あのビル・ゲイツが尊敬する「Mr.コンドーム」とは一体何者なのか?
Microsoftの創業者であるビル・ゲイツ氏は世界有数の資産家であり、妻のメリンダさんとともに世界最大の慈善基金団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を創設するなど、さまざまな慈善事業に資金を投じています。ゲイツ氏は男性の快感を保つ「次世代コンドーム」の開発に出資するなど、性生活の問題にも関心を持っていることが知られていますが、そんなゲイツ氏が尊敬するという「Mr.コンドーム」と呼ばれる人物について、自身のYouTubeチャンネルで紹介しています。
Bill Gates’s Heroes in the Field: Mechai Viravaidya
ミチャイ・ヴィラヴァイディア氏はスコットランド人の母親とタイ人の父親の間に生まれ、オーストラリアのメルボルン大学を卒業しました。
タイの政治家として長年活躍してきたヴィラヴァイディア氏は、ある特徴的な活動によってタイ国内で広く知られる人物です。
その活動とは、「避妊」する行為をタイ国内に広めるという啓発運動。
コンドームによる避妊法を数十年にわたって広め続けたヴィラヴァイディア氏は、タイ国内で「Mr.コンドーム」と呼ばれるほどの有名人になっています。
ヴィラヴァイディア氏はメルボルン大学を卒業した後、タイ政府の経済社会発展局やアジア太平洋経済協力センターの分析官といった役職を務めていました。
そんな中で、タイの人口が過剰に増加しているという問題を意識するようになったとのこと。当時の年間人口増加率は3%を超えており、ほとんどの人々は性行為の際にコンドームを使っていない他、女性向けの避妊薬を持っている人もほとんどいませんでした。
当時のタイでは、家族との間で避妊や性行為について話すことがタブー視される風潮があったとのこと。そこでヴィラヴァイディア氏は、1974年に人口と地域開発協会(PDA)というNGO団体を設立します。PDAを通じて看護師や助産師に避妊や先を見越した家族計画について教育すると同時に、「避妊や性行為について話し合うことは決して恥ずべきことではない」という考えを広めていきました。
ヴィラヴァイディア氏は道ばたや農村でコンドームや女性用の避妊薬を配ったり、使い方の講習を行ったりといった熱心な活動を続けました。
その結果、もともとはタイの平均的な家庭には7人の子どもがいましたが、およそ20年後には平均的な家庭が持つ子どもが2人以下という数字にまで低下したとのこと。年間人口増加率は1970年の3%超という状態から、2018年では1%以下にまで低下しています。
また、1980年代から1990年代にかけて、タイではエイズウイルスの感染が広がります。
人々にはエイズに関する知識が不足しており、タイ政府はエイズ撲滅に向けた対応に追われることになりました。
エイズの流行は観光業への悪影響となってしまうため、観光業による収入が重要なタイでは深刻な問題です。
そこでヴィラヴァイディア氏はPDAを通じてエイズについての知識を広め、性産業に従事する人々やその顧客といったエイズ感染リスクの高い人々を対象にした予防プログラムを開始したとのこと。
ヴィラヴァイディア氏はタクシー運転手から乗客にコンドームを手渡してもらったり、ゾウの体にコンドームの宣伝を描きこんだりといった活動を通して、コンドームをより人々にとって身近なものにするよう努力しました。
学校でエイズについての講習を行ったり……
実際にコンドームを渡したりといった活動をヴィラヴァイディア氏は行いました。
性器の模型を使って、コンドームの付け方を教えるといった活動もしていたそうです。
また、コンドームや性行為についてのタブー視を軽減する目的で、コンドームを風船のように膨らませて子どもに渡すなど……
ユーモアやジョークを交えてコンドームを広めていきました。
ヴィラヴァイディア氏が行った活動は性知識に乏しい子どもを対象にしたものも多く、リレーのバトン代わりにコンドームを使ったり……
コンドームを膨らませるゲームを行ったり、少しでもコンドームを生活に根付かせることを目的としています。
その結果、タイ国内の新しいエイズ感染者は1991年から2003年にかけて90%も減少しました。その功績が認められたヴィラヴァイディア氏は、2000年に国連合同エイズ計画のエイズ撲滅大使にも任命されています。
タイでは数百万人もの人々が、コンドームの使用によってエイズ感染から免れていると推測されています。
コンドームによる避妊はエイズ感染の脅威から人々を守るだけでなく、子どもの人数を適切な数に制限することで家族の規模が小さくなり、女性が外で働いたり安全でない中絶や合併症による死亡を防ぐことにもつながります。また、それぞれの子どもの健康や教育にお金や時間を費やせる余裕も増えるため、子どもがより生産的な未来を思い描けるようになるとのこと。
ヴィラヴァイディア氏の熱心なコンドーム布教活動の影響によって、タイではコンドームのことをヴィラヴァイディア氏のファーストネームである「ミチャイ」と呼ぶようになったそうです。
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