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月を地球の植民地にすればテクノロジーが発展し膨大なリソースが得られる


火星への移住計画を含め、宇宙に地球人が居住可能な場所を作るには、「まず月面基地を作るべき」という意見があります。なぜ月面基地を作ることにはメリットがあるのか?そして、月面基地の創設によってどのように月の植民地化が進むのかを科学系チャンネルのKurzgesagtが解説しています。

How We Could Build a Moon Base TODAY – Space Colonization 1 - YouTube


人類の技術が進歩し、月面基地を作れる技術も生まれ始めています。NASAは実際に基地を作るための予算を「200~400億ドル(2兆2000万円~4兆4000万円)」、かかる時間を「10年」と予測しているとのこと。


これは、ドイツの2017年の国家予算以上の額。


しかし、この投資によるリターンは計り知れません。というのも、月面基地の創設によって新しい技術開発が可能になり、無限のリソースを得られる可能性があるから。


月面基地の創設をきっかけに新たな宇宙開発競争がスタートし、太陽系や、それ以上に行動範囲を広げることも考えられます。


しかし、月面基地のような「将来の人類のための」「長期的な投資」を政府に認めさせるのは非常に難しいこと。


現実には着手が難しい月面基地の開発ですが、仮に、今日この瞬間からスタートさせるとしたら、どのようなものになるのか?というのがこのムービーのテーマです。


一般的に、植民地化は3つの段階を経て行われます。


ヨーロッパ諸国が行った植民地化を例にすると……


ある国が新たな土地を発見した時にはまず、主権国がその土地に旗を立て、駐留地などを作りますが、主権国の人々がその場所に住むことはありません。これが第1段階です。


第2段階では小さな居住地を作ります。


ただし、居住のための物資は主権国からの輸入に頼ります。


この時、生き残ることができない人もいますが……


生き残った人々は定住地を作ります。


この後からが第3段階。本格的な植民が行われ、商人や労働者が移り住み、富を築き、自分たちは家族のための可能性を作り出していきます。


そして、作り出した富を主権国に送ります。月を植民地化する場合も、これと同じ3段階をたどるはずです。


ただし月の場合は、これまでに行われた植民地化と異なり、大量の人々を殺害することはありません。


もちろん、月を植民地化するまでの問題は山積みです。そもそも、月は人間にとって「住みやすい場所」ではありません。月の1日は地球の29日に相当し……


最高気温は127度、最低気温はマイナス173度と、温度差の激しい土地です。


隕石や宇宙線から人間を守ってくれる大気は存在せず……


月面は人体にとって極めて危険でDNAを損傷することもあるという、鋭利なチリで覆われています。


しかし、困難に立ち向かい、植民地化を行うとしたら、以下のようなものになります。まず、植民地の第1段階は、既に行われています。


60年前、宇宙開発競争の一貫として行われた月面着陸が、植民地化の第1段階に当たるとのこと。


この時から、NASAのLunar Reconnaissance Orbiterは月をマッピングし、中国の探査機・Yutuは月面の構成成分が「水・氷・金属」であることを突き止めています。


つまり、第1段階は既に終了していると言えるとのこと。


人類は月の植民地化の第2段階に突入しているのです。


この第2段階が、最初の月面基地を作るという段階。最初に作られる小規模な月面基地は10年以内に完成するとみられています。


月に物資を送るのは非常に高くつくので……


月面に送られる基地は軽く、膨らませ式住居よりも小さく、12人以上は住めないものとなるとみられています。


ただし、災害に備え、シェルターとして使えるようになっているとのこと。


宇宙飛行士たちは長い間月面にとどまらないと考えられ、この住居は最終的に捨てられることになります。


このとき月面基地に備えられたソーラーパネルは夜間に発電することができませんが、昼間は人間が活動できるだけの電力を提供します。最初に月面基地に送られるのはエンジニアや科学者になる見込みで……


月の構成を研究したり、「月の氷を水にする」といった、月にあるものの使い道について実験したりするとのこと。水が確保できれば、飲み水として用いるだけでなく、植物を育てることが可能になります。


水素から燃料を作り出せば、夜間も電力を供給できるようになり、クルーたちの活動時間を増やせます。


そして、酸素と水素からロケットの燃料を作成可能になるという点も重要です。


燃料の作成が可能になれば、月を燃料ステーションとして使用し、火星やそれ以外の場所のミッションでも利用できます。


地球を出発地点とするよりも、月を出発地点としてロケットを軌道に乗せる方が簡単で安くつくので、これは大きな利点と言えます。


火星の植民地化は月から始まるかもしれません。


しかし、この状態だと、出資が止まれば基地が見捨てられる可能性があり、真の植民地化とはいえません。真の植民地化を行うには自給自足を行い、地球に物資を送ることを通じて月面での生活を支えられるようにする必要があるためです。


上記のことが行われる時が、第3段階です。


第3段階になると、民間企業が参入してきます。


チタニウム、ウラニウム、プラチナ、金といった地球では貴重な金属が月には豊富に存在するので、これらを採掘し地球へと輸送する企業は地球に大きな影響を与えるとみられます。


また、月面には核融合発電に使われるヘリウム3を豊富に含んでいるため、ヘリウム3を採掘するという未来も大いに考えられます。実際に、中国にはヘリウム3採掘のための月面基地を建設する計画を立てている企業もあるとのこと。


月面から地球へとヘリウム3が送られることで、安価でクリーンなエネルギーが得られることも考えられるのです。


また、月面基地が大きくなれば、月にある材料を使って建設計画が立てられるはず。幸い、月にあるものからコンクリートを作ることは可能です。採掘ロボットを使って月のチリを有機化合物に変え、地球から輸送することができない巨大な構造物を作ることもできます。また、月面で暮らす人々の生活に必要な道具は、3Dプリンターによって作り出せます。


自給自足が可能な植民地がいつ完成するかはわかりません。開発は徐々に進み、次第に産業化され、人口は着実に100人を越えていくでしょう。


この中から、地球外で初めての子どもを作る2人も出てくるはず。


これは、月が「科学者やエンジニアが働くための場所」ではなく、人々が暮らし、家族を育む場所になることを意味します。


この移行が起こってからの植民地の成長は速いとのこと。居住地や学校、農地など、人口を増やすためのものがどんどん作られていきます。


そして、植民地を発展させ維持するためのあらゆるテクノロジーに投資が行われるようになります。


少ない水を使用して、あるいは炭素を効率的にリサイクルして穀物を育てる方法や……


ごみを100%リサイクルする方法を発見するかもしれません。これらの技術は地球にとっても非常に価値があるもの。


太陽系の中で初めての宇宙エレベーターが作り出される可能性も。


宇宙エレベーターは宇宙船・宇宙飛行士・物資などを月の軌道から月面まで移動させることを簡単にします。


月は経済活動におけるハブと化し、そのスケールは今からは存在がつかないほどです。


月で生まれた子どもは親の母国の国籍を得るのか?それとも「月で生まれた子ども」はみんな全く新しい社会で受け入れられていくのか?といった点は記事作成時点では謎です。1984年に制定された「いかなる国家も月を所有できない」という月協定も再考されなければいけません。


多くの問題はありますが、確かなのは、月は太陽系で植民地化を進めるための完璧なサンプルであり、月の植民地化は各国を統合し、地球に何かが起こった時に私たちが生き残ることを補償する方法であるということです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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