Wi-Fiで正確な位置を特定する技術「Chronos」をMITが開発、パスワード不要なWi-Fi・屋内GPS・自動追従ドローンが誕生する

屋内のマッピングを実現するためにビーコンなどが活用されていますが、対応チップが必要なことから普及のペースには限界があります。しかし、MITが開発中の、一般的なWi-Fi電波を使って端末間の距離や位置を正確に測定できる技術「Chronos」ならば、特別なチップ不要であらゆるWi-Fi端末で活用できるため、一気に普及することが期待できそうです。

Wireless tech means safer drones, smarter homes and password-free WiFi | MIT News
http://news.mit.edu/2016/wireless-tech-means-safer-drones-smarter-homes-password-free-wifi-0331

MIT turns Wi-Fi Into Indoor GPS - IEEE Spectrum
http://spectrum.ieee.org/tech-talk/telecom/wireless/mit-turns-wifi-into-indoor-gps

MITコンピュータ科学・人工知能研究所のディナ・カタビー教授の研究チームは、特別なセンサーを使うことなくWi-Fi電波だけで端末間の距離を正確に測定する技術「Chronos」を開発しました。Chronosを使えばどんなことが可能になるのかは、以下のムービーを見れば分かります。

Wireless Localization with "Chronos" - YouTube


Chronosは、単一のアクセスポイントを使ってWi-Fiの電波から端末の位置を正確に測定する技術です。

端末をアクセスポイントから遠ざけると、グラフにその時点の距離がほぼリアルタイムで計測されました。

Chronosは従来の無線LAN測位(屋内GPS)に比べて20倍の精度を誇るとのこと。

Chronosは複数のWi-Fiバンドの電波が端末に到達する周期から三角測量によって正確な位置を特定するという仕組みです。2.4GHzから5.8GHzまでの35種類の周波数を一斉にスキャンすることが可能。一般的なスマートフォンやPCなどは少なくとも2種類のWi-Fiバンドに対応していることから、特別なチップがなくてもChronosに対応できます。

Chronosは室内のWi-Fi端末の正確な位置を測定できるので……

例えばある一室にある端末だけを特定することも可能です。

つまり、ある部屋にいる人だけにWi-Fi通信を許し、それ以外の場所からの通信を遮断するということも可能。

ChronosをカフェなどのフリーWi-Fiスポットで使うと……

ガラス越しにWi-Fi環境にアクセスしようとする不届き者をシャットアウトすることが可能。

つまり、屋内の人にだけ通信を許可できるので、Wi-Fiパスワードは不要になります。

ドローンにChronosを搭載した実験では、スマートフォンを持ち歩く人にピタリと追従することに成功。誤差わずか4センチという高い精度を実現したそうです。

Chronosは端末の距離を測定するときに、一度スキャン作業が必要で、その際に測定したい端末が動いているとうまく距離が計測できないという解決すべき課題があるとのこと。カタビー教授らの研究チームは、スキャンの速度・精度をさらに高めることでChronosの実用化を目指す方針です。Chronosの技術が確立されれば、限られたエリアではWi-Fiのパスワードが不要になり、室内の正確なマッピング・ナビゲーション機能が使えるようになり、つかず離れずぴったりと追従するドローンなど、さまざまな技術への応用が期待できそうです。