サイエンス

超高速コンピュータ誕生の可能性を秘めた原子1個分の極薄シリコン系材料「Silicene」

By Argonne National Laboratory

半導体材料として一般的なシリコンに取って代わる次世代半導体材料の研究が世界中で進められており、ダイヤモンド、グラフェンカーボンナノチューブなどの炭素系材料が有力視されています。しかし、シリコンに代わるものはシリコンとばかりに、シリコン原子が原子1個分の極薄状態に2次元構造をとる新素材「Silicene」も対抗馬として名乗りを上げています。

Silicene field-effect transistors operating at room temperature : Nature Nanotechnology : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nnano/journal/vaop/ncurrent/full/nnano.2014.325.html

One-Atom-Thin Silicon Transistors Hold Promise for Super-Fast Computing | News
http://www.utexas.edu/news/2015/02/03/silicon-silicene-transistors/

One-atom-thin silicene transistors may lead to dramatically faster computer chips
http://www.gizmag.com/silicene-thin-silicon-transistor/35919/

原子数個分の厚みしか持たない超極薄材料「二次元機能性材料」は、優れた物理特性を持つものが多く、炭素原子で構成されるグラフェンやリン原子で構成される黒リンナノシートなどが開発され、最先端のナノテクノロジーの1つとして注目されています。

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中でも2010年に発見されたシリコン原子が原子1個の厚みで結合した「Silicene」は、次世代半導体材料としてグラフェンに負けず劣らず期待されています。Siliceneはグラフェンと似た六角形のハニカム構造をとりながら結合するものの、結合する「腕」同士が屈曲した立体構造をとる点で平面構造のグラフェンとは異なっており、スピンホール効果、超伝導性、巨大な磁気抵抗などの優れた特性を持つと考えられています。しかし、Siliceneはグラフェンと異なり空気にさらされると不安定になることから、極めて扱いにくい素材としても知られており、予想される優れた特性を検証したり応用したりする実験がなかなか進展していませんでした。


そんな中、テキサス大学コックレル校のデジ・エイキンワンド教授の研究チームが、Siliceneを用いたトランジスタの作成に成功したという研究成果を科学誌Nature Nanotechnologyに発表しました。エイキンワンド博士は、生成したSiliceneを、銀薄膜と数ナノメートルという極薄のアルミナ薄膜でサンドイッチ状に挟み込むことで保護した後、シリコンウエハーの上に銀保護膜面を上にして接合し、最後に銀薄膜をゆっくりとはがすことで、Silicene-アルミナ接合体、すなわちSiliceneトランジスタの作成に成功したとのこと。


エイキンワンド博士は「今回の成果によって、Siliceneが新たな二次元機能性材料として名乗りを上げました。それだけでなく、Siliceneが持つシリコンとの物理的親和性を考えれば、次世代の半導体材料としてグラフェンやその他の二次元機能性材料に比べても優位性があり、現在の半導体工業のロードマップを大きく塗り替える可能性を示したものと言えます」と述べており、Siliceneを使った超高速コンピュータの実現に向けての重要な第一歩を踏み出したとしています。

数年前まではSiliceneは理論上の素材に過ぎなかったことを思えばエイキンワンド博士によるSiliceneトランジスタの作成は画期的なものであり、また、銀薄膜で保護した後にこれを取り除くという手法自体が、他の薄膜材料作成プロセスへ応用できるものとして注目されています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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