過小評価されがちな「火山津波」の恐怖
by milquetoast
火山の噴火の恐ろしさは日本でもときおり話題になりますが、その具体的なイメージといえば噴石の飛来や火砕流、流れ出す溶岩、巻き上がる火山灰といったものがほとんどです。そんな火山災害の中で、あまり語られないにもかかわらず噴火被害で亡くなった人の4分の1の原因となっている「火山津波」の脅威について、Scientific Americanが解説しています。
The Underappreciated Threat of Volcanic Tsunamis - Scientific American Blog Network
https://blogs.scientificamerican.com/rosetta-stones/the-underappreciated-threat-of-volcanic-tsunamis/
2018年12月にインドネシアで発生した津波は、400人以上の死者を出したと報じられました。この津波は地震や海流によるものではなく、火山活動によって海底で起きた地滑りが原因だと考えられました。
海底火山が噴火した場合には水中で大きな爆発が起きるためその衝撃波が海の波と合わさって津波を形成するほか、火砕流などが海に流入することにより水が追い出される形で波になることもあります。このような噴火や地震といった原因は兆候として分かりやすいのですが、「火山津波は火山によって引き起こされる大量の水の動きが原因となるもので、噴火が原因とは限りません」と、兆候が分かりづらい火山津波の恐ろしさについてScientific Americanのライターのダナ・ハンター氏が解説しています。
「溶岩のベンチ」と呼ばれるエリアは噴火などの兆候なしに突然崩れることがあり、噴火の時と同じように海の水を押し出し局所的な波を発生させます。火山活動によって形成される盆地上の地形「カルデラ」も同様に唐突な崩壊を起こすことがあり、大量の水を押し出すといわれています
特に「山体崩壊」と呼ばれる弱い地質の山体が地震や噴火を引き金に崩れてしまう現象では、土砂の流入により排斥される水が多量になるほか、噴火により形成された側火山などは地質がかなり弱く崩れやすくなっているため、小規模の爆発もなしに火山津波が起こってしまうとのこと。
火山津波が起きた回数は19世紀と20世紀を合わせても100回弱と、火山の噴火が1年に60~80回起こっていると考えるとまれな現象で、火山活動のごく一部でしかありません。しかし1回あたりの死者数がかなり多く、1700年台以来の火山に直接関係した死者数の20~25%を引き起こしているそうです。
これほどの大きな影響があり、また地球上の特定の場所に限定されているわけではなく太平洋や大西洋中央部の沿岸地域の多くに危険性があると考えられるにもかかわらず、ハザードマップや避難経路が火山津波を考慮していることがあまりにも少ないとハンター氏は警鐘を鳴らしています。
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