取材

「プライベート花火」を花火の本場である大曲の花火大会「新作花火コレクション」で打ち上げてみた


秋田県大仙市大曲は、地域活性の柱として「花火」に力を入れています。大曲では毎月花火に関するイベントが行われており、3月には「大曲の花火・冬の章・新作花火コレクション」と題して、全国各地から集まった若手の花火師による新作花火の競技大会が行われています。今回、この花火大会で、個人のメッセージを打ち上げることができるプライベート花火を申し込んでみましたので、花火大会の様子とプライベート花火を申し込むとどのような体験ができるのかをレポートします。

新作花火コレクション
http://daisenkankou.com/near/新作花火コレクション

1月中旬、大会主催のNPO法人大曲花火倶楽部から申し込み用紙をダウンロード、メッセージを書き込んだ申し込み書を送ります。


開催日の一週間前に、プログラムとチケットが届きました。


2017年3月18日、花火大会が開催される秋田県大仙市の大曲駅に到着。4月24日から行われる第16回国際花火シンポジウムまでのカウントダウン「あと37日」が表示されています。


プライベート花火を申し込んだ人は、送迎バスが用意されています。集合場所のグランドパレス川端までは駅から1km程の距離なので、歩いて向かいました。


午後4時20分、迎えのバスがやってきました。ここから会場まで、直接送迎して貰えます。


会場は大曲ファミリースキー場です。


20分ほどで会場に到着しました。


バスを降りてすぐ、目の前にある受付でチケットを渡します。


引き換えで貰った参加証を付けて席に向かうと……


一番乗りということで、席は選び放題でした。この日は、雨が降ったり止んだりで天気は不安定。まだ雨が降る気配もあったので、とりあえず、テントの中の席を確保。


ストーブもたくさん置いてあり、テントの中は暖かいです。


ドリンクが飲み放題で用意されています。しかもアルコール類も飲み放題でした。


この花火大会では、花火鑑賞士 の投票による特別賞も用意されているので、こちらの受付も済ませます。


投票用紙を受け取りました。1番良かった花火を選んで投票してくださいとのこと。


手続きが終わったので、会場を見て回ります。こちらは、最前列付近、ゲレンデ中央には花火を打ち上げる筒が並んでいます。


花火が大きくなるほど、客席との距離を空けないといけない保安距離という決まりがあります。一番奥に見えるのが、この日の花火で一番大きな7号玉(直径約21cm)を上げる筒です。


17時になりました。「パパン、パン」と「雷」と呼ばれる花火が打ち上げられます。


この競技花火では「花火師がお立ち台に上がって作品の説明を行ってから花火を打ち上げる」という珍しい形式で行われます。お立ち台は、高さ5mくらいで一般席と有料席の間に建てられていました。


プライベート花火を申し込んだ人には、食事のサービスも付いています。カレー旨麺を1杯無料で食べることができます。


ラーメンにカレーをかけたもので、麩がトッピングされているのが特徴。スープをしっかりと吸った麩は、もちもちとした食感で食べ応えがあります。


「玉コン」の引換券も付いていたので、交換します。


こんにゃく玉の三兄弟でした。


花火大会開始までは、まだ時間があるので、プログラムを読んで待つことに。


プライベート花火は、前半と後半の2回に分かれて行われるとのこと、いつ自分の花火が打ち上がるかは知らされていません。


プログラムには、花火師の紹介や打ち上がる花火についての説明が書かれているので明るいうちに予習しておきます。


全国各地から総勢24名の花火師が参加。


18時20分、すっかり辺りは暗くなり、いよいよ花火大会の開始です。


オープニングのスターマインから。


花火を打ち上げる筒が客席よりも高い位置にあるので、普段は最前列でしか見られない打ち上げる瞬間の筒の様子が、どこからでも見ることができます。


「トラ」と呼ばれる筒から吹き上がるタイプの花火。噴き出ている様子を迫力満点で見ることができました。


色を出す火薬の部分を「星」と言います。こちらは星を不規則に散らすタイプの花火。


オープニングが終わるといよいよ新作花火コレクションの競技大会が始まります。競技は、直径約15cmの5号玉を5発、直径約12cmの4号玉を10発使い「新作の花火であること、テーマに合わせた表現ができているか」などを競います。まずは、審査の基準となる「標準審査玉」が上げられました。「柳を照らすおぼろ月」というテーマで上げられたこの花火は、ただ柳が垂れてくるのではなく、月明かりに照らされている様子を表現するために、最後に柳が明るく光るなど工夫が凝らされていました。


花火師の名前の紹介と7号玉の花火が打ち上がります。こちらは採点とは関係ありませんが、各花火師が1発だけ用意してきたものということで、内容が濃く丁寧に作られているなというのが伝わってくるような花火が上がっていました。「昇天銀龍万華鏡写輪丸」久米川和行(株式会社和火屋)


「春風の唄」高城渉(高城煙火店)


7号玉の打ち上げが終わると、いよいよ競技開始。花火師自らが作品の説明を行った後、作品が打ち上げられるという形式で行われます。


競技花火で打ち上げられた作品は、記事の最後にまとめて紹介します。


前半8組の打ち上げが終わりました。続いて、プライベート花火が打ち上げられます。最初にメッセージを読まれたのは、この春社会人になる息子に父親から送られたお祝いのメッセージでした。1番目に読まれたということで、慌ててスマートフォンで録画中の息子さん。話を聞くと「直前までプライベート花火が申し込まれていることが知らされておらず、サプライズプレゼントでびっくりしています。一生の思い出になります。」と喜んでいました。


