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無料でコンピューターゲームの夜明け時代を支えた人々の半生を知ることができる「ダンジョンズ&ドリーマーズ ネットゲームコミュニティの誕生」

by Blake Patterson

2004年に発売された書籍「ダンジョンズ&ドリーマーズ ネットゲームコミュニティの誕生」の日本語版PDFファイルが、訳者の平松徹氏によって無料頒布されています。1980年代から90年代にかけてのコンピューターゲーム業界を作り上げてきた人々が、さまざまなエピソードを交えながら紹介されていて、コンピューターゲームがどのように生まれて発展していったのか、20年以上にわたるその歴史がよくわかる一冊となっています。

『ダンジョンズ&ドリーマーズ』無償版PDF - 平松 徹 (Toru Hiramatsu) - BOOTH(同人誌通販・ダウンロード)
https://toru-hiramatsu.booth.pm/items/1020518


書籍のPDFファイルをダウンロードするためには、まずBOOTHのページにアクセスし、「無料ダウンロード」をクリックします。ただし、ダウンロードするためにはPixivアカウントが必要となるので注意が必要。PDFファイルの容量は1.86MB。


本の内容は、「ウルティマ」シリーズの生みの親であるリチャード・ギャリオット氏や、id Softwareの共同設立者で「DOOM」「Wolfenstein 3D」などFPSの名作を生み出したジョン・カーマック氏らの人生をドキュメンタリータッチでつづっています。目次は以下の通り。

プロローグ――すべての始まり
第1部 コンピュータゲームの夜明け
第1章:コミュニティ――ロード・ブリティッシュ誕生
第2章:遊ぶコンピュータ
第3章:コミュニティとビジネス
第4章:新しい世界――オリジン・システムズ
第2部 ネットワークゲームの時代
第5章:つなげ! 撃て!
第6章:荒野のオンラインゲーマー
第7章:王座を追われた君主
第3部 プレイヤーの時代
第8章:バッシング――ゲーマーの受難
第9章:世界はプレイヤーのために
第10章:"変人趣味"から"流行"へ
エピローグ――新たなる旅立ち
謝辞
訳者あとがき――電子版の制作にあたって
参考文献

◆第1部 コンピュータゲームの夜明け
第1部では、リチャード・ギャリオット氏の半生が描かれます。リチャード氏は、父親に買ってもらったApple IIを使い、学校中の生徒を捕まえてはテストプレイに付き合わせ、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を遊ぶ仲間の協力を得て、ついに自作ゲームを完成させます。それが「ウルティマ」の原型となる「アカラベス」です。「アカラベス」がどんなゲームなのかは、以下のムービーを見るとよくわかります。

[Apple II] Akalabeth - World of Doom (1979/1980) (California Pacific Computer Company) - YouTube


これをきっかけにリチャード氏はコンピューターゲーム業界に携わるようになり、「アカラベス」の拡張として「ウルティマ」を発表。父親や兄を共同設立者に迎えて「オリジン・システムズ」を設立し、「ウルティマ」シリーズの開発・発売を行います。

◆第2部 ネットワークゲームの時代
続く第2部では、「ファーストパーソン・シューティング(FPS)」と「オンライン対戦」を切り開いたid Softwareと、「オンラインRPG」を確立したリチャード氏の苦悩が描かれます。

雑誌編集者のジェイ・ウィルバー氏は、ジョン・ロメロ氏とジョン・カーマック氏という二人の天才プログラマーとチームを組んで、コンピューターゲームの開発を始めます。カーマック氏は当時世界的にヒットしていた「スーパーマリオブラザーズ」を研究し、新しい横スクロール2Dアクションゲームのゲームエンジンを作り上げます。この時にあくまでもデモとして「DANGEROUS DAVE in COPYRIGHT INFRINGEMENT(デンジャラス・デイブの著作権侵害)」が製作されました。以下のムービーで「デンジャラス・デイブの著作権侵害」のプレイの様子を見ることができますが、キャラクターは違うものの、ほぼ完全に「スーパーマリオブラザーズ3」をコピーしていることがわかります。

Dangerous Dave In Copyright Infringement ⭐ Unreleased Prototype - YouTube


これを受けて、ウィルバー氏は、ロメロ氏やカーマック氏らと共にid Softwareを設立。id Softwareは、FPSというジャンルを確立した「Wolfenstein 3D」や、世界的にFPSの存在を知らしめて一大ブームを巻き起こした「DOOM」を1992年に発売します。さらに、Windows 95が発売された翌年、id Softwareが発表したタイトルが「Quake」です。「Quake」は専用のダイヤルアップサーバーを設置する必要なく、インターネットを介して遠くにいる誰かと対戦できるという画期的なゲームでした。

「Quake」のヒットと共に、男性一辺倒だったコンピューターゲームファンのコミュニティにも次第に女性のゲーマーが増えるという変化が見られました。そして、オンラインゲームの流れは、リチャード氏が考えていた「ウルティマ」のオンライン展開構想を後押しし、1997年に「ウルティマオンライン」が発表されます。サーバーに「ウルティマ」を舞台とした仮想世界を作り上げ、プレイヤーはその住人としてオンラインの社会を形成するという「ウルティマオンライン」の画期的なシステムは、現代まで受け継がれるオンラインRPGの血脈の源であるといえます。

◆第3部 プレイヤーの時代
第3部では、1999年に起こった「コロンバイン高校銃乱射事件」をきっかけに起こったコンピューターゲームへの大規模なバッシングがどのように展開されたかがまとめられています。また、それを乗り越えたゲームファンがゲームのイベントを開くようになり、それが大規模な大会やイベントに発展していく様子が描かれています。本が出版されたのは2004年であり、コンピューターゲームが「eスポーツ」という1つの競技として成立する部分までは書かれていないものの、なぜ海外を中心にeスポーツが発達したのか、その基盤となる歴史を垣間見ることができます。

「ダンジョンズ&ドリーマーズ ネットゲームコミュニティの誕生」の全体を通して見えるのは、コンピューターゲームの発展の歴史はすべてが1つにつながっていて、何かが欠けても今のゲーム文化は生まれなかっただろうということ。「ウルティマ」と「Quake」は全く異なるジャンルのゲームですが、「ウルティマ」がなければ「Quake」は生まれず、「Quake」がなければ「ウルティマオンライン」は生まれなかったといえます。

by Marco Vanoli

また、歴史に刻まれるゲームが作られる上で、リチャード氏やロメロ氏、カーマック氏といった人物の存在だけではなく、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の仲間や「DOOM」のネット対戦ファンなど、さまざまな「コミュニティ」が重要な役目を果たしていると実感しました。これまでにまとめた部分はほんの一部であり、全314ページに渡る本の中には、さまざまなエピソードがてんこ盛りで、めちゃくちゃ読み応えがあります。当時のゲーム文化をよく知る人だけではなく、最近のゲームしか知らない若い人にもおすすめできる一冊といえます。

なお、「ダンジョンズ&ドリーマーズ ネットゲームコミュニティの誕生」は無料で公開されていますが、訳者の平松氏にきちんと代金を払いたいという人のために、カンパウェア版のページも用意されていて、100円以上の任意の額で購入することも可能です。

『ダンジョンズ&ドリーマーズ』カンパウェア版PDF - 平松 徹 (Toru - BOOTH(同人誌通販・ダウンロード)
https://toru-hiramatsu.booth.pm/items/1020533

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in レビュー,   動画,   ゲーム, Posted by log1i_yk