サイエンス

「永遠の化学物質」ことPFASと軍人に多い精巣がんとの関連が明らかに

by Kenneth Wright

軍人や消防士は、他の職業と比べて精巣がんと診断される率が高いのですが、消火剤の泡に含まれる「永遠の化学物質(Forever Chemical)」ことPFAS(有機フッ素化合物)と関連があることが、研究によって初めて示されました。

Pioneering Study Links Testicular Cancer Among Military Personnel to ‘Forever Chemicals’ | KFF Health News
https://kffhealthnews.org/news/article/pioneering-study-links-testicular-cancer-among-military-personnel-to-forever-chemicals/


高濃度なPFASへの暴露が発がんリスクに関連していることはこれまでの研究でわかっていましたが、軍関係者への影響はわかっていませんでした。

アメリカ国立がん研究所などのメンバーによる研究チームは、1988年から2017年のあいだに収集された空軍軍人の血清サンプルを用いて、血清のPFAS濃度と精巣胚細胞腫瘍との関連を調べました。

A Nested Case–Control Study of Serum Per- and Polyfluoroalkyl Substances and Testicular Germ Cell Tumors among U.S. Air Force Servicemen | Environmental Health Perspectives | Vol. 131, No. 7
https://doi.org/10.1289/EHP12603


調査の結果、飲料水の中のPFAS濃度が高い基地に勤務していた人や防火任務に従事していた人において、血流中のPFASレベルが高くなり、精巣がんを患っていた人はがんと診断されなかった人より血清中のPFASの一種・PFOS(パーフルオロアルキル化合物)のレベルが高かったことがわかりました。

研究の共著者であるマーク・バーデュー氏は「この研究は私が知る限り、アメリカ軍人のPFASレベルを測定し、集団におけるがんのエンドポイントとの関連を調査した初の研究で、新たな証拠がもたらされました」と述べました。


PFASは1974年の国防総省による調査で、魚に対して致命的な影響があることがわかり、1983年には空軍の調べで、ネズミに対しても致命的な影響を与えることがわかっています。

しかし、航空機の墜落や船舶火災など、極度の高温になる火災に対して有効であったことから、国防総省は使用を継続してきました。

実際に、トラヴィス空軍基地で泡の消火剤を用いている写真は、危険性のあるものを扱っているような姿には見えないものとなっています。

DVIDS - Images - Flurry of foam released at Travis [Image 4 of 15]
https://www.dvidshub.net/image/1025639/flurry-foam-released-travis


空軍で37年にわたり消防士を務めていたゲイリー・フルック氏は2000年、45歳の時にがんで精巣の摘出と化学療法が必要になることを知らされました。フルック氏は他の数百人の人々とともに、消火剤および消火剤に用いられる化学物質を製造する企業を相手取り、訴訟を起こしています。

フルック氏と同様、空軍消防士だったケビン・フェラーラ氏は、空軍から危険性についての警告はあったとしてもわずかなものだったと証言しました。フェラーラ氏自身は精巣がんではないものの、PFASを原因とした他の健康上の懸念があるとのこと。

議会のPFAS特別委員会を務め、PFASの影響を受けた人々に障害給付金を提供することを義務づける法律を作ったダン・キルディー下院議員は「連邦政府はPFAS暴露によってもたらされる脅威への対処があまりにも遅すぎました。この状況は容認できません」と述べています。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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