取材

空中から360度花火が飛び出す演出も、世界の花火・日本の花火が楽しめる「大曲の花火 春の章2019」を見てきました


夏に全国花火競技大会が行われる花火の街「大曲」では、2017年に行われた国際花火シンポジウム」を機に、「世界の花火と日本の花火」をテーマとした花火大会が春に行われています。今回は、フランスの花火会社による演出や3台のクレーンでつるされた大仕掛け花火が見られるということで、実際に見てきました。

大曲の花火ー春の章ー2019年「世界の花火 日本の花火」
https://www.oomagari-hanabi.com/spring2019/index.html

花火の打ち上げ会場は、秋田県大仙市大曲雄物川河畔です。


JR大曲駅に到着。


花火大会会場へ向かう道の途中にある「大曲の花火伝統文化継承資料館はなび・アム」は、2018年8月に完成した新しい花火資料館です。


4Kシアターで上映しているプログラムは、5月から新しい内容となり、花火の打ち上げ現場の様子や昨年の大曲の花火の映像などに変更されていました。


午後5時30分、日も陰り出してきた頃、花火大会会場へ向かいます。


会場へ入場し、打ち上げ場所を見てみると、3台のクレーンにつるされた何かが見えます。


ズームして撮影してみると、花火の筒が扇状にいくつも並べられている花火の発射装置でした。1台の装置につき約400本の筒が組み込んであるとのこと。


入場時に配られているプログラムで本日の内容を確認。19時から始まり20時15分のフィナーレまで、地元大曲の花火師による「創造花火の競演」、大曲の花火会社と一般社団法人日本煙火芸術協会による「大玉割物競演の打ち上げ」、日本の花火として株式会社丸玉屋 による花火ファンタジア「PASSION!!」、世界の花火としてフランスのルジェリ社による「パリジャン・ファンタジー」などのプログラムが組まれています。


会場ではFMラジオによる実況生中継が行われます。左からFMはなびパーソナリティの藤田浩士氏とNPO法人大曲花火倶楽部の富樫真司氏です。小西亨一郎氏も解説に加わるのですが、姿が見えません。


探してみると、会場内にある小西氏の会社のドリンク販売ブースで会うことができました。


指定席の入場券を持っていれば、土手にあるカメラエリアへの入場が可能です。夏の全国花火競技大会のような混雑はなく、斜面には十分余裕があるので、大曲で上がるきれいな花火を広々とした環境で撮影できます。


開始10分前の様子。


午後7時、大曲の花火 春の章がスタートしました。対岸の打ち上げ場所だけでなく、客席側にも下から飛び出すトラと呼ばれる花火が用意されていて、迫力満点の花火を見ることができます。


オープニング花火の後は、日本独自の芸術性の高い花火を1発ずつ丁寧に打ち上げる大玉競演第1部です。響屋大曲煙火株式会社の「昇曲付四重芯変化菊」など、5社10発の花火が打ち上がりました。この花火は、夏の全国花火競技大会に出品された作品がもう一度見られる機会でもあり、その中でも選りすぐりの作品が見られます。


続いて、この花火大会のテーマでもある日本の花火から株式会社丸玉屋による花火ファンタジア「PASSION!!」が始まります。

花火ファンタジア「PASSION!!」【2019大曲の花火 春の章】 - YouTube


このプログラムで、クレーンでつり上げられた花火の発射台3台の出番となります。空中にある発射台から花火が360度吹き出しました。


下の写真は、前年に開催された「大曲の花火 春の章2018」の同プログラムの仕掛け花火。巨大な仕掛け花火が地面の強度の関係で会場の左端にしか置けなかっため、会場の端と端で見え方や迫力に差が出てしまいましたが、今回は仕掛け花火が均等に3カ所に配置されており、会場のどこからでも公平に大迫力を味わうことができます。


終始、さまざまなパターンで花火が発射され生きているかのような動きを見せる場面も。打ち上がる花火も大量で、大曲の花火会場でこれだけのボリューム感のある花火が見られるのは、春の章だからこそです。


最後の盛り上がりでは、ワイドに展開された花火が大量に打ち上がり目の前いっぱいに広がります。風向きが花火にとっては都合の悪い向かい風ということもあり、終盤になるに従って煙が立ちこめてしまい花火が見えにくくなりますが、写真ほど真っ白で見えないということはなく、花火が終わると観客から拍手と歓声が湧き上がりました。


会場中に煙が立ちこめているため、煙が晴れるのを待ちます。空からヒラヒラと花火玉を包んでいる玉皮の破片が落ちてきました。


続いて、大玉競演の第2部です。匠の技で作られた豪華な大玉が上がります。片貝煙火工業「昇朴付分砲小割二段咲き」


次は、地元大仙市の花火師による創造花火の競演です。株式会社和火屋、タイトルは「銀座ネオンパラダイス」です。

創造花火株式会社和火屋「銀座ネオンパラダイス」【2019大曲の花火 春の章】 - YouTube


スターダストレビューの同名の曲に合わせ、ゆっくりとした動きの時差式の花火が、ネオンの点滅をイメージさせます。花火玉の特徴とテーマをマッチさせた創造花火となっていました。


