10人中9人がネイティブ広告にだまされるという調査結果、広告なのか本物の記事なのかの判別がより困難になっている
by Elijah O'Donnell
ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストといった大手のニュースメディアの多くがいまやスポンサードコンテンツ、いわゆる「ネイティブ広告」を掲載しています。Forbesはネイティブ広告の規模が2021年までに210億ドル(約2兆3000億円)に上ると見積もっており、広告収入全体の75%を担うまでになるとみています。現代のネイティブ広告がどれほど巧みなのか、どれほどの人がだまされるのかを調査した研究が公開されています。
Reducing Native Advertising Deception: Revisiting the Antecedents and Consequences of Persuasion Knowledge in Digital News Contexts: Mass Communication and Society: Vol 0, No 0
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/15205436.2018.1530792
Native Advertising in the Fake News Era | Research
https://www.bu.edu/research/articles/native-advertising-in-fake-news-era/
ネイティブ広告は数が増加するだけでなく、「読者をだます」ことに長けていっているとボストンのコミュニケーション大学に務めるMichelle Amazeen准教授は述べています。Amazeen氏が行った実験の被験者は、実際には広告を見ているにも関わらず、10人中9人が「記事を見ている」と考えていたとのこと。
この調査はAmazeen氏がジョージア大学のBartosz Wojdynski氏と共に、さまざまな年齢・学歴・結婚歴・政治的考え方を持つ738人に対してオンライン実験を行ったもの。
実験では被験者に実際のバンク・オブ・アメリカの広告を見てもらいました。この広告は「America’s Smartphone Obsession Extends to Online Banking(アメリカのスマートフォンに対する強迫観念はオンラインバンキングにまで及んでいる)」というタイトルの記事で、マーケティング会社のBrandpointがバンク・オブ・アメリカのために作成しました。アメリカの連邦取引委員会は広告主に対し、コンテンツが広告であることの開示を求めているため、記事にはそれが広告であることを示すラベルや記述があります。
by rawpixel
Amazeen氏によると、記事を読んでそれがバンク・オブ・アメリカの広告の1つであると認識した人は10人に1人以下だったとのこと。年齢が低く、教育を受けており、情報入手の手段としてニュースメディアを普段から使っている人ほど広告を見抜くことが可能で、年齢が高く、教育を受けておらず、娯楽目的でニュースメディアを使う人ほど広告を本物のニュース記事だと考える傾向にあったそうです。
また、記事が広告であると知っていれば被験者はコンテンツを受け入れやすくなりますが、コンテンツが広告であると分かりづらくされている場合、読み手の大部分はそれが広告だとわかった時にネガティブな反応を示すとAmazeen氏は述べています。「多くの人がこの手の広告をフェイクニュースと同じだと見なしています。メディアに対する信頼は史上最低です。それがネイティブ広告のみのよるものだとは考えていませんが、要因の1つではあると思います」とAmazeen氏。
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広告主は広告を出す際にそれが広告であると明示する必要がありますが、この方法は標準化されていません。一般的には「広告」といったラベルが貼られますが、ラベルのサイズやラベルを貼る場所はさまざまです。ネイティブ広告であることを明示する方法が標準化されていないため、読み手が「広告なのか」「本物の記事なのか」を見分けることがより難しくなっています。「連邦取引委員会は、広告は真実で正確な内容であるべきとしています」「しかし、広告主が何を伝えようとしているにしろ、好ましくない特定の情報は除外されます」とAmazeen氏は問題点を指摘しました。
優れた調査報道を行いながらも一方でネイティブ広告を掲載しているメディアも多く、これらのメディアについてAmazeen氏は「墓穴を掘っている」と表現しています。1つの例として、政治に特化したニュースメディアの「ポリティコ」が虚偽のニュースを蓄積したフェイクニュース・データベースを公開しておきながら、自らは多数のネイティブ広告をウェブサイトに混ぜ込んでいる点を指摘。政治コンサルティング会社であるCambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)の事業開発ディレクターだったBrittany Kaiser氏は、ポリティコによって作られたスポンサードコンテンツが「最も成功したもの」だと語っています。
「注意すべきなのは、ニュースと広告の境界線をぼやけさせることについてです。一歩下がって、自分が一体何を読んでいるのかをいま一度考える必要があります」とAmazeen氏は呼びかけました。
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