ごく普通のWi-Fi電波を使って銃や爆弾、化学薬品を検出できるようになるかもしれない技術が開発される
By Christiaan Colen
飛行機に乗る前に必ず通らなければならない検査場では、X線を使って手荷物の中身をチェックする検査が行われています。大規模な設備を要するこの検査が、ごく普通のWi-Fi機器を利用するだけで実施できるようにする技術が発表されています。
(PDF)Towards In baggage Suspicious Object Detection Using Commodity WiFi.pdf
Common Wifi can detect weapons, bombs and chemicals in bags | EurekAlert! Science News
https://eurekalert.org/pub_releases/2018-08/ru-cwc081418.php
この手法は、ラトガース大学ニューブランズウィック・キャンパス工学部のジェニファー・チェン教授らが研究しているもの。対象物に対してWi-Fiの電波を照射し、その反射や透過の様子を受信機で受信して解析することで、対象物の中に含まれる金属製の物体や危険物、化学薬品などを検知できるとしています。
このシステムでは、Wi-Fi電波が物体を通る時の通りやすさがわかる「チャネル状態情報(Channel State Information:CSI)」を解析することで、物体の状況を把握する仕組みが取り入れられています。検出には2~3本のアンテナを備えたWi-Fi機器を用い、以下のようなパターンでアンテナを配置。
そしてWi-Fiの電波を照射し、その際に電波の振幅情報と位相情報からなる「CSI復号値」を基に危険物の素材タイプを認識します。次に、液体の容量や金属物質の形状などを検知することで、物体の危険度を判断します。
研究チームではこの技術を使い、6ヶ月間で15種類の金属および液体の物体と、6種類のバッグを使った実験を実施。その結果、バッグの中に入れられた疑わしい物体の95%以上を検出し、危険物のタイプを90%の精度で識別することに成功したとのことです。また、液体の容量と金属製の物体の寸法を計測する際には、それぞれの誤差が「16ml」と「0.5cm」だったことも明らかにされています。
チェン氏は「大規模な公共の場では、空港で使われているような高価な検査装置を導入することは困難です」「バッグの中身を点検するためには常に人力が必要です。私たちは人員削減のための補完的な方法を開発したいと考えていました」と述べ、X線装置などに代わる簡便な検査装置としての可能性を語っています。
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