サイエンス

ホラー映画やお化け屋敷などの恐怖体験は「マインドフルネス瞑想」や「困難な挑戦」と同じメリットがある

by Amber_Avalona

「なぜ人は怖い思いをするためにお金を払うのか?」ということを過去10年にわたって研究してきたピッツバーグ大学の社会学者であるMargee Kerr氏が、最新の論文で映画やアトラクションによる「恐怖体験」は脳をシャットダウンさせマインドフルネス瞑想時と同様の効果が見られることなどを発表しています。

Voluntary arousing negative experiences (VANE): Why we like to be scared.
http://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Femo0000470

Why is it fun to be frightened?
https://theconversation.com/why-is-it-fun-to-be-frightened-101055

恐怖を感じたり驚いたりするとアドレナリンを初めとする多くの化学物質が体の中で放出されます。このような「戦うか逃げるか反応」は人間を生きながらえさせるための重要な反応で、「ハイ」の状態にも当てはまります。Margee Kerr氏は人が「自分自身を怖がらせたい」という欲求について、戦うか逃げるか反応に言及しながらも、他の要素もあると説明しました。

Kerr氏は過去2年にわたってピッツバーグ大学の認知神経科学者であるGreg Siegle氏とともに、お化け屋敷を使ってデータを収集しました。

2人の研究者が設置したのは、光・音・アニメキャラクターを使ったような家族向けのお化け屋敷ではなく、「成人向け」のアトラクション。被験者は役者によって驚かされ、拘束され、電気刺激を受けることもあったといいます。

by Jose Francisco Morales

被験者となった262人はお化け屋敷に入る前に、自分の感情や期待についてのアンケートに答えました。その後、お化け屋敷から出てきた後にもアンケートが実施されたとのこと。

さらに、100人の被験者にはお化け屋敷に入る前/入った後の各15分間に、さまざまな認知タスクや感情タスクを行ってもらい、携帯式の脳波計で脳の活動が調べられました。

この結果、被験者には、お化け屋敷の経験後、著しい気分の高揚や不安・疲労の軽減が確認されました。また、お化け屋敷の後の幸福感は、被験者が報告した「強烈さ」「怖さ」と関係し、怖ければ怖いほど気分はよくなったとのこと。さらに、被験者は「自分自身について学んだ」「個人的な恐怖に挑戦した」とも報告しました。

by werner22brigitte

そして、脳波計によって、お化け屋敷に入る前/入った後の人は脳の活動が広範囲にわたって低下しており、脳がシャットダウンしていることもわかりました。このような状態はマインドフルネス瞑想を訓練している人にも見られ、「気分のよさ」に関係しているとみられています。

これらを総合しKerr氏は、「不安」「肉体的な努力」「自分の背中を押すこと」「最終的な達成」といった点から、お化け屋敷の体験は5kmのレースや難しいクライミングウオールに挑戦するのと同様の効果が得られるとしています。

もちろん、ホラー映画を見たりお化け屋敷に入る人は、それらが偽物であると理解しています。しかし、いったんその世界に入り込んでしまえば恐怖は本物になり、お化け屋敷から無事出た時に満足感と達成感が感じられるはず。Kerr氏は、安全な場所で恐怖体験をすることで、人は自分の反応や体の変化を観察でき、より自分を知ることができると述べています。

by Kal Loftus

そして、乗り気でない人を無理やり恐怖体験に巻き込むべきではありませんが、同意を得て誰か他の人とホラー映画を見たりお化け屋敷に入ったりすると、感情的な体験がより強烈になり、相手との社会的なつながりも強くなるとのことです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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