金属3Dプリンターがステルス戦闘機のメンテナンス事情を劇的に改善している
ロッキード・マーティンが生んだ第5世代のステルスジェット戦闘機「F-22 ラプター」はアメリカ空軍の主力戦闘機の1つです。しかし、2011年には生産を終了してしまったため、整備で交換する部品の調達が難しくなっています。そのため、アメリカ空軍は「戦闘機の部品を金属3Dプリンターで出力して調達する」という計画を試験的に導入しています。
3D printed metal parts show strength through testing | Aerospace Testing International
https://www.aerospacetestinginternational.com/features/3d-printed-metal-parts-show-strength-through-testing.html
アメリカ軍は、海兵隊が3Dプリンターと生コンクリートで24時間で兵舎を建設する技術を開発するなど、最新技術を積極的に軍の最前線に応用する姿勢を見せています。
3Dプリンターによりコンクリート製の建物を24時間で建設する技術をアメリカ海兵隊が開発 - GIGAZINE
そして、金属3Dプリンターで出力した部品の使用が、第5世代ジェット戦闘機の整備では当たり前になりつつあるそうです。2018年12月、ユタ州にあるヒル空軍基地の第574航空機整備隊によって、F-22に金属3Dプリンターで成形された部品が取り付けられました。第574航空機整備隊のロバート・レウィン局長によると、機体サイズが小さいF-22は従来機と比べて部品点数が少なく、生産終了後は部品の入手難易度が年々上がっているとのこと。
工場に生産を依頼する場合、まとまった数しか生産できないため、最小注文数が必要となり、コストが上がってしまいます。一方で、ヒル空軍基地に設置された金属3Dプリンターはチタン粉末の積層からレーザーを使って部品を成形します。金属3Dプリンターを使えば、新しい部品ができあがって現場に届くまでかかるのはわずか3日間。3Dプリンターによって、整備にかかる費用だけではなく、整備時間も大幅に短縮されるというわけです。
以下の画像は実際にヒル空軍基地で交換されたコックピットの内装部分。上がアルミニウム製で、下が3Dプリントで出力したチタン製です。アルミニウム製の部品は腐食を起こすため、このキックパネル内装部の部品はよく交換されるパーツの1つとのこと。ヒル空軍基地ではF-22のパーツのうち少なくとも5種類が3Dプリンターで出力されているそうです。
この一連の3Dプリンターを用いた整備は、アメリカ空軍が官民パートナーシップを通じて金属3Dプリント技術を導入するための試験的運用とのこと。ロッキード・マーティンのモディフィケーションマネージャーであるRobert Blind氏は「より複雑な部品が3Dプリンターで出力ができるようになれば、戦闘機の整備にかかる時間が60~70日ほど短縮される可能性があります」とコメントしています。
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