サイエンス

黒リンを極薄ナノシートに分離する技術が登場、次世代電子デバイス材料の期待が高まる


リンの同素体の中でも比較的安定な黒リンは、原子数個の厚みしかもたないナノシート形状にすることでさまざまなエレクトロニクス材料へ活用できる可能性が示されていましたが、ナノシートを簡単かつ大量に作るという点に難がありました。しかし、トリニティ・カレッジ(ダブリン大学)の研究グループが、黒リンナノシートを簡単に作る手法を開発したと発表しています。

Liquid exfoliation of solvent-stabilised black phosphorus: applications beyond electronics
http://arxiv.org/abs/1501.01881

Black Phosphorous: The Birth of a New Wonder Material | MIT Technology Review
http://www.technologyreview.com/view/534166/black-phosphorous-the-birth-of-a-new-wonder-material/

グラフェンを代表として、多様な電子デバイスへの活用が可能な原子数個レベルの厚みしかもたない材料、いわゆる「二次元機能性材料」は、現在の材料工学において最も注目されている分野の一つで、黒リンが持つバンドギャップを活かした次世代の電界効果トランジスタの開発が期待されていましたが、黒リンのナノシート「phosphorene」はスコッチテープ法によって少量ずつしか製造できないことが実用化への大きなネックとなっていました。


しかし、トリニティ・カレッジのダミアン・ハンロン博士らの研究グループは、黒リンの厚みを制御しつつ大量に生産できる手法を考案しました。ハンロン博士はN-シクロヘキシル-2-ピロリドンの溶媒に溶かした状態の黒リンに音波を浴びせることで黒リンをナノシート状に剥離させることに成功したとのこと。なお、ナノシート状に剥離された黒リンシートは、遠心分離器で取り分けられ、わずか数個の原子の厚みしかない高品質なナノシートを取り出せるとのこと。「この手法によって、黒リンナノシートを大量に製造することができる」とハンロン博士は述べています。


グラフェンと違って大きなバンドギャップを持つ黒リンはトランジスタなどの電子デバイスへ活用が期待されていますが、ハンロン博士らが考案した黒リンシートはさまざまエレクトロニクスへの活用が期待されています。例えば、ポリ塩化ビニルのフィルムに黒リンナノシートを加えたところ、強度が2倍、引張靭性(じん性)は6倍に強化されたり、黒リンナノシートはグラフェンよりも大きな非線形光学性を示したりすることが判明。さらに、アンモニアに触れることで電気抵抗が大幅に増加するため、80ppbを検出できる高感度なアンモニア検出材料として使えることも分かっています。

今回の研究によって黒リンの薄膜シートが大量に製造できるようになるため、黒リンを使ったナノテクノロジーの研究がさらに活況を呈していきそうです。

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