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半導体技術を無料のオープンソース化する「FOSSi」に対抗すべくArmは技術財産を一部制約つきで開放


一般的には高い使用料を払う必要がある半導体技術をオープンソースにし、誰でも自由に無料で使えるようにすることを目的とした非営利財団The Free and Open Source Silicon Foundation(FOSSi)に対する関心が高まっています。既存の半導体メーカーにとっては脅威となるこの動きに対し、半導体設計大手のArmは保有する特許技術財産の一部を制約つきで開放しました。

Arm Offers Free-as-in-Beer Cortex IP to Combat FOSSi Threat - AB Open
https://abopen.com/news/arm-offers-free-as-in-beer-cortex-ip-to-combat-fossi-threat/

FOSSiの取り組みにはWestern DigitalやNVIDIAといった著名メーカーが高い関心を示しており、ライセンス料の発生するプロプライエタリなコアから、「RISC-V ISA」をベースにしてライセンス料が発生せず改変も完全に自由なFOSSiのコアへと移行を進めている状況です。半導体各社にとってはとても看過できないこの流れはArmももちろん把握しているのですが、当初示された対抗策は「反RISC-Vに焦点を絞り込んだアンチマーケティングを行う」というものでした。しかしこの動きは半導体コミュニティはおろか自社内のエンジニアからも批判が集まったことから、実行に移されることはありませんでした。


そんなArmが次に打ち立てたのが、「DesignStart FPGA」プログラムと呼ばれるもの。埋め込み系向けに設計された「Cortex-Mコア」をロイヤリティフリー・ライセンスフリーで提供することで、デベロッパー勢をArmが形作ったエコシステム内にとどまらせようとする取り組みでしたが、その姿勢はFOSSiが示しているものとは正反対といえるとのこと。

DesignStart FPGA – Arm
https://www.arm.com/resources/designstart/designstart-fpga


一口に「フリー」といっても、そこには英語で「Free as in speech」および「Free as in beer」と表現される2つのスタイルが存在しています。Free as in speechは開放された中身を法的な束縛なく利用することができ、解析や改良、組み込みなどが完全に自由であるのに対し、Free as in beerは入手に対する対価がゼロ、つまり無料で利用することはできるものの、独自に解析したり改良したり、自分のシステムに組み込んだりすることは一定の束縛を受けます。


Armが「DesignStart FPGA」プログラムでとったのは、後者の「Free as in beer」でした。DesignStartプログラムでは、デベロッパーはFPGA用にカスタマイズされたCortex-M0コアの変形版「Arm Cortex-M1」と、「Arm Cortex-M3」コアを無償でダウンロードすることが可能。しかし、利用者はリバースエンジニアリングやプロダクト開発目的以外の利用を禁じたライセンス合意文書にサインする必要があります。さらにその制約の中には、「比較を目的としたベンチマーク測定はNG」という項目までもが含まれていることから、ArmはFOSSiに対して性能が劣るコアを開放したのではないかという臆測も飛び交っているとのことです。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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