サイエンス

農地の土壌を汚染する「永遠の化学物質(PFAS)」を除去する画期的な方法を科学者が考案


有機フッ素化合物の一種であるペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)はフライパンのコーティングや消火剤、ファストフードの包装紙などに使用されていますが、極めて分解されにくいため「永遠の化学物質」とも呼ばれています。環境や人体への被害が問題視されているPFASを農地の土壌から除去する画期的な方法を、アメリカ・イェール大学の研究チームが発表しました。

Integrated thermal and phytoremediation of agricultural soils impacted by PFAS | PNAS
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2600786123

Removing ‘forever chemicals’ from farmlands — at a fraction of the cost | Yale News
https://news.yale.edu/2026/07/22/removing-forever-chemicals-farmlands-fraction-cost

'Forever Chemicals': Scientists Find a Genius (And Cheaper) Way to Remove PFAS From Soil : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-found-a-genius-way-to-remove-forever-chemicals-from-soil

はっ水・はつ油性があるPFASは、数十年にわたってさまざまな製品の熱や薬品への耐性を上げるために使われてきました。しかし近年の研究により、PFASは非常に分解されにくく環境中に長期間残留することや、がん先天性欠損症心血管リスク胎児への悪影響といった健康問題に関連していることなどが判明しています。

すでにPFASは世界中のさまざまな土壌や地下水などに浸透しており、農作物を通じて人体に取り込まれることも問題となっています。アメリカに生息する野生の淡水魚1匹を食べると、汚染された飲料水1カ月分に匹敵するPFASの一種・ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)を摂取してしまうとの研究結果も報告されています。

アメリカの野生の淡水魚1匹を食べると1カ月分の汚染された水を飲むのと同量の化学物質を摂取してしまうという研究結果 - GIGAZINE


PFASによる農地の土壌汚染も深刻な問題です。アメリカなど一部の国では、雨水や下水を処理した後に残る栄養豊富な汚泥を利用した「バイオソリッド」が、石油化学肥料の代替となる環境にいい肥料として使用されています。ところが、下水処理後の汚泥の多くはPFASに汚染されていることから、バイオソリッドを使用する農地の土壌もPFASに汚染されてしまったとのこと。

アメリカ環境保護庁(EPA)が2001年に行った全国下水汚泥調査では、アメリカで1年間に生産されるバイオソリッドの総量には2749~3450kgものPFASが含まれており、その約半分が農地に散布されていると推定されています。

イェール大学の環境科学者であるジェイク・トンプソン氏は、「今回の研究はアメリカに焦点を当てたものですが、入手可能なデータに基づくとPFASは世界的な課題です。PFASによる農地の汚染は、問題の全容が明らかになる前にPFASを含む肥料を使用していた小規模農家や有機農家に、特に大きな被害をもたらしています」と述べています。

PFASが土壌に散布されると長年にわたりそこにとどまるだけでなく、バイオソリッドの散布量が増えるほど蓄積され、水路に流れ込んだり農作物に吸収されたりして循環する可能性があります。今回トンプソン氏らの研究チームは、PFASを農地の土壌から除去する画期的な方法を考案しました。


トンプソン氏の推定では、アメリカ全体で120万ヘクタール(1万2000平方キロメートル)もの農地がPFASによる深刻な影響を受けているそうです。土壌からPFASを除去する従来の方法には、汚染された土壌を掘り起こしたり機械で焼き切ったりするものがありますが、こうした浄化作業のコストは1ヘクタールあたり80万~160万ドル(約1億3000万~2億6000万円)に達するそうで、アメリカの全農地からPFASを除去するには8兆ドル(約130兆円)ものコストがかかることになります。

今回研究チームが考案した土壌の浄化手法では、まずは汚染された土壌に玄武岩や石灰岩といったアルカリ性の岩石を砕いたものを薄く敷き詰めます。これにより土壌の水素イオン濃度が上昇し、生育する植物を通じてPFOSやペルフルオロオクタン酸(PFOA)といった主要なPFASが除去される速度が速まるとのこと。

続いて麻などのPFOSを急速に蓄積する能力で知られる植物を土壌で栽培し、収穫後の植物を用いてバイオ炭という特殊な木炭を生成することで、PFOSやPFOAを分解するという仕組みです。研究チームは、この手法による土壌改善費用は1ヘクタールあたり1460ドル(約23万9000円)と見積もっています。土壌改善プロセスは最長20年にわたり毎年繰り返されますが、総費用は1ヘクタールあたり2万9000ドル(約470万円)強にとどまり、従来の手法より大幅なコスト減が可能です。


また、この手法では土壌に散布された岩石の風化促進とバイオ炭の作成により、温室効果ガスである二酸化炭素を大気中から除去できるというメリットもあります。研究チームの推定では、この手法がアメリカ全土で運用されれば年間1050万トンもの二酸化炭素を除去できるとのこと。

トンプソン氏は、「これはPFAS汚染の問題を抱える農家が自分の土地に対してある程度の主体性を持ち、土壌を以前よりも良い状態にするための真の道筋となります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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