メッセージが読み上げられた後、花火が打ち上がります。花火の玉名は「昇尾花付紅芯錦冠先緑点滅」です。


続いて2組目のプライベート花火です。ここで読まれたのが、事前に自身が申し込んだメッセージ。早々と2番目に打ち上げの順番がやってきました。「2016年念願の花火鑑賞士に認定された記念の花火です。会場に居る皆さまが末永く良き花火人生を送られます事を願って」というメッセージが読まれた後、「ターコイズブルーに輝く花」という玉名の花火が打ち上がりました。


他にも、個人宛の感謝のメッセージや追悼の花火、花火ファンからのメッセージなど、プライベート花火が次々と打ち上げられます。「新たなステージへの飛翔」


プライベート花火の後は、秋田新幹線こまち号開通20周年を記念してのスターマインが打ち上げられました。


中盤8組の作品が打ち上げられた後、プライベート花火が打ち上げられます。「昇小花付八重芯キラ先緑白点滅」


大曲の花火協同組合では、産学連携事業として足利工業大学と「色の研究」を、秋田県立大学と「炭の研究」を行っているとのこと。この研究成果として「色の研究と炭の研究」という題名のスターマインが打ち上げられました。


競技大会も終盤、残る8組の作品が打ち上げられた後、締めのスターマインが打ち上げられます。


最後の最後で風向きが向かい風になってしまいました。煙で花火が隠れてしまったり、カメラのレンズに灰がかぶってしまったりと、まさに見ている側も燃え尽きる状態で花火大会を終えることに。


今回、打ち上げたプライベート花火の料金は、2万円(税込)でした。会場までの送迎・有料観覧席・食事と飲み放題が2名分付き、会場でメッセージが読まれ、7号玉が一発上がる内容での価格なので、普段花火大会に行く際にかかる費用にプラス数千円で自分だけの花火が上げられ大変お得です。そして、実際に打ち上げられた花火玉の写真と打ち上げたという証明書が記念にもらえます。今回は、響屋大曲煙火株式会社の齋藤健太郎氏が作成した花火とのこと。


花火大会翌日、帰路の途中に、響屋大曲煙火株式会社に寄ってみました。


ちょうど外出中とのことで、撮影許可をもらい記念撮影をして帰ることに。


◆以下、新作花火コレクションで打ち上げられた作品です。

「彩りのひまわり」久米川和行(株式会社和火屋)


「動きまわリング」齊木啓介(株式会社マルゴー)


「魅惑のクレマチス」髙城渉(髙城煙火店)


「螺旋の花」大内田大地(塚本花火工業)


「紅白」村瀬功(株式会社村瀬煙火)


銅賞 「五色霜林『菊型花火による動的光散乱の考察』」瀬沼輝明(有限会社小千谷煙火興業)


「ピロカ・ノンノ~美しき花~」齋藤洋平(株式会社海洋化研)


銀賞 「美への道筋」小幡知明(有限会社菊屋小幡花火店)


特別賞 「真砂の花」青木義祥(株式会社紅屋青木煙火店)


「ビードロ」加藤克典(加藤煙火株式会社)


「市松模様 夜空にひらく」小勝康平(株式会社丸玉屋小勝煙火店)


銅賞 「翠・水 瑛華」伊藤航也(株式会社小松煙火工業)


「虹色が織りなすグラデーション」飯田茂雄(株式会社齊木煙火本店)


「天空の孔雀」今野貴文(株式会社北日本花火興業)


「柳にイルミネーション」河口智光(株式会社ファイアート神奈川)


「花火でだるま落とし!?」木塚勝也(西日本花火有限会社)


銅賞「REVOLVER ~光の回転式牡丹~」齋藤健太郎(響屋大曲煙火株式会社)


「幻想花」山村知之(信州煙火工業株式会社)


金賞「朧朧と褐色に枝垂れる」氣賀澤文平(有限会社伊那火工堀内煙火店)


「天を泳ぐ」神戸龍馬(株式会社神戸煙火工場)


花火鑑賞士特別賞「桃太郎さん、ずんだ餅くれねぇが~!!」佐藤佳恵(株式会社芳賀火工)


「藍燦燦」岸洋介(有限会社岸火工品製造所)


「而今菊花」酒井崇嗣(有限会社菅野煙火店)


「越後のアサガオ」本田和憲(有限会社片貝煙火工業)


この花火大会の打ち上げ発数は1000発とパンフレットに書かれています。「1万何千発というような花火大会に比べると内容が薄いのでは」と思いがちですが、競技大会では1発の花火に数十発分の価値がある花火を見る事ができます。スターマインで上げられる花火も色の変化や演出のバリエーションなどが豊富で、とても1000発だけとは思えない充実した内容の花火大会でした。このように、どのような内容の花火大会か、参加している花火会社の特徴などを調べると穴場的な見応えのある花火大会が見つかるかもしれません。そして、誰かに伝えたい事がある時や、何かサプライズを考えなくてはいけないという場合に、花火大会でメッセージを送るというのも候補に入れてみてはいかがでしょうか。

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in 取材, Posted by darkhorse_logmk

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