インタビュー

「明るい花火を作る明るい会社」花火の街・大曲にある花火会社「響屋大曲煙火」を訪ねてきました


全国花火競技大会大曲の花火春の章などの花火イベントが開催される花火の街・秋田県大仙市には、いくつもの花火業者が存在します。前回の北日本花火興行株式会社に引き続き、今回は響屋大曲煙火株式会社を訪ね、花火師へのインタビューや工場見学などをしてきました。

◆響屋大曲煙火株式会社
http://www.hibikiya.co.jp/
Facebook: https://www.facebook.com/hibikiya/
Twitter: @hibikiyahanabi

響屋大曲煙火は、信号雷や鑑賞用花火の製造・花火大会での打ち上げやイベントの特殊効果演出などを手掛ける花火会社。全国花火競技大会を始め日本各地の競技会で作品が入賞しています。現在の代表取締役社長は、6代目にあたる齋藤健太郎氏です。

2017年3月の新作花火コレクションで尋ねた際には休業日だったということで、今回改めての訪問。写真は、2017年3月に訪れた際に撮影したもの。


左は代表取締役社長・齋藤健太郎氏、右の取締役・新山良洋氏は、齋藤氏のお兄さんです。


◆響屋大曲煙火株式会社について

GIGAZINE(以下、G):
会社の歴史などを教えて頂けますでしょうか?

響屋大曲煙火株式会社 代表取締役社長 齋藤健太郎(以下、齋藤):
私の高祖父が明治27年に農業と兼業で花火を作ったのが始まりです。私は信号雷を専門につくる会社「響屋」を立ち上げ独立したのですが、兄が5代目として継いでいた「大曲花火化学工業」と2017年に合併をして「響屋大曲煙火株式会社」という会社になりました。

G:
信号雷というのは、花火大会の前や運動会の始まる前などで打ち上がる「バン・バン・バン」と鳴るあの花火のことですね。

齋藤:
信号雷は、火薬の威力が強く取り扱いが難しいので、どの花火会社も敬遠しがちだったのです。それなら、私が安全で質の高い信号雷を作ってみようと「響屋」を立ち上げました。

G:
2017年の会社合併に至った経緯を教えて頂けますか?

齋藤:
1年、2年とやっているうちに、信号雷だけだと「どこでどうお客さんに喜んでもらえてるか」という花火師としてのやりがいを感じる機会が少なかったのと、鑑賞用の花火も作れることを知っている取引先から「雷だけではなくて、こういうのを作ってくれ」だとかそういう話が結構来て、3年目くらいから少し鑑賞用の花火も作りはじめたんです。そこから口コミで広がり、注文が次々とやってくるようになって、工場が大きくなっていきました。その頃、実家のほう(大曲花火化学工業)の工場が古くなっていたので、兄のほうもほぼこちらで花火を作るようになっていました。

G:
会社は分かれていても一緒に花火を作っていたのですね。

響屋大曲煙火株式会社 取締役 新山良洋(以下、新山):
はい、もともと一緒にやっていたもので、大曲の競技会では担当も決めていました。

齋藤:
大曲の競技会では、昼花火を父が担当し、割物花火は兄、創造花火は私と分担して作っていたのです。ゆくゆくは合併をしようとは決めていて兄も父も承諾していたのですが、合併をいつするかまでは決まっていませんでした。しかし、2016年の2月に父が亡くなって、それから兄と2人で話合い2017年に合併して「響屋大曲煙火」となりました。


◆言いやすいような環境やチームワークを重視
G:
最近、花火師の募集をされたという情報を耳にしたのですが、花火師というと身内からとか花火職人と何らかのつながりがなければなれない職業というイメージがあります。

齋藤:
これから作業場を拡大する計画があるので、「新しい作業場ができる前に1人か2人増やしておこう」ということで募集して1名決まっています。特につながりや経験は関係ありません。弊社では、長年の花火経験者というのは、ほぼ、いないです。

G:
技術も1から教えなければいけないですよね?

