3Dプリンターを使って人間の耳を軟骨組織から再建することに成功


先天的に耳の形成が不完全で通常よりも小さな状態で生まれる小耳症では、耳の穴がふさがって聴力が低くなることがしばしば起こります。しかし治療には高度な技術を要し、場合によっては死に至る可能性もあるため、完全な治療法はまだ見つかっていないという状態でした。そんな中、中国の科学者らが小耳症である6歳~9歳の子ども5人に、3Dプリンターを利用して作成した「バイオ耳」を移植するという研究を行いました。

In Vitro Regeneration of Patient-specific Ear-shaped Cartilage and Its First Clinical Application for Auricular Reconstruction - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352396418300161

Scientists grow new ears for children with defect - CNN
https://edition.cnn.com/2018/01/29/health/growing-ears-on-humans-study/index.html

Grown inside 3D-printed molds: new ears for children - The Verge
https://www.theverge.com/2018/1/31/16954712/growing-ear-3-d-printing-regenerative-medicine-microtia

研究者らが行った方法は、まず子どもたちの小耳症ではない方の耳の形をスキャンし3Dモデルを作成。そして、この3Dモデルを反対側の耳に適合する形で反転させて「型」を作ります。次に小耳症の耳から軟骨の組織を採取し、生物分解性のある「型」で3カ月間この細胞を育てます。すると、「型」を含めた形で健康な形の耳が誕生するとのこと。


研究者らは、5人の患者を術後2年半にわたって追跡調査し、患者の耳を「再生」できたことを確認しました。しかし、最終的にこの技術が実用化できるかどうかを確認するためには、最大5年間は軟骨の性質や臨床結果を追跡調査する必要があると示しました。

コーネル大学でバイオメディカル・エンジニアリングについて研究するLawrence Bonassar教授は「小耳症の耳を再構築するための軟骨を形成することは、この20年間、組織エンジニアリングのコミュニティが掲げるゴールでした」「この研究は組織エンジニアリングが耳の再建に近づいたこと、そして他の軟骨組織についても近いうちに臨床に移るであろうことを示しています」と今回の研究について語っています。

人間の耳の軟骨組織から形成した耳をマウスに移植した研究は1997年の時点で既に発表されており、研究のコンセプト自体は新しいものではありません。ただし、5人の患者に対して処置を行い、その後2年半という長期にわたって追跡調査を行った研究はこれが初めてです。


一方で、今回の研究では患者に複数回の手術を施しており、また内容も複雑であるため、現実の医療で行うと医療費が高額になると考えられます。このような移植手術を現実で広範に行っていくには依然として大きな課題が残されているとBonassar教授は語りました。

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