Googleが翌日の風力発電量を機械学習で予測して効率的な電力供給を行うシステムを開発
by Johan Bos
Googleは「機械学習で洪水を予測するシステム」や「AI制御でデータセンターを冷却するシステム」などを開発しており、機械学習を使って世の中を改善しようと試みています。そんなGoogleは風力発電をはじめとする再生可能エネルギー分野にも進出しており、2016年に買収したAI開発企業のDeepMindと協力し、機械学習アルゴリズムを用いて翌日の風力発電量を予測して効率的な電力供給を可能にするシステムを開発したと発表しました。
Machine learning can boost the value of wind energy
https://www.blog.google/technology/ai/machine-learning-can-boost-value-wind-energy/
Google optimizing wind farms w/ DeepMind to predict output - 9to5Google
https://9to5google.com/2019/02/26/google-deepmind-wind-farms/
発電に際して温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーは、地球温暖化やそれに伴う気候の変化に対処するために重要な分野です。一方で再生可能エネルギーは太陽光や風力など、自然の力を用いて発電を行うという性質上、従来の発電システムを完全に代替するものとしては不十分だとみられることも少なくありません。
すでに風力発電はタービンの巨大化や低コスト化に伴い、数ある発電技術の中でも低コストの部類になっているとされており、採用数も大幅に増加しています。その一方で地球上で吹く風は常に一定というわけではなく、決まった時間に決まった電力を作り出せる化石燃料などを利用する発電システムと比較すると、有用ではないと考えられています。
Googleは再生可能エネルギーを促進するプロジェクトの中で複数の風力発電施設を建設しており、中でもアメリカ中部の風力発電施設は700メガワットもの発電が可能な設備を備えています。GoogleとDeepMindはこの発電施設に機械学習アルゴリズムを適用し、「実際に発電が行われる前に風力発電施設がどれほどの電力を生み出すのかを予測する」という実験を行いました。
by Bru-nO
機械学習アルゴリズムが用いたのは通常の天気予報と、過去の風力発電タービンが収集したデータです。これらのデータを用いることで、実際に発電が行われる36時間前に予測される風力発電量を出力するシステムが構成されたとのこと。
DeepMindの機械学習アルゴリズムが予測した発電量と、実際の発電量を比較したグラフがこれ。青い線がアルゴリズムによる予測発電量を示しており、灰色の線が実際の発電量を示しています。実際の発電量の方が上下に小刻みに振れているのがわかりますが、発電量が変化するおおよその結果は予測と一致しています。
この予測に基づいて、DeepMindのシステムは翌日の送電網に流す最適な電力量を1時間ごとにオススメしてくれるとのこと。設定された時間に設定された電力を送電網に送ることができるシステムは非常に重要であり、これまでのところGoogleの風力発電施設では従来よりも20%ほど風力発電の価値が増大したそうです。Googleはこれからも機械学習アルゴリズムを洗練させていくとしており、「風による発電量の変動を排除することはできませんが、機械学習アルゴリズムによって風力発電を予測可能で価値のあるものにすることができます」と述べました。
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