齋藤:
そうですね、「逆にそっちのほうがいろいろな面白い花火ができる」と思っているので、あえて「花火はこうじゃなきゃダメだ」というベテランは雇っていません。

新山:
会社によって花火の作り方も違うというのもあって、よその作り方で作られても困るなと。

齋藤:
しかも、新しい人が来た時に言いやすいような環境を作るところに私は力を入れているので、私から「あーだこーだ」というのではなくて、皆が発言しやすい環境作りをしています。


G:
会議とかはされるのですか?

齋藤:
毎朝、朝礼をやっていて、月2回は必ずミーティングをしています。いろんなことを自由に意見を言ってもらっています。「作業していて、これが欲しい」とか。

G:
実際に意見やアイデアが実現したりとか?

齋藤:
毎年10月から暮れにかけて、「自分が来シーズン上げたい花火」というのを各々プレゼンしてもらって。「1位になった人は来年その花火が上がる」とかあります。

新山:
社長賞で金一封もあって(笑)

G:
社員の人たちからアイデアを募集して、新しい玉や演出などにも挑戦されているのですね。花火に関して、会社の方針というのはありますか。

齋藤:
誰もしようとしないこととかを、やりたいと思っています。信号雷も誰も作らないからやったんですよ。例えば、多重芯の窓込め(花火玉の天窓から火薬を詰める手法、半分ずつ詰めて合わせる手法よりも開いた花火のバランスが良くなるが、手間がかかる)とか、千輪の窓込めとか、綺麗だけども手間のかかる花火は制作した会社が自分たちで打ち上げる際に使うだけで、普通は流通はしないんですよ。それを弊社ではやっていこうと思っています。

写真は、半分ずつ花火玉を詰めたものを合わせて1つの花火玉を作るパックリ法の作業の様子。


齋藤:
多重芯や手間の掛かる花火などは作るとしても社長や工場長など会社を代表する人でしか作らせないという会社も多いです。しかし、弊社は本当に入って1年目や2年目でも多重芯を作ってもらってます。うちの強みはそこだと思います。器用な人は早いですからね。技術には向き不向きというのがあって、何年やったからそれができるではなくて、何年やっても多重芯込めれない人もいますし、でも、その人は別の工程をやってもらうと、他には絶対負けないものを持ってたりしますので。

G:
実際に新しい作品を作る手順などはどうやっているのですか?

齋藤:
皆で話し合って、YouTubeとか見たりしながら「どうやったらそれ以上のものができるか」とか、まったくゼロから他に誰もやったことのないようなアイデアが出てきて、「あ、それ面白いな」と思ったら挑戦したりと。色については、薬品を混ぜるだけなのでいいのですが、「実際にその星が作れるかどうか」から始まって、次に、玉に星を込める人たちが「その配列で星を置くことが可能なのか」を考えて、玉貼りの人に出来上がった玉をバランスよく仕上げてもらうと。チームでこの商品はできるのかを相談してやっています。そういうチームワークが大事なので重点的に考えています。

「◆楽しいです!」
ここで、まだ入社して間もない社員の金山晃仁氏を呼んで頂きました。

G:
よろしくお願いします。入社されてどれくらいになるのですか。

響屋大曲煙火株式会社 金山晃仁(以下、金山):
はい、2018年5月で半年くらいになります。

G:
この会社を選んだ理由というのはありますか?

金山:
大曲の地というのと、社長の方針を聞いてやっていけるかなと。

齋藤:
面接の時「好きな花火屋さんいる?」って聞いたら「マルゴーさん」だって、気遣わねぇんだと思って(笑)

金山:
花火の仕事はしたかったんですけど、ただやってればいいのとは違うなというのを感じまして。

G:
実際入ってみてどうでした?

