極めて高速動作可能なコンピューターの実現につながる「超」超格子が生み出される
厚みが原子1個分~数個分しかない極めて薄い結晶格子が複数重ね合わされた「超格子」は、次世代の電子チップ、ひいては超高速動作が可能なコンピューターの実現につながるものとして期待されています。そして今回、その技術をさらに一歩進める研究成果がUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の研究チームによってもたらされました。
Super ‘superlattices’ could enable ‘superfast’ transistors
http://www.newelectronics.co.uk/electronics-news/super-superlattices-could-enable-superfast-transistors/170605/
超格子は前述のように原子レベルの厚みしかないために、事実上の平面(2D)である「2D物質」(2D Materials)とも呼ばれています。これまでの技術では、類似した原子構造のレイヤーを積み重ねることしか実現できなかったのに対し、研究チームは異なった構造を持ち、全く別の電気的特性や機能をもつレイヤーを積み重ねることを可能にしています。
研究チームが開発した「超」超格子では、ある導体の層の上に絶縁体を積み重ねることで電気的な絶縁層を作り、非常にコンパクトで効率の高い半導体を構築することが可能になるとのこと。また、その製造プロセスも従来の技術に比べて速く、しかも高効率なものになるといいます。層が数千にも及ぶ超格子を作れる可能性があり、これを実現できるのは今回の新技術のみだとのことです。
今回の成果についてYu Huang教授は「従来の半導体超格子は、格子対称性が極めて高い元素を使ってのみ実現することが可能でした。我々は、全く異なるレイヤーを持ち、それぞれのレイヤーが完璧な原子構造を持つ、安定した超格子構造を初めて実現しました。今回の超格子構造は、用途によって異なる電気的特性を持たせることが可能で、潜在的な技術的用途やさらなる科学的研究に用いることが可能です」と述べています。
この新構造を実現するために、研究チームは分子の間に別の分子が入り込むインターカレーション呼ばれる化学反応を電子化学的に起こす電気化学的インターカレーションの手法を応用したとのこと。まずは黒リン(ブラック・ホスフォラス)を使って基礎となる2Dの層を作り、そこに複数のサイズや構造をもつアンモニアの分子を入れることで、レイヤーを構成することに成功。それぞれのレイヤーの電気的特性を要望に応じて変化させることも可能となっているそうです。
この成果は、次世代の半導体装置の開発にもつながるとのこと。研究チームのXiangfeng Duan教授は、「この成果により、より高速でありながら電力消費が少ないトランジスタや、より効率的な発光デバイスを作ることが可能になるでしょう」と述べています。
・関連記事
グラフェン2層間の角度をずらすことで超伝導性と絶縁性の両方を生み出すことに成功 - GIGAZINE
超高速コンピュータ誕生の可能性を秘めた原子1個分の極薄シリコン系材料「Silicene」 - GIGAZINE
夢の素材「グラフェン」をミキサーで製造する手法が登場、未来型デバイスの誕生に光 - GIGAZINE
世界初の「カーボンナノチューブコンピューター」製作に成功、実動作も - GIGAZINE
シリコンよりも高速&省電力なカーボンナノチューブでできたトランジスタの開発に成功 - GIGAZINE
3Dプリンターを使ってプラスチックを鉄の10倍の強度にする3次元構造体の作成に成功 - GIGAZINE
・関連コンテンツ