなどでCMLが52%~97%減少しました。アルブミン上で確認された33カ所のCMLのうち、30カ所で減少が見られ、タンパク質そのものが分解されていないことも確認されました。

さらに、64歳のドナーから採取した水晶体ではCMLが45%減少しました。75歳のドナーの動脈では70%以上、高齢者の皮膚では55%以上減少しており、実際の人体組織に長年蓄積したCMLにも作用することが示されました。


ただし、今回の実験では薄く切った組織や取り出したタンパク質が使われており、生きた人体の組織へ酵素を届けられるかは分かっておらず、人間の老化そのものを逆転させる効果が確認されたわけではありません。また、CMLを除去することで組織の柔軟性や機能が回復するか、安全に投与できるかについても今後の検証が必要です。

研究チームは、CMLは老化に伴う数多くの変化の1つにすぎず、CMLaseだけで老化全体を解決できるわけではないとしています。それでも、これまで元に戻せないと考えられていたタンパク質の損傷を酵素で修復できる可能性を示した点は重要で、同じ方法をほかのAGEsに応用できる可能性もあります。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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