定期的に献血をすると健康にいいことが示される
病気の治療や手術などで必要となる輸血は、健康な人が無償で血液を提供する献血によって成立しています。献血は社会に大きく貢献するボランティアですが、定期的に献血することで体に悪影響を及ぼすという化学物質の体内含有量を減らすことができ、社会貢献できるだけではなく自身の健康にも役立つ可能性が報告されています。
Effect of Plasma and Blood Donations on Levels of Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances in Firefighters in Australia: A Randomized Clinical Trial | Occupational Health | JAMA Network Open | JAMA Network
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2022.6257
Regular blood and plasma donation reduces firefighters' PFAS levels - Scimex
https://www.scimex.org/newsfeed/world-first-trial-finds-regular-blood-donation-reduces-firefighters-pfas-levels
オーストラリアのマッコーリー大学の研究チームは、オーストラリアのヴィクトリア州消防局に勤務する285人の消防士を対象に実験を行いました。285人の消防士のうち、95人の消防士が12週間ごとに血液を、95人の消防士が血漿(けっしょう)を提供し。残り95人は対照群として、血液も血漿も提供しませんでした。
消防士は日常的に使う消火剤の影響で、体内にPFAS(ペルフルオロアルキル物質、あるいはポリフルオロアルキル化合物)と呼ばれる物質が蓄積しやすいといわれています。PFASは撥水(はっすい)やコーティング、消火剤などさまざまな製品に使われていますが、分解に時間がかかり、自然界に半永久的に残り続けることから「Forever Chemicals(永久化学物質)」と呼ばれることがあります。
MEDIA RELEASE: Nearly 40 firefighters responded to a classroom fire in #Mitcham just after midnight after a call to Triple Zero (000).
— Fire Rescue Victoria (@FireRescueVic) April 12, 2022
Read more: https://t.co/8cNjbqgmMz pic.twitter.com/JBKearEWTK
PFASは消火剤だけではなく、塗料からフライパンにまであらゆるものに含まれるため、日常生活を続けていると少しずつ体内に蓄積されるといわれており、PFASには肥満、糖尿病、がんなどの健康問題に関連する可能性が指摘されています。そのため、、各企業がPFASの使用を廃止すると宣言しているほか、2021年10月にはアメリカのバイデン大統領がPFASの規制を発表しています。
PFASは血中の血清タンパク質と結合するため、血液成分の量を減らすと時間をかけて血中PFAS濃度を下げることができると考えられていました。そこで、研究チームが被験者の血中PFAS濃度の推移を測定した結果、対照群の血中PFAS濃度に変化は見られなかった一方で、血液や血漿を提供した群では血中PFAS濃度に有意な低下が見られたとのこと。
研究チームの一員であるロビン・ガシロフスキー氏は「血液の提供と血漿の提供のどちらでも血中PFAS濃度が下がりました。また、血漿を提供する場合はより効果的で、濃度が30%も低下しました」と報告しています。
今回の結果は、「実際に血液成分の量を減らすと血中PFAS濃度を下げることができる」という主張を裏付けるものとなります。しかし、PFASの排除に関する研究は始まったばかりであり、研究チームはさらなる研究を行う価値があると述べています。
実験に参加したヴィクトリア州消防局のミック・ティスバリー副署長は「消防士は自分の健康よりも他人の健康と安全を優先することが多く、地域活動を通じて血中PFAS濃度が高まっている消防士の健康改善に利用できるのは喜ばしいことです。また、この研究結果はPFASにさらされるリスクの高い職業に就く人々にとっても有益なものになるでしょう」とコメントしました。
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