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「自然災害で何人亡くなると報道されやすくなるのか」をデータ分析してわかったこととは?

by Liza Shoning-Young

大規模な自然災害が発生すると、各報道機関は発生した災害の悲惨さをニュースにして報じます。そんなニュースにおける自然災害の取り扱いは「決して公平なものではない」という研究データが、さまざまな研究データを掲載するOur World in Dataに発表されています。

Not all deaths are equal: How many deaths make a natural disaster newsworthy? - Our World in Data
https://ourworldindata.org/how-many-deaths-make-a-natural-disaster-newsworthy

「自然災害で何人亡くなると報道されやすくなるのか?」という疑問は、2007年に研究者のトーマス・アイゼンシー氏とデビッド・シュトロムバーグ氏の2人によって(PDFファイル)調査が行われたもの。2人はアメリカ主要報道機関(ABCニュースCBSNBCCNN)の自然災害に対する報道の影響を調査するため、1968年から2002年までの間に主要報道機関が取り扱った5000件の災害および70万ものニュースを分析しました。その結果、災害の種類や発生した地域が報道量に大きな影響を与えており、「多くの人が亡くなった」という事実のみで報道の多寡が左右されていないということが明らかになりました。

下の画像は、70万件の自然災害に関連するニュースの内訳がどのようになっていたのかを表しており、「地震」の報道が33%、「火山」の報道が30%、「火災」と「台風」の報道が14%、続いて「洪水」が9%となっていることがわかります。地震の33%に比べると、「飢餓」は3%、「伝染病」は2%とニュース全体に占める割合は非常に小さいものになっているとのこと。地震や火山の噴火、ハリケーンといったビジュアル的にも派手な災害は、紙面のトップに持ってくるインパクトがある災害であると考えられ、自然と報道量も増えるのだろうと考えられます。


一方で、アイゼンシー氏とシュトロムバーグ氏は「災害による死者数と、実際の報道量には違いがあるのか」という点にも着目しています。2人は人が亡くなった数と災害の種類を分類し、主要報道機関の報道量で比較した分析結果をグラフ化しました。

下の図では、火山の噴火により亡くなった人が1人いる場合の報道量は、約4万人が飢餓によって亡くなった場合の報道量と同じくらいだとのこということがわかります。同時に「寒波」や「干ばつ」、「伝染病」といった、ビジュアル的に映えない災害においては、相当な数の人が亡くならない限り、報道量が増えないということが明らかになっているとのこと。


火山の噴火や突発的な地震、台風といった災害はあっという間に広がって人々に被害を与えますが、飢餓や干ばつといった災害はゆっくりと進行していくため、大きく報道されれば被害を食い止めるために人の手が介入する可能性があります。しかし、飢餓や干ばつは突発的に大きな被害を与える災害ではなく、ゆっくりと進行していくという「インパクトに欠ける」性質から、メディアの注目を集めにくくなっている現状があるとのこと。

また、アイゼンシー氏とシュトロムバーグ氏は「災害が発生した地域による報道量の違い」にも研究のスポットを当てており、アメリカの主要報道機関は、北アメリカ大陸を除くとヨーロッパと中南米の災害に多くの報道量を割いていることがわかりました。ヨーロッパと中南米の災害は、災害に対する全報道量のうち18%ずつを占めており、アメリカでもそれなりに注目されていることがうかがえます。

ところが、アフリカや太平洋地域で発生した災害はそれぞれ4%と3%しか報道されておらず、同じ非アメリカ地域でも報道量には大きな違いがあることがわかりました。災害により亡くなった人の数に換算すると、「アフリカで発生した災害がヨーロッパで発生した災害に報道量で匹敵するには、ヨーロッパの災害で死亡した人数の45倍もの人数がアフリカで発生した災害により亡くなる必要がある」という計算結果になるそうです。


以上の結果は、アメリカとアフリカの距離といった地理的な要素に加え、アフリカで発生する災害は飢餓や干ばつといった「ビジュアル的なインパクトが欠けるもの」であることが関係しているとのこと。報道機関の災害報道には、「ニュースのインパクト」によるバイアスがかかっていることを念頭に置く必要がありそうです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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