ワインやウイスキーを「水やアルコールに化学物質を加える」ことで作り出すという試み

by Prem Pal Singh

ラボで作った「人工肉」や既存の食事を不要にする「ソイレント」など、新しいタイプの食品が次々と誕生しています。アルコールの分野でも「ラボで人工的にお酒を作る」という試みが活発に行われており、その1つであるEndless Westは、水やエチルアルコールに化学物質を加えることにより有名産地のワインや年代物のウイスキーと同じフレーバーの人工酒を作り出すことに成功しています。

An Exclusive First Taste of Lab-Made Whiskey - WSJ
https://www.wsj.com/articles/an-exclusive-first-taste-of-lab-made-whiskey-1538434144

Lab-Made Whiskey, Lab-Made Wine | In the Pipeline
https://blogs.sciencemag.org/pipeline/archives/2018/10/31/lab-made-whiskey-lab-made-wine

ワインやウイスキーに対して、科学的なアプローチから味をよくしていこうという試みが、Endless Westを初めとするスタートアップによって行われています。このような企業はさまざまなワインの構成要素を分析し、水とエタノールに化学物質を加えることでフレーバーを再現しようとしています。ワインの味は地理や気候、土壌といった条件で変化していくと言われていますが、このような既存のワイン愛好家が重要だと考えるものを全て無視したアプローチです。

もちろん、人がワインの味をどう感じるかどうかは、ワインそのものに含まれる物質以外の要素も関係しています。これまでの研究で、「このワインは高価ですよ」と聞いた人々は、そのワインを飲んだ時に高い評価をするだけでなく、ワインを飲む経験をより楽しめることが脳スキャンによって明らかになっています。このほか、ワインを飲む状況や、飲む人の状態によっても経験は左右されますが、「ワインを構成する化学物質」だけに着目して考えれば、ラボで有名ワインを合成することは技術的に可能です。

by Helena Lopes

そして、Endless Westはワインにのみならずウイスキー「Glyph」をラボで作り出すという試みも行っています。Endless Westによると、ワインよりウイスキーの方が製造・販売が容易だとのこと。ワイン業界はワインの作り方にこだわり、ラボ製ワインをワインとして販売することを認めない傾向にあります。一方でウイスキーの場合はアルコール・タバコ税貿易局による「スピリット・ウイスキー」という混合ウイスキーのカテゴリが存在し、Glyphはこのカテゴリに当てはまることが判明しています。

当局はスピリット・ウイスキーを「プルーフガロンベースで中性スピリッツを5%以上ブレンドしたもの」と定義しています。そのため、Glyphも5%は蒸留したクリーンなウイスキーが含まれるとのこと。ただし量が少ないため、ほとんどベースとなるエチルアルコールの風味を変化させないものとなっています。

Endless Westの研究者たちは、目的とする飲料の構成要素を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)やガスクロマトグラフィー–質量分析法(GC/MS)を使って明らかにし、食品グレードの試薬を用いてフレーバーの再現を行っています。興味深いのは、複雑なフレーバーを生み出すには、それ自体は嫌な匂いを発する化学物質を使う必要があること。例えば、3-メチルブタン酸は加齢による口臭の原因として知られる悪臭物質なのですが、若いワインの「フルーツポンチのような香り」を作り出すのに必要となるものです。


Endless Westは目的とするウイスキーの味を完全に再現できるとしていますが、一方で、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事の中でウイスキーメーカーの代表であるColin Spoelman氏はEndless Westに大きな興味を寄せつつも「ゲームチェンジャーにはなりえない」と述べています。ワインと同じことがウイスキーにも言え、年代物のウイスキーを求める人はその味ももちろんですが、「古いウイスキーを買う」という社会的行動に意味を見いだしていることが、その理由として挙げられています。一方で、「手作り」といったキャッチコピーを挙げながら工場生産されているような業界のあり方に、人々が目を向ける良い機会にもなるとみられています。

ただし、Endless Westのラボ製ウイスキーは市場で一定の人気を集める可能性がありますが、人工ウイスキーという響きから人々が「安さ」を想像するため、低価格での販売を強いられることも考えられるとのこと。


ウイスキーやワインに限らず、「ラボで作られた食品」が今後、市場にどんどん出てくると考えられています。その中には安さや高級さを売りにしているものや、珍しい「体験」を売りにしているものもあるはず。「本物の食べ物とは何か」「おいしさとは何か」ということについて、人々はいま一度考えることになりそうです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
人類を救う未来の食べ物「人工肉」のメリットと作り方解説ムービー - GIGAZINE

100%植物原料なのに焼くと肉汁がしたたり味も匂いも肉そのものな「Impossible Foods」 - GIGAZINE

飲むだけで生きていける食品「ソイレント」がアップデート、味や成分に大きな変化 - GIGAZINE

食卓に間もなく「昆虫」がやって来る - GIGAZINE

食べ物を出力する3Dプリンターが一家に1台置かれる未来 - GIGAZINE

in サイエンス,   , Posted by logq_fa

You can read the machine translated English article here.