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Twitterに代わるSNSプロトコルとして注目を集める「Nostr」とは一体どういう仕組みなのか?


TwitterやFacebookといった一企業が運営しているSNSは、企業の方針により投稿が削除されたり、ある日突然使えなくなってしまったりするおそれがあるため、こうしたSNSから分散型SNSと呼ばれるサービスに乗り換える人が増加しています。分散型SNSである「Mastodon」や「Bluesky」に注目が集まるなか、Twitterの創設者であるジャック・ドーシー氏が数千万円規模の投資を行った分散型ネットワークプロトコル「Nostr」がひそかに着目されており、ソーシャルサイトのHacker Newsでも議論が熱を帯びています。

Well Ordered Wiki
https://wiki.wellorder.net/post/nostr-intro/

Nostr, a simple protocol for decentralizing social media that has a chance of working
https://nostr.com/

Nostr (“Notes and Other Stuff Transmitted by Relays”) – An Introduction | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=35690659

Nostrは分散型ソーシャルネットワーキング「サービス」を指す言葉ではなく、SNSを運営することも可能な土台、システム、プロトコルのことを指します。そんなNostrは、「クライアント」と「リレー」という2つの要素から成り立っています。


クライアントとは、ユーザーが投稿(ノート)を公開したり受信したりするために使用するソフトウェアで、デスクトップソフトウェアやブラウザ内のアプリケーションとして実装されています。以前、Nostrを土台としたソーシャルアプリ「Damus」が中国のApp Storeから削除されたというニュースが報じられましたが、このDamusがクライアントの1つです。

リレーとは、クライアントが接続するサーバーのことで、ここにメッセージを送ったり、保存したり、他のクライアントにメッセージを配信したりすることができるものです。ユーザーは複数存在するリレーから好きなものを選んで接続することができ、同じリレーに接続したユーザー同士で投稿が共有されます。


リレー同士はつながっておらず、たとえ1つのリレーが停止したとしても、他のリレーに接続している限り投稿が消えることはありません。言い換えると、リレーが残っている限りは投稿も残り続けるということでもあるため、情報の取り扱いには注意が必要です。また、誰でもリレーを作ることができるため、自分しか知らないリレーに接続してプライベートな空間を作ることも可能です。

Twitterのような中央集権的なSNSとは違い、管理や検閲、ある種拘束的な不自由さを感じさせないというのがNostrの魅力。これはMastodonなどの分散型SNSに共通して言えることで、特にイーロン・マスク氏の荒療治が目立つようになってきたTwitterから離脱する人が注目する理由にもなっています。

Nostrに接続するユーザーには、Twitterのユーザー名(@から始まる文字列)のように一意の文字列が割り当てられるのも特徴の1つ。これは公開鍵と呼ばれるもので、その人が本人かどうかを検証するための役割を果たしています。公開鍵はすべての投稿に署名されるため、どのリレーに接続していても、確実に投稿者を割り出すことができます。公開鍵はユーザーを検索する際にも使用する点も特徴的。

Nostrの制作者は、検閲のない、小規模で楽しめるネットワークを望み、「好きな言語で片手間に実装できるほどシンプルである」と語って、プロトコルの拡張を広く受け入れています。


しかし、こうしたプロトコルには問題点があるとも指摘されています。

まず、投稿の検閲が行われないということから、見知らぬ人のデータをそのまま受信してしまうという点です。Hacker Newsでこの問題点を指摘したnine_k氏は「Nostrは暗号化されていない見知らぬ人からのデータを転送させます。違法なものがあなたのコンピュータで見つかったり、あなたのコンピュータから送信されたことがわかったりした場合、理由を当局に説明する時間はきっと楽しいものになるでしょうね」と皮肉交じりに投稿。見知らぬ人とデータを同期するべきではないと忠告しつつ、データを暗号化するための仕組みはきっと導入可能だろうと期待を込めました。

また、Nostrの「秘密鍵」にも問題があるとの指摘もあります。秘密鍵とは、ユーザーが自身のアカウントにアクセスするためのログイン情報のようなもの。themagician氏は「この秘密鍵が盗まれると終わり」と指摘し、「攻撃者があなたの秘密鍵を手に入れたら、何の解決策もありません。パスワードのリセットもできません。アクセスを回復する方法もありません。あなたのアカウントは永遠に危険にさらされることになるのです。これが、一般的な分散化の問題点です」と主張。これに対し、「確かに秘密鍵の再発行手順を設けるという方法もあるが、どの分散プロトコルもこれを実装していない」との意見も投げかけられています。

また、Nostrに関する初めてのカンファレンスが行われた際には、「クライアントやプロバイダーがプロトコルの外に機能を構築して市場シェアを獲得し、ユーザーを囲い込む可能性がある」という懸念事項が挙げられていたそうです。このような問題に対する簡単な解決策はなく、活発な議論の展開が求められています。

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in ネットサービス, Posted by log1p_kr

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