メモ

地域密着型のオンライン掲示板が災害時に活躍し大きな成長を遂げたのはなぜか?


オンライン上のコミュニティといえばTwitterやFacebookなどのSNSや、5ちゃんねるにredditなどの掲示板が連想され、「現実世界では会うことがない遠い場所に住んでいる人ともつながることができる」点がメリットだと考えられがちです。しかし、中には「地域に根ざしたオンラインフォーラム」も存在しており、オンラインコミュニティのおかげで災害時に近隣住民との連携がスムーズにいったなどの恩恵が報告されています。

How a Vermont social network became a model for online communities - The Verge
https://www.theverge.com/2019/1/24/18129437/front-porch-forum-vermont-social-network-listserv-local-online-community

2011年8月29日、アメリカ北東部に位置するバーモント州を巨大ハリケーンのアイリーンが襲いました。ハリケーンがバーモント州を直撃するのは1938年以来の出来事であり、州内にあるほぼ全ての河川が氾濫し、4人が死亡して700億ドル(約7兆8000億円)もの被害が出たとされています。

ライターのAndrew Liptakさんは、自身の故郷であるバーモント州ワシントン郡のモアタウンという町も、アイリーンによる被害を受けたと述べています。モアタウンには信号もなく、雑貨屋はガソリンスタンドと併設されており、小さな図書館と一つの小学校だけがある小さな町です。モアタウンではアイリーンがもたらした洪水によって郵便局や消防署、小学校、役場などの施設に加え、60以上の人家が浸水するなどの被害が発生したとのこと。

モアタウンは緊急時のリソースが豊富な町ではありませんでしたが、ハリケーンの際には近隣住民が助け合って困っている住民に手を差し伸べたとLiptak氏は述べています。そして、この小さなコミュニティが災害時に活用したのが、「Front Porch Forum」というオンラインフォーラムだったそうです。家をなくした人のために食事を作ったり、片付けを手伝ったりといった助け合いの連絡でFront Porch Forumのコミュニティが利用された他、役場がフォーラムの使用を開始して公式の最新情報を投稿するといった動きもありました。


Front Porch Forumは2000年にバーモント州のバーリントンという都市で誕生した地域密着型の掲示板であり、モアタウンに導入されたのはアイリーンが襲来するわずか数カ月前でした。ユーザーは自分の本名と住所を使って登録し、自分が住んでいる町や近所のフォーラムにアクセスすることが可能。バーモント州の各町や一部の州外の町を個別に網羅しており、フォーラムはそれぞれの町で分けられている他、バーリントン市のように大きな都市では、さらに小さな区画にフォーラムを分けているとのこと。

Front Porch ForumはほとんどのSNSが備えている反応ボタンやフォローといった機能もなく、一見すると時代遅れの産物のようにも見えます。しかしTwitterやFacebookなどのSNSが発達しているにもかかわらず、Front Porch Forumはバーモント州を中心に16万人ものユーザーを持っており、この数はバーモント州人口のおよそ4分の1に当たるとのこと。ガレージセールの開催や集会のお知らせ、「ルンバが家の外に逃げ出した」といったトピックについて話し合うだけでなく、アイリーンの直撃によって、Front Porch Forumが災害時のコミュニティ連帯に大きな役割を果たすことがわかりました。

モアタウンの小学校で図書館の司書をしているMeg Allisonさんによれば、Front Porch Forumが導入されてから数カ月の間、人々は掲示板を利用して近隣住民との関係を強化していたとのこと。そしてアイリーンによって大きな被害が発生して以降、人々はさらに勢いを増してフォーラムを利用するようになり、一気にFront Porch Forumが洪水被害と復興の情報、アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁が発する情報を共有する最適の場になったと述べています。

町役場はその日のトピックをダイジェストにしてプリントアウトし、町役場に貼って情報共有を行いました。また、家で食事が作れなくなってしまった人のために食事を作る人が現れるなど、町の人々は困っている人を助けるためにフォーラムを活用し始めたとのこと。Allisonさんも自身の専門知識を生かし、被害に遭った人々のアルバムから写真を救い出し、保存するのを手伝ったそうです。


Front Porch Forumを作ったのは、バーリントンに住むMichael Wood-Lewisさん。Wood-Lewisさんがスタートアップを離職して新たなプロジェクトを探し出した1998年に、Wood-Lewisさんの一家はワシントンD.C.からバーリントンへ引っ越してきました。しかし、その直後に息子のBenjaminさんが脳性マヒを発症してしまい、大変苦労したとのこと。Wood-Lewisさんは地域社会における助け合いが重要であると認識し、地域密着型のコミュニティであるFront Porch Forumを設立することを決めました。

Wood-Lewisさんはメーリングリスト管理ソフトウェアのLISTSERVのフレームワークを用い、近隣住民同士で情報を交換するオンラインスペースを構築。チラシを使って近所の人々に参加を呼びかけたところ、数カ月で数百人を超える人々が参加したそうです。そもそも近所の人々がインターネット回線を引いているのかどうかすらわからない状態でプロジェクトを始めたWood-Lewisさんにとって、この成果は驚きだったとのこと。

2006年にWood-Lewisさんは務めていた環境NPOを離れ、Front Porch Forumをバーリントンを超えた範囲にまで拡大させる方法を模索し始めました。夫婦で節約してソフトウェアエンジニアを雇い、サイトを再設計して電子メールベースから掲示板としてのプラットフォームを整えたそうです。やがてWood-Lewisさんは地元企業へ「Front Porch Forumに広告を出しませんか」と営業電話をかけるようになり、これによって新たな従業員を雇い、増加するユーザーに対処できるようになったとしています。


