サイエンス

世界で初めて3Dプリンターと人間の細胞を使って心臓を作ることに成功


イスラエルのテルアビブ大学の研究チームが、患者自身の細胞と生体材料を用いて心臓を3Dプリンターで出力することに成功しました。これまでにも心臓を3D印刷する試みは行われてきましたが、細胞や血管など人間の細胞組織を利用して「印刷」したものは世界で初めてだとのことです。

Tel Aviv University Scientists Print First 3D Heart Using Patient’s Own Cells
https://www.breakingisraelnews.com/126504/first-3d-heart-using-patients-cells/


Tel Aviv University scientists print first 3D heart using patient's biological materials | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-04/afot-tau041519.php


イスラエルの公式YouTubeチャンネルが公開した以下のムービーでは、実際に心臓を3Dプリントする様子を見ることができます。

Israeli scientists unveil world's first 3D-printed heart - YouTube


これが世界で初めて人間の細胞組織と3Dプリンターで作られた人工心臓です。


試験段階ということで、サイズはまだウサギの心臓程度の大きさ。人工心臓の入ったキューブケースを手にしているテルアビブ大学のTal Dvir教授は「より大きな人間の心臓も同じ技術で作ることが可能です」と述べています。


Dvir教授が作成した心臓は、患者固有の細胞や生体材料から作られています。心疾患への効果的な治療法の1つに心臓移植がありますが、心臓は生きている人から提供できないため、心臓移植は必然的にドナー不足の問題を抱えています。また、仮に移植を受けられたとしても、免疫によって拒絶反応が生じるため、患者は長期にわたって大きな負担を強いられることになります。


しかし、患者自身の細胞や生体材料を用いて3Dプリンターで出力することで、患者に移植しても拒絶反応が起きるリスクは劇的に下がります。また、ドナーの登場を待つ必要がないので、すみやかに心臓移植処置を行えることが期待されます。


Dvir教授によると、患者から採取した脂肪組織からコラーゲン・糖タンパク質などの生体材料や細胞を分離し、細胞が幹細胞になるように再プログラミングしている間に、生体材料を印刷用のインクとして機能するようにヒドロゲル状に加工するとのこと。細胞はヒドロゲルと混合したあとに心臓の細胞や内皮細胞に分化させ、患者の免疫システムに適合するような心臓を血管と共に「印刷」するそうです。


「3Dプリンターで印刷した心臓をもっと発展させる必要があります。現時点で作成した心臓は収縮することができますが、全身に血液を送り出すポンプの役割をきちんと果たすようにする必要があります。私たちが成功した人工心臓の作成法の有効性と有用性を証明したいと考えています。おそらく10年以内に世界中の病院に生体組織を印刷できる3Dプリンターが設置され、こうした治療法が日常的に行われるようになるでしょう」とDvir教授は語りました。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

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