Googleの危機対策チームはAIで洪水を予測するシステムを開発している

長雨や豪雨によって水があふれる洪水は、毎年のように世界中で大きな被害を出しています。洪水をはじめとする災害の発生を事前に予測することができれば多くの被害を減らすことができると考えたGoogleは、AIを用いて洪水を予測するシステムの実用化を進めているとのことで、Googleの危機対策チームが行う取り組みについてまとめられたムービーがYouTubeで公開されています。

When Rivers Rise: How AI is helping predict floods

「野原があったころは、友達みんなで遊びに行っていました」と語る少年の声。

「昔はとても楽しかったです」

「でも、全て洪水で流されてしまいました」

この100年で洪水は地球上で最も一般的な災害となっており、被害も甚大なものとなっています。

洪水被害を受けた男性は、「川が氾濫したとき、何の警報もなかった」と当時のことを悔しそうに振り返りました。

もっと早くから洪水が来ることがわかっていれば、何か対策ができたのではないかと男性は考えています。

一部の国では洪水などの災害を予測する警報システムが確立されていますが、多くの国々では効果的な災害警報システムがありません。

特に頻繁に洪水が発生するインドの洪水死者数は、全世界の洪水死者数のうち20％を占めているとのこと。

川が氾濫すれば人々はボートに乗っての避難を余儀なくされ……

あらゆるものが流されてしまいます。

手を合わせて祈るおばあさん。

川が氾濫して猛威を振るう時、人々を助けるための取り組みをGoogleは行っています。

「災害時に最も重要なのが、信頼できる情報です」と語るのは、Googleの洪水予測チームの技術責任者であるSella Nevo氏。多くの政府や国連、NGOが進めてきた取り組みをGoogleが後押ししたいと語ります。

洪水予測の試験プログラムは、洪水被害の激しいインドで行うことにしました。インドでは政府が国中の川の水位を測定しています。数千人もの測定員が1時間おきに目盛りのついた長い棒を用いて水位を測定しており……

このデータをもとに川の氾濫や洪水の予測を行っているそうです。

しかし、この方法ではどの地域やどの村に被害が及ぶのか、正確な洪水予測まではできません。

洪水被害を受けた男性は、「村から洪水が発生するという警報が届いたのが当日の朝で、洪水が起きるほんの2、3時間前でした」と語ります。「もっと早くわかっていればよかったのに」と、男性は当時のことを振り返りました。

インドのウッタル・プラデーシュ州で災害管理局に勤めるAditi Umrao氏は、「災害管理においては対応時間の短縮が極めて重要です」と語ります。テクノロジーを活用できれば、もっと早く災害の情報を共有できるはずだとUmrao氏は話します。

「洪水予測は実験的なプロジェクトであり、予測を行うのに十分な精度のデータを集めることが重要でした」と語るのは、Google危機対策チームのYossi Matias氏。

重要な情報は「どこで」「何が」起きているのか、そして「どう対処すべきか」というものだとMarias氏は考えています。

Googleの洪水予測チームは、インド政府と協力してリアルタイムで洪水の危険性を予測できるようにしました。まずは大量の衛星写真を集めて……

地形のデジタルモデルを作成。

このモデルを使って川の動きを何十万回もシミュレーションしたとのこと。

シミュレーションに政府が取り組む水位測定の情報を重ね合わせて……

AIが洪水を予測します。

洪水の警報はAndroidの通知やGoogle検索、マップなどで配信可能。

洪水予測システムについて説明するNevo氏は、アラートの精度は90％以上です」と自信をのぞかせます。

さらにGoogleのチームは洪水を経験した人々に話を聞き、どんな情報が役に立つかを把握しました。

Matias氏は「これは地球規模で協力するチャンスです。テクノロジーで世界をよりよく変えることができるんです」と語ります。

Nevo氏は洪水が起きる数日前にアラートが出せる状態が目標だとしており、AIを活用して世界中で必要な警報が出せるようにしたいと話しました。

Google危機対策チームはAIを利用した早期警報システムの研究を進め、他の自然災害にも応用したいと考えています。