「ニワトリ」はいったいどのように人類の歴史に影響を与えてきたのか?
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ニワトリは古くから人間との関わりを持ってきた鳥であり、重要な食料源となるだけでなく神聖視されてあがめられることもありました。そんなニワトリがどのように人類の歴史に影響を与えてきたのかを解説したムービーが、YouTubeで公開されています。
History through the eyes of a chicken - Chris A. Kniesly
古代エジプトの王であったトトメス3世は、ある「驚くべき外国の鳥」としてニワトリについて言及しています。「その鳥はなんと毎日出産を行う」と、トトメス3世は述べたとのこと。
また、ゾロアスター教ではニワトリを特別な精神的力を持つ存在だと認識されていました。
ニワトリの鳴き声は、宇宙の闇と光の闘争について伝えていると考えられていたそうです。
ローマ人は軍事的な目的でニワトリを利用しており……
将来の戦いにおける勝利を予言する存在だとみなしていました。
今日でもニワトリは人間との関わりが深い存在です。
ディナーのごちそうとしてニワトリは大人気。
ニワトリの先祖は……
セキショクヤケイというキジ科の鳥だと考えられています。3つの関連する種は全て……
インドと東南アジアに生息していたとのこと。
この地域に生えている竹は、数十年に一度だけ豊富な栄養を持つ実が大量になります。
頻繁に出産するセキショクヤケイの特殊な能力は、食料が一気に豊富になるこの時期を逃さずに繁殖するためともいわれています。
この頻繁に出産する能力は、人間にとっても有用なものでした。セキショクヤケイは飛ぶのが苦手であり、容易に捕獲が可能。
また、飼うのにそれほど広いスペースが必要ありません。
セキショクヤケイを家きん化したといわれるニワトリの飼育は、7000年ほど昔から行われていたとみられていますが……
当初、ニワトリは食料目的で飼育されていませんでした。
繁殖期のニワトリは非常に攻撃的になります。
その足に刃をつけて激しく戦わせる「闘鶏」のために、ニワトリは飼育されていました。
闘鶏は庶民の娯楽として人気を博していました。
紀元前2000年ごろまでに、ニワトリはインダス川付近から中国、中東にまで広がりました。多くの国々では宗教的な存在として扱われていたニワトリですが……
エジプト人はニワトリの新たな利用方法を見いだしました。
ニワトリが自然に卵を産むと、6個ほどの卵を産んだ時点で卵をふ化させるために3週間ほどじっと座り、それ以上の卵を産まなくなってしまいます。
紀元前1000年ごろまでにエジプト人は熱い灰の上にバスケット入りの卵を置いて、人工的にふ化させることができると気づきました。
これによりニワトリが卵をふ化させるまで人間がじっと待つ必要はなくなりました。卵を産んだ先から回収してしまうことで、ニワトリが次々と卵を産むようになり……
回収した卵は人間の食事となりました。
エジプト人が人工的なふ化方法を見つけたのと同じ頃、フェニキア人の商人がヨーロッパにニワトリを持ち込んだとのこと。
ニワトリはすぐにヨーロッパにおける主要な家きんとなりました。
ヨーロッパにおいてニワトリは食料として重宝される一方で、神聖な存在としても見られていたそうです。
古代ギリシャ人は闘鶏を用いて……
若い兵士に戦いのインスピレーションを与えるために利用しました。
また、ローマではニワトリが神託を伝える存在だと考えられていたとのこと。
さらに、ニワトリはキリスト教の象徴とも見られていました。
その後もニワトリは、貿易や征服などで人間が進出した新たな土地にもたらされていきます。
アヘン戦争の後、中国のニワトリがイギリスに持ち込まれ……
イギリスのニワトリと中国のニワトリが交配しました。
これがきっかけでニワトリの品種改良に関するブームが巻き起こり、ヨーロッパ各地の農家が新たな品種を作り出そうとし始めたとのこと。
チャールズ・ダーウィンはこの品種改良ブームを見て、特定の形質を組み合わせることで後代に遺伝していく品種改良のプロセスが自然界でも発生したのではないかと発想したという説があります。
ニワトリが科学に与えた影響はこれだけではありません。ニワトリは多くの形質を持っており、さらにわずか7カ月で世代が交代するため、遺伝関連の研究対象としてうってつけでした。
ニワトリを使って研究を行った結果、発現する遺伝子型を予測するために使われるパネット・スクエアという図が発明されたとのこと。
品種改良によってより大きな品種や……
より筋肉量の多いニワトリなどが誕生しました。
また、多くの卵を産む品種も作られています。
近年、ニワトリの生産モデルは工業的なものとなっています。
1羽に対して与えられるスペースが非常に狭く……
狭いケースに閉じ込められたような状態で飼育されているニワトリは、全世界で220億羽以上にもなるとのこと。
古代から今日に至るまで、ニワトリは非常に多くの影響を人間社会に与えてきた存在なのです。
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