生誕30周年を迎える世界で1億台以上売れた伝説の名機「ゲームボーイ」の歴史
by Ken Yamaguchi
2019年4月21日は、任天堂の携帯ゲーム機「ゲームボーイ」が発売されてちょうど30年にあたります。ゲームボーイは累計で1億1800万台以上売れるほどの大ヒットを記録し、ビデオゲーム史にその名を輝かせる伝説の名機。そんなゲームボーイが歩んできた歴史を、さまざまなメディアが振り返っています。
The Game Boy turns 30 - The Verge
https://www.theverge.com/2019/4/17/18311479/nintendo-game-boy-30th-anniversary-switch-gaming
What Developers Really Think About The Nintendo Game Boy - Feature - Nintendo Life
http://www.nintendolife.com/news/2019/04/feature_what_developers_really_think_about_the_nintendo_game_boy
Nothing Will Ever Compare to the Game Boy, the Best Handheld Console of All Time
https://www.esquire.com/lifestyle/a27168934/game-boy-30-year-anniversary/
ゲーム&ウォッチに続く任天堂の携帯ゲーム機第2弾であるゲームボーイは1989年4月21日に日本で発売されました。発売当時の希望小売価格は1万2500円。ゲームボーイの開発を率いたのは、任天堂開発第一部部長だった横井軍平氏です。本体ROMに直接ゲームプログラムが書き込まれたゲーム&ウォッチと異なり、別売りのROMカセットを差し換えることでゲームボーイ1台あればどんなゲームでも遊べるという点が大きな魅力でした。
by Bryan Ochalla
ゲームボーイの画面は160×144ドット解像度のSTN反射式モノクロ液晶で、電源には単3形乾電池を4本必要とし、アルカリ乾電池であれば丸一日遊ぶことが可能でした。また、据置機のファミリーコンピュータと異なり、ゲームボーイはイヤホンを使えばステレオで音源を再生することができました。海外メディアのEsquireは「強化されたグラフィック、細部にわたって完璧なクエスト、豪華なサウンドトラックは確かに興奮すべきものです。しかし、ゲームを始めた時に任天堂のロゴと共に鳴り響くトーンに匹敵するものはありません」と述べ、30年が経過してもゲームボーイは色あせないとコメントしています。
そんなゲームボーイ本体の起動画面は以下のムービーで見ることができます。
Original Gameboy Startup Sound - YouTube
カラーバリエーションはグレーの1色のみでしたが、1994年に6色をそろえたゲームボーイブロスが登場しました。初代ゲームボーイと同時に発売されたローンチタイトルは「スーパーマリオランド」「アレイウェイ」「役満」「ベースボール」の4本。特に「スーパーマリオランド」は全世界で1800万本以上も売り上げたとのこと。また、2カ月遅れて登場した「テトリス」はさらにその倍近い3500万本以上の売上を記録し、世界で最も売れたゲームボーイ専用ソフトとして知られています。
初代ゲームボーイのサイズはおよそ145mm×88mm×31mmで、乾電池を入れて重量およそ300gと、小さな子どもには少し持ちづらく感じるほどでした。イギリスのゲーム開発会社Rareの開発者であるPaul Machacek氏は「ゲーム&ウォッチに比べるとゲームボーイは大きくてポケットには入れづらいものがありましたが、ROMカセットを交換して『テトリス』やその他のソフトを遊べるのは素晴らしかったです」と述べています。
by ptra
ゲームボーイは当時の最先端の携帯ゲーム機でしたが、ゲームハード業界全体が携帯ゲーム機の開発を行っていたようで、例えばゲームボーイが発売された翌年の1990年には、当時ゲームハードメーカーとして任天堂としのぎを削っていたセガは「ゲームギア」を1万9800円で発売しました。同時表示色32色のカラー液晶と蛍光管のバックライトを備えたゲームギアは、セガの据置ゲーム機であるセガ・マークIIIに近いスペックを持ち、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」などをローンチタイトルにひっさげ、TVチューナーを使えばいつでもどこでもテレビが見られるという鳴り物入りで登場したものの、単3形アルカリ乾電池6本で3~4時間しか遊べないという点では実用的とはいえなかったとThe Vergeは述べています。
