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どうやったら金星を人が住める星にテラフォーミングできるのか?


金星は地球から最も近い地球型惑星で、「地球の姉妹惑星」と表現されることがあります。また、2020年には金星の大気から生命の活動により発生するガスが検出されて、大きな話題を呼びました。しかし、金星は表面温度が460度に達し、空は分厚い濃硫酸の雲で覆われた地獄のような環境でもあります。そんな金星を第2の地球にする方法を、科学系YouTube​チャンネルのKurzgesagtがアニメーションで解説しました。

How To Terraform Venus (Quickly) - YouTube


金星は表面温度が460度と、太陽系でも群を抜いて熱い惑星です。その理由は、極端な温室効果によるものです。


よく知られている通り二酸化炭素は強力な温室効果ガスで、地球の大気の二酸化炭素濃度が0.03%から0.04%に増えただけでも地球環境に多大な影響が及んでいます。


金星ではなんと、大気の97%が二酸化炭素です。


その一方で、金星は地球とほとんど同じ大きさなので、地表の重力も地球の90%とほぼ同じです。


低重力の環境下に長くいると、人体にさまざまな影響が出ることが分かっているため、重力が地球に近いことは移住先として非常に大きなアドバンテージです。


金星をテラフォーミングするには、まず金星を冷やして、大気を構成するガスを取り除く必要があります。


膨大なガスを除去する方法は、いくつか考えられます。そのうちの1つは、衛星からレーザーを照射して地表を加熱し、大気を宇宙に放出させる方法です。


ただし、この方法では人類が生み出せるエネルギーの数千倍の電力と数千年の時間がかかるため、現実的ではありません。


もう1つの方法は、化学反応を用いて二酸化炭素を他の化合物と結合させる方法です。


具体的には、水星でカルシウムやマグネシウムなどを採掘し、マスドライバーを使って金星に送り込む方法が考えられますが……


それには途方もない量の鉱石を金星に送り込む必要があるため、やはり現実的とは言えません。


そこで考案された金星の冷却方法が、金星と太陽の間に鏡を置いて太陽光を遮るというものです。


鏡はアルミホイルのように薄い金属で十分ですが、1枚の大きな鏡にすると太陽光の圧力で位置がずれてしまいます。


そのため、鏡は複数のパーツに分かれたものである必要があります。


金星のそばに補助的な鏡を設置するこの方法なら、補助の鏡で反射した太陽光でメインの鏡を押し返せると考えられています。


太陽光を遮っても、2~30年間は高温高圧の状態が続きます。


そして約60年後に気温が31度になると、二酸化炭素が液体になり雨のように地表に降り注ぎます。


1世紀以上にわたり二酸化炭素の雨が降り気温がマイナス81度になると、二酸化炭素の海が凍って今度は二酸化炭素の雪が降り始め、これに伴って気圧も下がります。


これで高温高圧の問題は解決しましたが、移住するには寒すぎます。しかし、地表を暖めるとまた大量の二酸化炭素が金星を火の玉にしてしまうので、苦労が水の泡です。


解決策の1つは、凍結した二酸化炭素をプラスチックで覆ってしまうという方法です。


しかし、この方法では火山活動で二酸化炭素が加熱されるリスクがあります。


もう1つの解決策が、凍った二酸化炭素をマスドライバーで打ち上げて金星の月にしてしまうというもの。しかし、前述の通り大量の物体を宇宙に打ち上げるのは大変な仕事です。


大量の二酸化炭素があるという問題のほかに、テラフォーミングには大量の水が必要だという課題も残っています。


水の確保先として有望なのが、地球の2倍もの水を持つ木星の第2衛星・エウロパです。


エウロパの氷を切り出してマスドライバーで金星に送ることで、水不足の問題は解決できます。「マスドライバーで大量の物体を打ち上げるのは現実的ではなかったはずでは?」と思うかもしれませんが……


宇宙空間に浮かべたロープを使って、2つの惑星の間で資材のやりとりをする「スカイフック」という技術とマスドライバーを組み合わせれば、比較的低コストでエウロパの氷を金星に送ることができる上に、金星の二酸化炭素をエウロパに送ることも可能です。


同様の方法で余分な窒素を除去して大気圧を下げれば、数世紀後には金星は凍った海を持つようになります。


そのころの金星を宇宙から見ると、今とはかなり違って見えるはずです。


二酸化炭素の問題が解決したら、鏡を取り払って金星をほどよい暖かさに再加熱していきます。


金星の1日は長く、地球の1日に換算すると約117日もあるため、そのままでは金星の半分はしゃく熱でもう半分は極寒の地になります。そこで、補助的な鏡を疑似的な太陽にすることで金星の昼と夜をちょうどいい長さにすることができます。


続いて、大量の藻類を散布して光合成を行わせ、酸素を生み出します。


これは、35億年前の地球で起きたのと同じプロセスです。


さらに、大地を耕して窒素固定植物を育て……


遺伝子工学で金星の環境に適応できる生態系を作ります。


そうすることで、金星は次第に緑豊かな星になります。最終的に、金星が地球と同じ大気組成になるには数千年はかかると考えられますが、気温や大気圧は地球と同じなので、金星への入植者は普通の服装とガスマスクだけで金星の表面を散歩することが可能です。


テラフォーミングの過程でできた二酸化炭素や窒素は、火星など新たな惑星をテラフォーミングするのに必要なエネルギー源にできるかもしれません。


以上が、現代人でもかろうじて手が届きそうな技術で実現可能で、かつ比較的短い期間で可能な金星のテラフォーミング方法だとKurzgesagtはまとめています。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1l_ks

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