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メジャーリーグ11シーズン・400万球分の投球データを分析して審判がどれだけ正しくジャッジできているのかを分析した結果

by Chris Chow

メジャーリーグベースボール(MLB)の公式が公開している統計データベース「Baseball Savant」を用いて、2008~2018年までの11シーズン分で投げられた約400万球を分析し、審判による誤審について分析した研究論文が公開されました。これによると、過去11シーズンのピッチングに対する誤審率は12.78%ですが、2ストライク時に限れば誤審率は20%を超えるそうです。

MLB Umpires Missed 34,294 Pitch Calls in 2018. Time for Robo-umps? | BU Today | Boston University
https://www.bu.edu/today/2019/mlb-umpires-strike-zone-accuracy/


An analysis of nearly 4 million pitches shows just how many mistakes umpires make
https://phys.org/news/2019-04-analysis-million-pitches-umpires.html

11シーズン・400万球もの投球データを分析したのは、ボストン大学のマーク・トーマス・ウィリアムズ氏と、Boston University Questrom School of Businessでデータマイニングを専攻する大学院生による研究チームです。分析では400万球分の投球データから、どの投球がストライクと判定され、どの投球がボールと判定されたかを分析し、審判の判定の正確さを審判の年齢や経験を考慮に入れてランク付けしています。

by Jose Francisco Morales

メジャーリーグには30チームが所属しており、それぞれのチームのホームスタジアムにはピッチャーの手から投げられたボールがホームベースを通過する様子を追跡する「Statcast(スタットキャスト)」というシステムが設置されています。スタットキャストはステレオカメラやレーダーを使って選手の動きやボールの動きを高速・高精度に分析するために使用され、投球については「リリースポイント」「球速」「体感速度」「回転数」をデータとして表示してくれます。スタットキャストは1度のピッチングの中で50回もボールの位置を追跡可能で、1インチ(約2.54cm)の誤差しかないという正確さを誇っています。

スタットキャストが出力するデータは主に野球ファンが選手のパフォーマンスを評価するために使用されますが、審判の判定が正確かどうかを評価するには適したデータ形式とはいえません。そこで、ウィリアムズ氏が率いる研究チームが審判の判定の正誤にフォーカスしてデータを分析したというわけです。

分析に使用された11シーズン・400万球分の投球データは、スタットキャストおよびPITCHF/xにより収集されたデータがベースとなっています。データはソート・フォーマットされたのち、標準的なストライクゾーンマップに重ね合わせることで、審判の誤審率をランク付けしました。

by Keith Johnston

分析の結果、審判の誤審率が非常に高いことが明らかになっています。2018年シーズンには、なんと3万4246球で誤った判定が下されており、これは1試合平均で14球、1イニング当たり1.6球が誤審であるということとなります。加えて、2018年シーズンに行われた試合のうち、55試合が誤審によりゲームセットを迎えているそうです。

過去11シーズン分の「Total Calls(総球数)」「Bad Calls(誤審)」「BCR(誤審率)」をまとめたもの。誤審率は年々低下しており、調査期間内の全体平均ではMLBの誤審率は12.78%となります。


特に誤審が起こりやすいのが、2ストライクのタイミングで、この時はすべての審判で誤審率が上昇。11シーズン分の2ストライク時の誤審率をまとめたのが以下のグラフで、左からシーズン、「3ストライクとなった球数(Called Strike Three)」、「ストライクが間違ってボールと判定された球数(Ball Called Strike)」、「誤審率(Incorrect Call %)」を示しています。2ストライク時の誤審率は年々低下しているものの、11シーズン分の平均誤審率は29%です。なお、これはノーストライクもしくは1ストライク時の誤審率の約2倍です。


シーズン後とのストライクゾーン別の誤審率は以下の通り。年々ストライクゾーン低めの誤審率が低下しており、2008年シーズンにはストライクゾーン高めよりも明らかに誤審率が高く40%以上あったものが、2018年シーズンには10%台にまで低下しています。


過去11シーズン分の誤審率をイニング別にまとめたのが以下の図。1、2回および9回に誤審率が高くなりがちなようです。


また、最も誤審率が高いのは「若く経験の浅い審判」ではなく、年配のベテラン審判であることも明らかになっています。MLBの審判の平均年齢は46歳で、MLBの審判としての経験年数は平均13年です。しかし、分析した11シーズン分のデータの中で最も誤審率が低かったのは、MLBの審判としては3年未満しか経験していない33歳の新米審判でした。このデータから、「プロ野球選手と同じように、審判にも年齢的なピークが存在するようだ」とサイエンス関連メディアのPhys.orgは記しています。

以下の図は過去11シーズンの中で最も誤審率(BCR)が低かった審判トップ10をまとめたもの。低誤審率トップ10にランクインした審判は全員20~30代で、MLBの審判の平均年齢が46歳であることを考えると、明らかに「若く経験の浅い審判」の誤審率が低いことがわかります。


逆に、過去11シーズンの中で最も誤審率が高かった審判トップ10をまとめたのが以下の図。すべての審判が50歳以上となっており、MLBの審判の平均年齢以上となっています。


経験が浅い審判の場合は判定数が少なすぎるということで、2018年シーズンの判定にのみ焦点を当てた場合、誤審率が低い審判トップ10は以下の通りになります。10人の平均年齢は37.8歳、誤審率は7.78%です。


対して、2018年シーズンの誤審率が高い審判トップ10は以下の通りになります。10人の平均年齢は56.6歳、誤審率は10.88%です。


さらに、Phys.orgは「このようなデータがあるにもかかわらず、MLBは悪名高い審判を引退させ、より優秀な若い審判を雇うことに抵抗しています。審判の高齢化に伴い、リーグはフレッシュな新人審判がインパクトを残すことが難しくなっています」としています。

by Eduardo Balderas

スタットキャストのような高度な分析システムがスタジアムに導入されているにもかかわらず、MLBはピッチャーの投げたボールの判定にこれらのシステムを用いることに抵抗し続けています。審判は野球の神様ベーブ・ルースがプレイした1世紀前と同じように、審判による目視でストライクやボールの判定を下し続けています。

Phys.orgは「野球の審判がロボットに置き換えられるようにと提案しているわけではありません。野球は審判をロボットに置き換えることができると仮定するにはあまりにも多くの複雑さがあります。しかし、MLBは審判がより良い仕事ができるように既存の技術を使用し、人間とソフトウェアのコラボレーションを強化するユニークな機会を持っています」と記し、審判の判定をより正確にするために、機械のシステムを応用することを提案しています。


また、テクノロジーを導入すれば、誤審率を下げ、偏った判定を減らすことにも役立ちます。審判ごとのストライクゾーンの主観を最小限に抑え、打者や投手がバッティングやピッチングに集中し、特定の審判のストライクゾーンの癖を覚えることに集中する必要もなくなります。また、テクノロジーの導入で審判とチームの間の対立を減らすことにつながり、ファンおよび選手が野球をより楽しめるようになることは明らかです。

誤審ではたびたび同じ審判の名前が挙がるので、ぜひこういったシステムを導入し、誤審率の高い審判には球審から外れてもらったり、あるいは再講習を行ったりという仕組みが欲しいものです。

球審橋本の激狭ストライクゾーン(2013) - YouTube


阪神タイガース平田勝男二軍監督が白井一行球審に猛抗議 - YouTube

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in メモ, Posted by logu_ii

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