サイエンス

ホウ素が準平面構造を持つ次世代材料「ボロフェン」を大きく結晶化することに成功


ホウ素が平面に近い立体構造をとる「ボロフェン」は、炭素材料のグラフェンよりも高い強度を持ち、エレクトロニクスでも応用できる極めて有用な材料だと期待されています。そのボロフェンの立体構造をコントロールして大きな結晶を作り出すことにアメリカの研究者が成功しています。

Large-area single-crystal sheets of borophene on Cu(111) surfaces | Nature Nanotechnology
https://www.nature.com/articles/s41565-018-0317-6

Borophene Advances as 2-D Materials Platform | BNL Newsroom

Yale scientists make a borophene breakthrough | YaleNews
https://news.yale.edu/2018/12/03/yale-scientists-make-borophene-breakthrough

ホウ素原子同士が結合し、中央に正六角形の空孔(穴)を作ることで、平面的な立体構造をとることは理論上可能だと以前から考えられてきました。このホウ素の同素体は2014年に実際にその存在が確認され、2015年には合成に成功した研究者が現れました。このホウ素の平面的な立体構造体は、炭素原子が平面に広がって形成されるグラフェンにあやかって「Borophene(ボロフェン)」と呼ばれています。

by Materialscientist

グラフェンとおなじく原子1個分の厚みしかもたないシート状のボロフェンですが、ホウ素同士の結合は炭素同士の結合よりも強いことから、グラフェン以上に強靭な機械特性を持ちます。さらに、ボロフェンは金属的な性質を有するだけでなく構造変化によって超伝導性を持つことがあり、グラフェンと同様にバンドギャップが広いため、エレクトロニクス向けの材料としても大きな期待が寄せられています。ボロフェンを活用した複合材料によって期待されているものとして、大容量のエネルギーを貯蔵する太陽電池などの次世代バッテリー、極めて小さく極めて高速なトランジスタ、耐久性の高いろ過用フィルター、激薄のタッチスクリーンなどが挙げられています。

ボロフェン結晶の持つ潜在的な電子的柔軟性は科学者の注目を集めていますが、Yale Energy Sciences Instituteのイワン・ボゾビッチ氏らの研究チームが、銅の上にボロフェン結晶を100ミクロンまでの比較的大きなサイズに成長させることに成功しました。従来の研究で使われてきた銀よりも銅の方がボロフェンよりも強い相互作用を起こし、より大きな結晶を形成することに成功したとのこと。


ボロフェンが結晶化するリアルタイムの映像は以下のとおり。

Borophene Islands Growing In Real Time - YouTube


研究者らは、銅の上でボロフェンが結晶化するために方向性を持つことも確認しています。


温度や気質の条件を変えることで、ボロフェンが結晶化する配向を調整する様子は以下のムービーで確認できます。

B Cu111 Miscibility - YouTube


ボゾビッチ博士の研究チームは、温度や基質である銅の状態を変化させることでボロフェンの結晶を成長させることに成功しており、各結晶が成長してそれぞれ方向性を持った状態で合体させることで、1センチメートル角の銅基材全体にボロフェン結晶を作り出すことに成功したとのこと。


従来の銀と違って銅を使ったことで、より大きな結晶同士が合体したボロフェンシートを作り出すことに成功したボゾビッチ博士の研究チームは、今後はボロフェンシートを銅表面からデバイス向けの基板に転写するという次のステップに進みます。最終的には、室温での超伝導特性の実現など、特定の用途に適した状態のボロフェンを生成することが究極的な目標に掲げられています。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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