by James Case
任天堂の(PDFファイル)データによると、ゲームボーイはシリーズ累計で1億1800万台、ソフトは累計5億本を売り上げていて、日本ではおよそ3200万台が売れたとのこと。ゲームギアの他にも、Atari CorpのAtari Lynxや日本電気ホームエレクトロニクスのPCエンジンGTなど、同時期に競合他社から携帯型ゲーム機が発売されましたが、いずれもゲームボーイの牙城を崩すことはできませんでした。モノクロ液晶でバックライトなしのゲームボーイですが、他の携帯型ゲーム機に比べてとにかく頑丈で長持ちするという点で圧倒的な優位性をみせたというわけです。
ゲームボーイはその後一度勢いが衰えてしまうものの、1996年に発売された「ポケットモンスター 赤・緑」が大ヒットしたことをきっかけに再び息を吹き返します。同年にはゲームボーイの液晶を向上し、小型軽量化を行ったゲームボーイポケットも、6800円という初代のほぼ半額で発売されます。さらに1998年にはゲームボーイポケットにバックライト機能を追加したゲームボーイライトが発売。このゲームボーイライトが任天堂最後のモノクロゲーム機となりました。
by MKFI
ゲームボーイの歴史を語る上で外せないのが周辺機器です。任天堂が公式に発売した純正の周辺機器は、ステレオヘッドホンや他プレイヤーと対戦するための通信ケーブル、充電式アダプタ、バッテリーケースなど。また、1990年にはサードパーティ製周辺機器として、ビック東海から「ライトボーイ」が発売されました。これは拡大鏡と豆電球がセットになった周辺機器で、ゲームボーイの小さな液晶画面を暗い中でも見やすくするためのもの。バックライトがないゲームボーイを夜中に遊ぶための必需品として、同様の周辺機器がさまざまなメーカーから発売されました。
ライトボーイ pic.twitter.com/S6FSX0P5wV
— ぷらす@ドカバト (@pad_plus) 2014年6月1日
1994年には、スーパーファミコンでゲームボーイが遊べるスーパーゲームボーイが登場。ゲームボーイのソフトをテレビ画面で遊べる上に、画面に落書きができるといった遊び心あふれる機能も搭載されていました。また、1998年にはゲームボーイに挿すことでデジタルカメラとして利用可能なポケットカメラや、その写真を印刷できるポケットプリンタが登場。今もなお一部から根強い人気がある周辺機器です。他にも携帯電話を接続するものや魚群探知機、カードリーダー、MP3プレイヤーなど、ゲームボーイシリーズでは変わった周辺機器が多く発表されました。
当時アメリカで放映されたポケットカメラとポケットプリンタのCMは以下から見ることができます。
Game Boy Camera - YouTube
ゲームボーイの登場から9年が経った1998年には、初のカラー液晶を備えたゲームボーイカラーが登場。価格は6800円ながら3万2768色中最大56色表示可能と、モノクロ4階調が限界だったゲームボーイから大きく進化。ROMカセットもゲームボーイとほぼ同じ形状で上位互換があったのも大きなポイントでした。また、赤外線通信機能が搭載されていて、歩数計型ゲームのポケットピカチュウから「ポケットモンスター 金・銀・クリスタル」へデータを送るなどといったことも可能となり、携帯ゲーム機の幅が広がったといえます。
2001年にゲームボーイの完全後継機であるゲームボーイアドバンスが発売されるまで、ゲームボーイシリーズは携帯ゲーム機の先頭を走り続けました。その間に世界で発売されたソフトタイトル数はなんとのべ3000本以上。ゲームボーイ本体は以下のムービーのように、音楽制作用の機材として使われることもあり、発売から30年経つ今もなお世界中から愛されています。
Focused (Live) - 8-BrickDMG - YouTube
The Vergeは「ゲームボーイは任天堂の全てを象徴しています。プレイ体験を向上させる場合は新しい技術を応用しますが、任天堂が最先端技術を追求することはめったにありません。ゲームボーイをヒットさせた考え方が、今日でのNintendo Switchの成功につながっています」と主張しています。
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