オープンソースのCPU命令セット「RISC-V」は普及の一歩手前まで来ている
CPUの命令セットをオープンソースとして開発するプロジェクトの「RISC-V(リスクファイブ)」が普及する一歩手前まで来ているとEE Timesが指摘しています。従来のプロセッサ設計の在り方をがらりと変える可能性を秘めたRISC-Vの現状はこんな感じです。
RISC-V on the Verge of Broad Adoption | EE Times
https://www.eetimes.com/document.asp?doc_id=1334311#
CPUの命令セットアーキテクチャ(ISA)をオープンソースで開発する「RISC-V」には、多くの企業が参加しています。従来型のISAがライセンスによって縛られていたのに対して、RISC-Vはライセンス不要で利用でき開発そのものに参加できるという特長があり、多くのユーザーに支えられたエコシステムから得られるメリットは大きいため、大企業や小規模開発者を問わずRISC-Vへの期待は高まっています。
RISC-Vは「ムーアの法則」以来の技術イノベーションになるとの予想 - GIGAZINE
一般的に新しいプロセッサアーキテクチャを市場に投入する場合、「長い時間通用し、安定したプロセッサ製品」であることが求められています。そして、プロセッサに関連した開発ツール、ソフトウェアライブラリ、OS、エミュレータ、デバッガなどが付随して市場投入されることが製品の普及には不可欠です。そして、RISC-Vはこれらの様々なサポートが揃いつつあり普及の一歩手前まで到達しているとEE Timesは指摘しています。
前述の通り、プロセッサには長い期間市場で通用する安定性が求められていますが、それがかなうようにRISC-Vは当初から幅広いアプリケーションに適応しカスタマイズできるように設計されてきました。また、RISC-Vは記事作成時点で一般に普及しているプロセッサ向けに開発されたソフトウェアが、将来開発されるプロセッサ上でも動作するような後方互換性もそなえています。コアの仕様は今後数カ月かけて200人を超えるメンバーからなるRISC-V Foundationによる最終承認に向けて策定作業が進められています。
なお、オープンソースのメリットを持つRISC-Vですが、ライセンスフリーなのはISAのみです。そのため開発者はRISC-Vアーキテクチャに対応するハードウェア設計に関する知的財産権を保持して商品化のために占有することが可能です。すでにSiFive、NXP、Kendryte、GreenWaves Technologiesなどが市販のRISC-Vチップを開発しており、Western DigitalやNVIDIAのようなIT大手はISAを独自に設計することを辞め、社内で利用する専用プロセッサ開発にRISC-Vを採用し始めています。また、Adacoreなど商用ソフトウェアの開発を進める企業もあるとのこと。
RISC-Vの開発は中国やインドなどを中心に世界中に広まっています。例えばインドではスタートアップのInCoreがRISC-VプロセッサとAIアクセラレータの開発に取り込んでいます。なお、インドではRISC-Vを国家ISAとして認定することで、IntelやARMのISAに依存しない体制作りが進められているそうです。
EE Timesによると、RISC-Vはこれまでのプロセッサ設計の業界慣行を大きく変える大胆な「実験」プロジェクトであり、普及が進むか失敗に終わるかを予測するのは記事作成時点では困難だとのこと。RISC-Vが成功するにせよ失敗するにせよ、プロセッサ設計に与える影響度は大きく注目に値することは間違いなさそうです。
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