金山:
楽しいです!」、この業界では、なかなか下の人間には情報を教えてくれないのですが、この会社では全部ではありませんがいろいろと教えてもらえます。そういう自分たちがやりやすいような、頑張りやすいような環境があるところがめちゃ楽しくて働きがいがあります。


齋藤:
最初、面接しに来た時に「こんな花火が作ってみたいんですけれども」って絵コンテ持ってきたんですよ。それを見て1時間くらいダメ出しして「これだったらこういうのがいい」とか2人で「あーだ、こーだ」と……「何で面接しにきた人と二人でこんな熱くなっているんだろう」って感じで、それで採用!(笑)

G:
今はどの部門で働いているのですか?

金山:
玉貼りをやっています。まだまだ入って半年の修行の段階なので。

新山:
そのうち、いろいろな部署にいってもらって一番合う部署を見つけてもらうことになると思います。

G:
ありがとうございました。

◆工場見学
当日、MC・作詞家・秋田美人プロジェクトリーダー・大いなる秋田東京公演2018実行副委員長・他で活動中で、花火鑑賞士でもある涼森有羽子さんが工場を見学に来られていたので、同行することにしました。

まず最初に、取材の2日前に行われた「大曲の花火 春の章」で使われた花火の筒がどうなっているのか見せてもらいました。持ち帰ってまだ何もしていないものの、意外ときれいな状態でした。打ち上げ後の筒は、毎回洗って乾かします。一緒に写っている涼森さんが着ているのは、響屋大曲煙火株式会社の法被です。


まず最初に見学したのは、花火玉に貼るクラフト紙に「のり」をつける作業場から。毎日、使う分だけ用意します。


のりはお米を粉状にしたものを煮て作る自家製の米のりです。米はもちろん「あきたこまち」。


火薬の配合を行っている作業場。


いろいろな薬品を混ぜ合わせることで、花火の色や明るさなどが変わります。どの薬品をいくらの割合で配合するかは企業秘密です。


続いて、花火の星を作る作業場へ、各工程ごとに作業場が分かれています。


花火の星は、火薬を水で溶いたものを回転する釜の中へ流し込み、塗っては乾かしを繰り返して育てていきます。


実際に星掛け作業を行っている様子は以下の動画で確認できます。

花火の星を作る「星掛け」の作業風景【花火作り】 - YouTube


左側の星程度の大きさにするためには、約10日間程度かかるとのこと。右側の白い粒が、星の「芯」となるもので大きさは約1mm、素材はセラミックです。


ただ火薬を繰り返し塗ればいいというわけではなく、一定の大きさにそろえて作る必要があるため、小さいものはふるいに掛けて選別。


ある程度の大きさになると、升に星が何個並ぶかというのを基準にします。長辺は1尺2寸(約36cm)、短辺は6寸(18cm)です。


乾燥室にはさまざまな星が保管してありました。ラベルには、どのような変化をする星かが省略されて書かれています。ここで齋藤氏から「1番右上『3』は3号玉用の星という意味ですが、『ギベかすみ』は何の略でしょう」とクイズ。


答えは「銀引先紅かすみ草」。銀色で発火し、赤色に変化した後に、シュワシュワっと音を立てて細かい火花がぱっと出る演出の星ということになります。


乾燥室には、2尺玉(直径約60cm)も置いてありました。右上の導火線が長い玉は、火をつけてから水面に投げ込む水上花火用の玉です。


玉込めの作業場へ、花火の星を半円の玉皮に並べて詰める「玉込め」の作業中。


玉皮だけだと強度が足りないので、クラフト紙を何重にも重ね貼りして強度を高めていきます。貼る枚数や貼り方も玉の大きさや中身によってそれぞれ違います。


打ち上げに使う筒を保管している倉庫。こちらはほんの一部です。


こちらは扇状に花火を打つことができるものですが、作業の効率化や演出のバリエーションが増やすことができる工夫を盛り込んだ響屋大曲煙火オリジナルの機材で、テスト中のものとのこと。


敷地内には、新しい作業場ができる予定の土地も用意されていました。


事務所に戻ってきました。花火会社には「安全や良い花火が上がりますように」とご加護をお願いするため、必ずと言っていいほど「神棚」があります。


大黒様は普段は正面を向いていますが、「大曲で花火を打ち上げる際は、会場の方向に向けている」とのこと。2日前に打ち上げたばかりなので、まだ打ち上げ会場のある雄物川の方向を向いています。


