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GoogleやFacebookなどの巨大な管理者なしで個人同士がつながりを作り出す新しいウェブの世界「Dweb」とは?


検索サービスをGoogleが牛耳り、個人情報をFacebookが大量に蓄積するなど、現代のウェブサービスは巨大なサービス提供者が情報へのアクセスを管理するため、表現の自由やプライバシーに関する構造的な問題を抱えています。これらを解消するために、「巨大な主催者」が不要で個々人がネットワークでつながる分散型のウェブ「Decentralised Web(DWeb)」という技術思想が登場しています。

Decentralisation: the next big step for the world wide web | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2018/sep/08/decentralisation-next-big-step-for-the-world-wide-web-dweb-data-internet-censorship-brewster-kahle

Googleが中国再進出を目指して検閲可能な検索エンジンを開発していると報じられているころ、アメリカ・サンフランシスコでは、GoogleやFacebookなどのインターネット上でゲートキーパーとして機能する巨大なサービスをバイパスする、「新たな形のワールドワイドウェブ」を模索する会議「Decentralised Web Summit(DWebサミット)」がインターネット・アーカイブの主催で行われていました。DWebサミットには800人の開発者やグループが参加してアイデアを出し合い、会議にはワールドワイドウェブを作り上げたティム・バーナーズ=リー氏も参加したそうです。

DWeb構想が持ち上がってきた原因は、現代のインターネットを支配する巨大なサービスの存在にあります。かつてのウェブは、デスクトップPCを使って互いにつながり話し合う形でスタートしましたが、「Web2.0」という単語が登場したころから、Google、Facebook、Microsoft、Amazonなどの大企業が提供する「集中サービス」を介する形で通信が行われるようになりました。


例えば、個人同士がつながり合うSNSサービスはFacebookというプラットフォーム上でつながる形で、いわば「箱庭の中のみでの交流」になっています。このような「中央集権的」なウェブの世界では、ユーザーの情報が集約されて本部に保存されるため、ハッキングによるサイバー攻撃で個人データが流出する危険があります。また、中央集権的なサービスがダウンするとコミュニケーションの手段や保存したデータが失われる危険があります。さらに、政府などによる検閲の危険性がつきまとい、集められた個人情報をターゲット広告として利用される「プライバシーの切り売り」も避けられません。

このようなWeb2.0世代の弊害を解消するために誕生したのが「DWeb」という分散型コンピューティングをウェブに活用する仕組みです。従来型のウェブとDWebとの違いは、第1に端末同士がつながるピアツーピアでの通信が基本となること。そして、第2にピアツーピアで接続するコンピューター端末は「サービスを要求するだけでなく提供する」という大きな違いがあります。つまり、HTTPプロトコルを利用することで特定のサーバーに保存された情報にアクセスするのではなく、ユーザー自身が分散されたデータを提供する媒体としても機能することになります。

このDWeb思想の技術的背景となる基本的な技術は「ブロックチェーン」です。

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中央集権的な通貨発行権者を排して分散型の通貨を生み出した仮想通貨(暗号型デジタル通貨)を可能にしたブロックチェーンを、ウェブの世界でも応用しようというのがDWebの考えです。ブロックチェーンによって「情報」を1か所に集めるのではなく分散して保存するDWebでは、情報を「管理」したり「コントロール」したりするために「管理者」が情報へのアクセス制限を行うことは不可能になります。

分散化されたDWeb思想の下でのプログラム作りはすでに始まっています。例えば、分散型のフリーマーケットの「OpenBazzaar」や、Googleドキュメントの代替となり得る「Graphite Docs」、Instagramの代替となり得る「Textile Photos」、SlackやWhatsAppの代替となり得る「Matrix」、YouTubeの代替となり得る「DTube」、既存のSNSサービスとは違う真のソーシャルネットワークサービスとしては「Akasha」や「Diaspora」、ピアツーピアのウェブ用のブラウザ「Beaker Browser」などが誕生しています。

中央集権的なサービス提供者のいないDWebでは、従来の広告型ビジネスは機能しません。そのため、DWebでは別の経済的な仕組みが必要で、その重要なカギとなるのが少量の決済を可能にするマイクロペイメントシステムの構築です。サービス利用の対価を直接支払う仕組みがあれば、広告システムに頼ることなくクリエイターは収入を得られるので創作活動が活発になり、ひいてはコンテンツ利用料が絶対的に下がることが期待できそうです。

また、ブロックチェーン技術に下支えされたDWebの世界では、アイデンティティを担保するパスワードは不要になります。正確には、個人を特定する生態認証などの保証が一つあれば、長くて覚えられない複雑なパスワードを使いまわすことは不要になるはずです。


ただし、DWebでは管理者がいないが故の弊害も考えられます。例えば、間違った情報が出されたとしても「削除依頼」をすることはできません。これは、近年ヨーロッパを中心に認められつつある「忘れられる権利」を大きく侵害する可能性があります。また、児童ポルノや犯罪に関する情報などを削除することも困難になります。

このようなDWebの持つ利点・欠点を考えた上で、「DWebは現在のウェブとは異なる仕組みで機能するなら、その利点を活かして『集中管理型のシステムでは不可能なこと』にフォーカスを合わせるべきだ」という考えも出されています。

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