サイエンス

グラフェン2層間の角度をずらすことで超伝導性と絶縁性の両方を生み出すことに成功


炭素原子のみで構成され単相で平面に広がる「グラフェン」は、超伝導性を持たせられる素材として期待されるなど、さまざまな分野での応用が期待されています。MITとハーバード大学の研究者が、炭素1個分の厚みのグラフェンシートを重ねて、角度をわずかにずらすことで、超伝導体や絶縁体に変えられることを発見しました。

Unconventional superconductivity in magic-angle graphene superlattices | Nature
https://www.nature.com/articles/nature26160

Insulator or superconductor? Physicists find graphene is both | MIT News
http://news.mit.edu/2018/graphene-insulator-superconductor-0305

2004年に発見されたグラフェンは、ハニカム状に炭素原子が結合して平面的に広がる炭素材料で、鉄よりも数百倍の強度を持ちつつも驚くほど軽く、柔らかく、熱伝導性も高いうえに銅よりも導電性が高いという特性を持ちます。また、他の超伝導金属とグラフェンを接触させて超伝導体を作成できることも知られており、次世代半導体材料としても有望視されている素材の一つです。

MITのパブロ・ジャリロ・ヘレッロ准教授とハーバード大学のエシミオス・カジラス教授らの研究グループは、グラフェンシートを重ね併せて「superlattice(超格子)」と呼ばれる構造を持たせることで、「超伝導性」から「絶縁性」という、まったく正反対の電気特性を持たせることに成功したと科学誌Natureで発表しました。

シートの角度をわずかに変化させることで、全く異なる電気特性を得ることができることから、研究者たちは電気特性を変えられる特定の角度を「マジックアングル」と呼んでいるとのこと。以下の画像をクリックすると、シートの角度をずらす様子をアニメーションで確認できます。


研究グループは、グラファイトから単一のグラフェンを剥離し、粘着性のあるポリマーと窒化ホウ素の絶縁材料で覆われたスライドでグラフェン層をすくい上げることで、2枚のグラフェンからなる超格子を作成しました。それから、グラフェンシート同士を0度から3度までの範囲で回転させつつ、取り付けた電極によって伝導性を調べました。ジャリロ・ヘレッロ准教授によると、角度の制御は非常にシビアで、わずか0.2度の違いで特別な電気特性は消え失せてしまうとのこと。

まず、研究者たちはグラフェン超格子がマジックアングルにおいて「モット絶縁体」に類似した電子のバンド構造をとることを見つけました。その後、モット伝導体にわずかな酸素をドープすることで超伝導体に変化させるのと同じように、グラフェン超格子に電子を加えることで超伝導性を持たせられないかを調べたとのこと。研究者たちはマジックアングルのグラフェン超格子に小さなゲート電圧を加えつつ、ごく少量の電子を付加しました。その結果、電子はグラフェン内の他の電子とともに結びつくことで、それまで流せなかった場所に電子が流れるようになりました。電気抵抗を測定し続けると、エネルギーを消費することなく電流が流れる超伝導性を持つことがわかったそうです。

研究者たちによると、グラフェンという単一の材料によって絶縁体から超伝導体までの多様な電気特性に変化させられることは極めて重要だとのこと。グラフェン超格子を分析することで、高温超伝導体のメカニズムの解明に役立てられると期待されています。

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in サイエンス, Posted by logv_to