株式会社北日本花火興業、タイトルは「STARS ~宇宙の声が聞こえる~」です。

株式会社北日本花火興業「STARS ~宇宙の声が聞こえる~」【2019大曲の花火 春の章】 - YouTube


下から上へと、夜空のキャンバスに花火で絵を描いていくようなイメージで花火が次々と開いていったり……


一斉に絵が浮かび上がったりと、美術館に飾られている絵を見て回っているかのようなきれいなデザインの花火が打ち上げられました。


響屋大曲煙火株式会社、タイトルは「Express ~届きますように~」です。

響屋大曲煙火株式会社「Express ~届きますように~」【2019大曲の花火 春の章】 - YouTube


HIDETAKE TAKAYAMAの「Express feat. Silla (múm)」が流れ、緑色を基調にした花火が打ち上がります。


「Express feat. Silla(múm)」が耳に残る曲でもあり調べてみると、この曲が宮沢賢治銀河鉄道の夜をモチーフとした作品だということがわかりました。

HIDETAKE TAKAYAMA 「Express feat. Silla (múm) 」 Music Video - YouTube


この曲のMVを見ると花を手向けている場面があり、この創造花火の中でも一輪の花を表現した花火が上がっていました。緑の草原や白い雲・銀河など、「この創造花火では曲のイメージ映像を花火で表現しようとしたのではないか」と、見る側に想像させる花火でもありました。このように後からその花火の意図を知ることがあるのも、創造花火の楽しみのひとつです。


株式会社小松煙火工業、タイトルは「桜華絢爛(おうかけんらん)」です。

株式会社小松煙火工業「桜華絢爛(おうかけんらん)」【2019大曲の花火 春の章】 - YouTube


緑色と桜色の濃く明るい光が、桜並木の情景を表現しています。


満開の桜に桜吹雪と、桜尽くしの花火が次々と上がりました。


続いて、プログラム「世界の花火」。フランスのルジェリ社による「パリジャン・ファンタジー」が打ち上がります。

世界の花火ルジェリ社「パリジャン・ファンタジー」【2019大曲の花火 春の章】 - YouTube


バレエ音楽のメロディに合わせて花火を上げることで、花火がダンスフロアで踊っているかのように見えます。


ラストは運動会などでの定番曲Offenbachの「天国と地獄」をBGMに、次々と花火が上がりました。海外の花火の特徴として、曲のメロディーやリズムに合わせて花火を上げることで、観客にも踊りを促すような演出が多く見られます。


フィナーレの前に、大玉競演の第3部です。1発の花火で芸術作品が作れる程の高い技術を使った花火が打ち上がります。有限会社菊屋小幡花火「里山の忘れ柿」


株式会社北日本花火興業「昇曲付天空のユートピア」


株式会社齊木煙火本店「昇曲付聖礼花」


フィナーレは、タイトル「ボヘミアン・ラプソディ」。映画のタイトルにもなったQUEENの名曲を使ったフィナーレの花火が打ち上がります。

「ボヘミアン・ラプソディ」【2019大曲の花火 春の章】 - YouTube


6分間フルコーラスで流すことに意味がある作品でもあり、事前に聞いたところ「フルコーラス6分間で打ち上がる」とのことで期待が高まります。


バラード調の第1パートでは、1発ずつ花火を上げたり、ピアノの余韻としだれ柳を合わせたりと、ゆったりとしたイメージで花火が上がります。


バラード調の第2パートでは、写真上部のような四方八方に星が散っていく八方咲きと呼ばれる花火を次々と打ち上げるなど、徐々に花火の厚みが増してきます。


エレキギターのソロパートでは、下から吹き出す花火がギターのメロディに合わせて左から右、右から左へ次々と吹き出す場面も。


オペラパートでは川を挟んだ対岸ではなく、観覧席目の前に仕掛けられた噴き出しの花火が、オペラのせりふに合わせてランダムな位置から吹き出したり、左半分・右半分・全体など動きのある演出で吹き出します。


ロック調のパートは、時差式花火を乱れ打ち、花火の連発によって盛大に盛り上がります。写真では煙が重なって全く見えないように写りますが、現地で生で見た際にはそれぞれの花火をしっかり見ることができました。


最終パートは、金色にキラキラ輝く錦冠(にしきかむろ)と呼ばれる花火を次々と打ち上げ、会場いっぱいに広がる花火を見せた後……


緑色に点滅しながらゆっくりと長時間燃えながら落ちてくる葉落と呼ばれる花火が現れ、銅鑼の音の余韻と共に消えていきました。


フィナーレ花火の後、この春の章の終わりを告げる打止めの花火が上がります。


最後は、恒例となっている大曲の花火の名物花火師とのエール交換です。南こうせつ「満点の星」が会場に流れ、花火師は赤のトーチを、観客はペンライトやスマートフォンなどを振って、お互いのエールを交換します。「無事花火大会を終えた花火師の安堵と観覧客からの感謝」を感じることができる現地でしか味わえない感動的なシーンです。


大曲の花火 春の章は、日本と世界の花火の違いも知ることができる機会だけではなく、競技会でしか見られない芸術性の高い花火玉や創造花火なども見ることができる、夏の競技会のいいとこ取りの花火大会でもあります。夏のような混雑もないので、ゆったりと大曲の花火を味わうことができるお得な花火大会です。秋には劇場型の花火として、春の章と同様のいいとこ取りの花火大会「大曲の花火 秋の章2018」が行われます。

春の章から2日後、春の章が行われた大仙市にある花火会社株式会社響屋大曲煙火を訪問してみました。


敷地内では、新しい工場が建築中。「秋の章が行われる10月頃には稼働している」とのことで、2019年10月中旬頃、秋の章の観覧と共に再度訪問しレポートする予定ですのでお楽しみに。

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in 取材,   動画, Posted by darkhorse_logmk

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