Front Porch Forumのサイトではフォーラムに自分のメッセージを投稿でき、近隣住民は同じフォーラムにアクセスするか、自分のページのメールボックスを確認することでメッセージを確認できます。また、各フォーラムには市長や地方議会の議員、図書館員、治安判事といった公務員も参加しているとのこと。しかし、現実世界で自分の近所に住む人を選べないのと同様、他のSNSのようにユーザーをフォローしたりブロックしたりすることはできません。

2006年のサイトリニューアルから、地元を中心として次第にFront Porch Forumがカバーする範囲は広がっていきましたが、財政上の問題から需要に答えるだけの成長はできなかったとのこと。そこで、Wood-Lewisさんは拡大する都市に対してフォーラムの立ち上げ費用を求め、住民が寄付を募ったり商工会議所が費用を供出したりして資金を出すようになって、やがてバーモント州全域にサイトが拡張していったそうです。2011年にはバーモント州農村開発評議会からの後押しを受け、アメリカ政府からの助成金を受けることにも成功しています。


Front Porch Forumでのやり取りは深刻なものから気の抜けたものまで多岐にわたるそうで、Liptakさんは2019年の初めごろ、床から天井まで届く本棚を作る大工をフォーラム上で発見し、実際にオファーを出したとのこと。また、議会選挙の候補者について人々が話し合い、提案された炭素税についての立場や学校への支出についてもフォーラムで話し合われています。

これらのフォーラムで特徴的な点が、オンラインコミュニティにもかかわらず「現実の仮想的な代替物」として設計されていないことが挙げられます。Front Porch Forumはあくまでも現実の対面におけるやり取りを促進することを意図しており、Wood-Lewisさんは人々がFront Porch Forumでやり取りを行うことで、「コミュニティへ所属しているという意識」を与えると述べました。


人々はさまざまな方法でフォーラムを活用します。たとえば1998年に教師を退職したNancy Wolfeさんは、地元のBarreという町において犯罪と麻薬が広まり、人々が地元の誇りを失っていることを残念に思っていました。そこでWolfeさんはFront Porch Forumにフォーラムを作り、Barreの歴史について少しずつまとめて投稿を行っています。

また、Front Porch Forumは地域ごとの話題をパッケージにまとめたものを政治家や行政機関に販売しており、政治家がフォーラムを使って町の人々に自身の仕事を報告することもあります。市議会議員のKaren Paulさんは選挙キャンペーン中に人々の家を訪れた際にも、フォーラムでの書き込みが役に立ったと語りました。


Front Porch Forum内の書き込みは専門の訓練を受けたコミュニティモデレーターによってレビューが行われており、違法な内容や虐待、ポルノといったコンテンツを含む禁止条項に違反していないか、個人に対する攻撃的内容が含まれていないかといった点をチェックしています。そのため、フォーラムへの書き込みはリアルタイムではなく、かなりのタイムラグが発生します。

かといってFront Porch Forumは活発なディベートを妨害しているのではないとのこと。たとえば「近所の空き家が壊されたせいでネズミが大量発生して困っている」といったフォーラムでは、ネズミの駆除を巡って捕獲するべきなのか殺害するべきなのか、倫理的問題はないのかといった点で議論が交わされました。また、選挙が近づくにつれて政治的な主張をする書き込みも増えており、市民が活発にディベートを行っているそうです。

一方で過度に過激なやり取りが行われないのは、モデレーターが巡回して時には「本当にこの内容を投稿してしまっていいのか」と書き込みを行ったユーザーに確認したり、ユーザー自身の名前や住所を公開しているという点が大きく関わっています。トピックに関係のない第三者が議論に介入したり、誤った内容やデマを投稿したりすることが他のSNSに比べて少ないとのこと。それでも時には過激な発言を行うユーザーもいるそうで、過去にはユーザーをフォーラムから追い出したこともあるとWood-Lewisさんは述べています。


地域に根ざした活動を行って社会の利益に焦点を当てているとはいえ、Front Porch Forumは営利目的の企業です。成長が鈍いのは全ての株式をWood-Lewisさん夫妻が所持しているからで、2人がFront Porch Forumの成長を慎重にコントロールしているとのこと。あまりにも急速な拡大は自身の労働力を上回るため、今では長い間保留していたソフトウェア関連のメンテナンスや、モバイルアプリの構築に取りかかっているとしています。

LiptakさんがWood-Lewisさんに「もしもFacebookのような大手企業が買収を持ちかけてきたらどうしますか?」と尋ねると、「話しに耳を傾けるでしょうし、面白い会話ができるでしょう。でも、それが実現する可能性はないと思いますね」とWood-Lewisさんは答えました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
卒業してもやめなくていい永遠の「大人の部活動」がオンラインコミュニティ成立のためには必要 - GIGAZINE

ネオナチのオンラインコミュニティは独自のソーシャルメディアを利用して肥大化しつつある - GIGAZINE

「仲間」や「つながり」を示す「アイコン」が情報共有を促す、「写真」ではダメ - GIGAZINE

SNS上で他人と自分を比較してばかりいる人はうつ症状であることが非常に多いことが判明 - GIGAZINE

災害が発生すると自動的に家族や大切な人の居場所を共有してチャットもできる防災アプリ「ココダヨ」 - GIGAZINE

家族や大切な人とお互いの居場所を共有できるアプリ「Trusted Contacts」をGoogleがリリース - GIGAZINE

・関連コンテンツ

in メモ,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.