◆大曲の花火 春の章から
2018年5月12日に行われた大曲の花火春の章から、響屋大曲煙火株式会社が関わった花火の一部を紹介。

「ヒカリのネバーランド」明るい中間色の星が、印象的なプログラムでした。


「昇曲付 四重芯変化菊」


「光のプースカフェスタイル」、カクテルのプース・カフェの様に、色が何層にも分かれて見えるような花火をイメージしているものですが、今回は横倒しに。デザインの向きが決まっている花火が成功するかどうかは運次第、「今回は層が見える方向で出ただけでも成功」とのこと。「そろそろ、この花火用の星の在庫が切れそう」という事で、次こそは本物のカクテルと同様に見える大成功の花火が見られますように。


フィナーレ「東方見聞録『黄金の国ジパング』を目指して」は、大曲の花火会社が共同で「日本の花火をどのようなカタチで表現すれば最高なものになるか、テーマに沿った演出を心掛け最高を目指し相当な時間を費やした」とのこと。


フィナーレ花火の実際の様子は、以下の動画で確認できます。

【4K】大曲の花火 春の章2018 「フィナーレ花火」Omagari Fireworks Spring Chapter - YouTube


◆日本中の人が花火鑑賞士になって欲しい
最後に、毎年10月に地元の大仙市大曲で試験が行われる花火鑑賞士についての質問と、2018年5月30日に行われる京都芸術花火2018について聞いてみました。

G:
2017年10月の花火鑑賞士試験の講師として教壇に立たれていました。花火作りとは違う分野の仕事になりますが、講師は大変ではないですか?

齋藤:
いえいえ、どんどん花火が好きな人が増えて「日本中の人が花火鑑賞士になって欲しい」と思っています。


G:
花火鑑賞士の皆さんに対して何か伝えたいことなどはありますか?

齋藤:
お客さんをはじめ、鑑賞士の皆さんにはとても感謝しております。コアに花火の話などをしている人たちがいるからこそ、私たちはやりがいがあるのかなと思って仕事をしてます。情報を発信してくれているおかげで、人が来てくれたりとかもあると思いますので、私は花火鑑賞士さんの皆さまを大事にしないといけないと思っています。

G:
響屋大曲煙火の花火をこう見て欲しいというのはありますか?

齋藤:
私たちは、こうだと決めつけて花火を打ち上げないように心掛けています。やはり花火を見ている人たちの気持ちや場所によって花火の見え方って全然違うと思うんですよ。ずるいって言われるかもしれませんが、抽象的なタイトルを付けて、見ている方々が「うちの花火をどう受け止めてもらっても結構ですよ」というスタンスで上げています。ですので、一般のお客さんも花火鑑賞士の方もどのように見てもらっても結構なのかなかと。

G:
2018年5月30日に京都競馬場で行われる「京都芸術花火2018」に参加する花火会社の中に響屋大曲煙火株式会社の名前があったのですが、プログラムのどこで上がるかなどはわかりますか?

齋藤:
演出を担当されるPyrosmithの大矢亮氏から、この音楽に合うようなデザインの花火を作ってくれというオーダーは来ますが、いつどこで使われるかなどはわかりません。

G:
打ち上げのプログラムも全て大矢氏が決めているのですね。実際に見てレポートする予定なので、楽しみにしています。本日はありがとうございました。

社長室には、齋藤氏が独立し信号雷の会社「響屋」を設立した当時から飼われている亀の「雷(ライ)くん」がいます。


花火作りは火薬を扱うことから厳しさも必要ですが、新しい花火を作るためには「意見の言いやすい環境作り」が必要で、社長含め社員同士の信頼関係が大事だということが、訪ねてみてわかりました。従業員の真剣な顔と笑顔の両方が至るところで見られる明るい花火会社でした。

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in 取材,   インタビュー, Posted by darkhorse_logmk